心臓病(虚血性心疾患) [生活習慣病]
目次- 心臓病(虚血性心疾患)の原因
- 心臓病(虚血性心疾患)の対策
- 心臓病(虚血性心疾患)の予防に効果効能があるサプリメント
- サプリメント以外での予防改善
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関連情報
- 狭心症のステント挿入治療
- 大動脈瘤の新しい血管内治療「ステントグラフト内挿術」
- 改良型バチスタ手術の「左心室縮小形成術」と「中隔前壁心室除外術」(SAVE手術)
- 心臓・心房中隔欠損症のカテーテル治療
- 心不全の除細動器付きペースメーカー
- 心臓弁膜症の新しい大動脈弁形成術
- β(ベータ)遮断薬やカルシウム拮抗薬による心房細胞治療
- 拡張型心筋症に対する「免疫吸着療法 」「血漿交換療法」
心臓病(虚血性心疾患)の原因
心臓病(虚血性心疾患)の原因は心臓の筋肉である心筋に血液を送り込む、冠状動脈は血管が非常に細く、この血管内でのコレステロールや中性脂肪などによる動脈硬化や血栓などによって起こります。心臓に血液十分送り込まれないために、心筋が酸素不足におちいり激しい痛みが心臓を襲います。このように冠状動脈の血流が妨げられる心臓病には労作狭心症や狭心症、心筋梗塞などがあります。
- 労作狭心症は運動や食事、入浴時などに締めつけるような痛みがあり休むと数分で治まります。
- 狭心症はなにもしていない安静時でも痛みが数分から10分程度続きます。
- 心筋梗塞の場合にいたっては強い痛みが30分以上続く、大変危険な病気です。
心臓病(虚血性心疾患)の対策
心臓病(虚血性心疾患)の対策としては、血液中のコレステロールや中性脂肪などを減らしたり活性酸素による脂肪の酸化を防いだりして血管を丈夫にすることがポイントになります。心臓病(虚血性心疾患)の予防に効果効能があるサプリメント
- EPA(IPA) DHA
- イソフラボン(大豆イソフラボン)
- イチョウ葉
- カテキン
- カルニチン(L-カルニチン)
- コレウス・フォルスコリ
- ナイアシン(ニコチン酸)
- 納豆菌
- ニンニク
- ビタミンB6
- ビタミンC
- ビタミンE
- 葉酸
- レシチン
- レスベラトロール
サプリメント選びのワンポイント・アドバイス














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サプリメント以外での予防改善
食事では肉類や甘いもの、バターなどを減らして、魚類や植物性タンパク質(大豆や豆乳)、植物油(オレイン酸のオリーブ油、ナタネ油)食物繊維含んだ野菜を増やしてください、もし肉類を食べたい場合は鶏肉の脂肪は牛や豚と比較して固まりずらいので鶏肉を選んでください。生活面ではタバコやアルコールを控えて、ストレスをためないように注意して適度な運動を心掛けてください。
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関連情報
狭心症のステント挿入治療
狭心症は、冠動脈にコレステロールなどがたまって狭くなり、心筋に十分な血液が送れなくなる病気です。血栓(血液の塊)ができて冠動脈が詰まり、心筋の一部が死んでしまう場合は心筋梗塞(こうそく)です。これらを合わせて虚血性心疾患と言い、患者数は国内でも推定100万人と増え、年に7万人以上が亡くなっています。治療には、詰まった部分を迂回(うかい)する血管を作るバイパス手術や、血栓を溶かす薬物療法などがあります。中でも広く行われているのが、足の付け根の静脈などから細い管(カテーテル)を入れ、ステントを使って冠動脈を広げる治療です。体を切らないので社会復帰が早く、効果も高いです。
一方で問題もあり、ステントの金属が血管を傷つけるなどして炎症を起こし、血管の内膜細胞が増殖して血管が狭くなる「再狭窄」(さいきょうさく)が、患者の20~30%で半年以内に起きることです。このため、心筋梗塞を繰り返すこともあります。
そこで、再狭窄を防ぐ「薬剤溶出性ステント」が米国で開発され、日本でも保険適用が認められて、使えるようになりました。炎症を抑える働きのある免疫抑制剤シロリムスがステントに塗ってあり、それが約3か月にわたってゆっくり血管内壁に溶け出し、内膜細胞の増殖を抑えます。
臨床試験では、半年後の再狭窄率は、従来のステントに比べ4分の1以下の5%と激減しました。新型ステントの登場により、米国ではバイパス手術件数が減るなど、心筋梗塞治療が大きく変わりました。
ただし欠点として血管内に異物であるステントを入れると、血栓ができやすくなり、心筋梗塞を起こすことがあります。
厚生労働省は、新型ステントを使う場合、血栓をできにくくする抗血小板薬、塩酸チクロピジンを、従来のステントの3倍の期間にあたる治療後3か月間、毎日服用するよう求めています。
しかしこの薬には重い肝臓障害や、白血球、血小板が減る副作用があり、1999年から2年間で34人が死亡しています。厚労省は原則として2週間ごとに血液検査を行い、副作用をチェックすることも求めています。
このため最近のステント挿入治療では、比較的安全な抗血小板薬クロピドグレルを使用しています。
関係医療機関 帝京大医学部付属病院循環器内科
大動脈瘤の新しい血管内治療「ステントグラフト内挿術」
大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)
大動脈瘤は、動脈硬化などによって大動脈の一部がもろくなり、瘤状(こぷじょう)にふくれる病気です。大きく、胸部大動脈瘤と腹部大動脈瘤に分類されます。自覚症状がないことがほとんどですが、破裂すると大量の血液を一気に失い、高い確率で死に至るため「サイレントキラー」とも呼ばれています。
破裂リスクは瘤の大きさや拡大速度、形状などによって診断されます。胸部で6センチ以上、腹部で5.5センチ以上の場合、あるいは1年間で0.5センチ以上拡大している場合は、手術を検討します。また、片側に瘤が飛び出ている「のう状瘤」と呼ばれるタイプは破裂リスクが高いです。
血圧を下げる等の内科的治療はほとんど効果なく、外科治療が中心となります。外科治療には、従来から行われているお腹を開いて行う「人工血管置換術」か、新しい血管内治療である「ステントグラフト手術」があります。
従来の治療法の「人工血管置換術」は、お腹を30センチ程切開して大動脈の血流を一時的に遮断して、瘤の部分を人工血管で置き換える手術です。治療法としてほぼ確立しており、死亡率は1-3%台と手術成績も安定しています。
しかし、開腹するために体への負担が大きいことや、全身麻酔をかけなければならないこと、また将来の腸閉塞や性機能障害などの合併症の危険性もあります。心臓や肺に過度の負担がかかるため、高齢の方や合併症の多い方は手術リスクが非常に高くなります。また、全身麻酔をかけられない方は、治療が受けられないというデメリットがあります。
新しい血管内治療の「ステントグラフト内挿術」
新しい血管内治療のステントグラフト内挿術は、「ステントグラフト」と呼ばれるステント付きの人工血管を、血管内に挿入して大動脈を内側から補強する方法で、お腹や胸を切る必要もなく、数日で退院が可能です。
ステントグラフト内挿術では、足の動脈(大腿動脈)から小さく折りたたんだステント付きの人工血管を大動脈の中に挿入し、レントゲン透視装置下で瘤の位置に留置固定する手術です。
足の付け根を数ミリから数センチ切開するだけで行えるため、全身麻酔をかけられないような合併症の多い患者さんにも、局所麻酔あるいは背中の麻酔(硬膜外麻酔や脊椎麻酔)下で行えます。
痛みが少なく入院期間が短くてすむのが特徴です。「人工血管置換術」では約2-3週間の入院期間を要していましたが、「ステントグラフト手術」では3-4日で退院が可能です。また、開腹しないので、手術リスクの高い高齢の方にとっては特に有用です。
ステントグラフト内挿術の特長は、なんといってもからだの負担が小さいことです。局所麻酔でも治療することができ、手術当日から食事や歩行が可能です。また、人工血管置換術は約3割に重い合併症が起こるのに対し、ステントグラフト内挿術は約5%といいます。なにより、心臓や肺の働きが弱い、高齢である、といった患者さんにも、治療の可能性を広げました。
東京慈恵医大病院の血管外科教授、大木隆生医師は「瘤の形によってはできないこともあるなど、ステントグラフトにも課題があります。しかし、手術できずに破裂の不安を抱えていた多くの患者さんが、この治療で再び安心して生活できるようになりました」と話しています。
大木医師はステントグラフトを開発するため1995年に単身渡米しました。アルバート・アインシュタイン医科大学で12年間勤務し教授となった後、06年、母校に請われて帰国しました。これまで日米両国で、1500例以上のステントグラフト治療を実施しています。同院では過去3年問に500例以上の腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術を施術しましたが、死亡者はゼロです。
大木医師は大動脈から分枝する腎動脈などが動脈瘤に巻き込まれた胸部大動脈瘤に対して「枝付きステント」などを駆使しています。ただし、すべてが手術対象となるわけではありません。慈恵医大病院でも、受診患者の約6割は破裂リスクが低いので経過観察になります。
腹部大動脈瘤が2007年1月に保険適用となって以降(胸部大動脈瘤は2008年7月に保険適用)、治療を受けられる病院は増加しました。
ステントグラフト内挿術の実施医の条件
ステントグラフト内挿術の実施医になるには条件があり、関連10学会で構成する「ステントグラフト実施基準管理委員会」の基準を満たす必要があります。
たとえば腹部大動脈瘤では「腹部大動脈・腸骨動脈瘤の治療(手術あるいはステントグラフト内挿術)を、術者または助手として10例以上経験している」などの条件があり、最初の2例は指導医のもとで実施しなくてはなりません。
関係医療機関
東京慈恵会医大病院
湘南鎌倉総合病院
改良型バチスタ手術の「左心室縮小形成術」と「中隔前壁心室除外術」(SAVE手術)
拡張型心筋症
拡張型心筋症は原因不明で、重症だと心臓移植以外では助からないとされています。四つある心臓の部屋の
うち、全身に血液を送る左心室が、心筋の働きが弱った分、ポンプ機能を維持しようと膨らみます。
1990年代初めに始まった治療が、拡張した左心室の心筋の一部を切り取る「バチスタ手術」です。ブラ
ジルのR・バチスタ医師が考案しました。左心室の容積を減らすことで心臓の収縮力を増し、ポンプ機能を
回復させます。
日本では1996年に初めて行われ、1998年に保険適用されました。しかし、手術の成績が思わしくな
く、件数は伸び悩みました。
改良型バチスタ手術の「左心室縮小形成術」
バチスタ手術では、左心室の背中側の心筋を画一的に切除します。しかし、肥大した心筋は一様に悪くなる
のではなく、重症の患者でも十分な機能を持つ部分が残っていることがわかってきました。
そこで考えられたのが、大きく広がって働きの鈍った心臓の左心室を、心筋を切除せずに小さくする改良型
バチスタ手術「左心室縮小形成術」です。
心臓血管研究所付属病院心臓外科で指導する医師、須磨久善さんは、国内で初めてこの手術を実施した第一
人者です。手術中に、超音波装置で、心筋の障害のある部分と、機能を維持した部分を見分け、可能な限り
良い部分を残す改良型のバチスタ手術を考案しました。
「中隔前壁心室除外術」(SAVE)
心筋のうち、左右の心室を仕切る心室中隔の付近が悪くなった場合、中隔は切除できません。そこで須磨さ
んは、特殊な合成繊維でできた布(パッチ)で間仕切りを作って心室の空間を狭め、中隔を切除せずに左心
室を3分の2程度に縮小させる「中隔前壁心室除外術」別名「SAVE(セイブ)手術」も開発しました。
パッチの間仕切りと中隔の間には血液が入り込み、自然にふさがれます。この手術も保険が適用されます。
傷んだ心筋の部位により、改良型バチスタ手術とSAVE手術の2通りの左心室縮小形成術を使い分ける手
法で、治療成績は向上しました。
須磨さんが院長だった葉山ハートセンター(神奈川県葉山町)などで実施した96例の場合、左心室の裏側
を一様に切除した従来のバチスタでは、手術による死亡率は42・8%。一方、心筋の具合を見て、改良型
バチスタとSAVEを選択した場合の死亡率は14・6%と、約3分の1に減りました。
須磨さんは「良い心筋を残すことで、切除する部分を小さくできます。内科的治療を組み合わせ、長期の生
存率の改善も期待しています」と語っています。
「両心室ぺーシング」
同研究所付属病院の内科的治療は、左心室形成術の後、新しいペースメーカー「両心室ぺーシング」の機器
を埋め込みます。通常のペースメーカーは右心室に電気刺激を与えますが、両心室ぺーシングは左右の心室
をほぼ同時に刺激し、スムーズに収縮させます。
心室形成術を受けるには、
〈1〉薬による治療で心不全が改善しない。
〈2〉左心室の内径が8センチ以上に拡張している。
〈3〉左心房と左心室の間の僧帽弁に逆流がある。
などが条件になります。
心臓移植が普及しない日本では、「左心室縮小形成術」は拡張型心筋症などで悩む患者の頼みの綱になりま
す。その生活の質向上には、手術の成否と同じくらい、手術後の管理も重要となります。今後、両心室ペー
スメーカーの装着など内科的療法が増加すると見られています。
関係医療機関
心臓血管研究所付属病院
葉山ハートセンター
心臓・心房中隔欠損症のカテーテル治療
心房中隔欠損症
心房中隔欠損症は、心臓の左心房と右心房を隔てる筋肉の壁(心房中隔)に、生まれつき穴があいている病気です。約1500人に1人の割合で、起こるとされています。
本来、肺から左心房に入る新鮮な血液は、左心室を経て全身に送られますが、左心房の血液の一部が穴から右心房に流れ、肺に送り出される血液の量が増えてしまいます。
そのため、心臓や肺に負担がかかり、心臓が肥大するほか、肺に余分な血液がたまって、うっ血状態が続き、風邪や肺炎などにかかりやすくなります。幼児、小児期には症状が出ないことが多いいですが、進行すると、肺高血圧症という肺血管の病気や不整脈などを引き起こすこともあります。
これまでの治療法は、胸を切開して心臓の穴を直接縫い合わせるなど、外科手術が一般的でした。しかし、胸に約10センチの傷が残り、2-3週間の入院が必要になります。
カテーテル治療
これに対し、新しい治療法は、穴をふさぐ特殊な「閉鎖栓」を使います。形状記憶合金(ニッケルとチタン製)の細い針金を、二重の“傘”のように編んであります。
この栓を折り畳んでカテーテル(直径約3ミリ)の先端に入れ、足の付け根の静脈から挿入、エックス線や超音波の画像で見ながら、左心房に到達したところで、まず一つの傘を開きます。穴の位置に合わせて、もう一つの傘を開き、二つの傘で穴の周囲を挟み込んでふさぎます。
穴をふさぐ部分の栓の直径は、病状により6ミリから3・8センチまでさまざまです。治療は約2時間ほどで終わり、1週間程度、入院します。
このカテーテル治療は約8年前に米国で始まり、世界に広がりました。約3万人が治療を受けたとみられ、米国のデータでは98・5%で有効でした。
しかし、穴の大きさが3センチ以上になると、閉鎖栓の取り付けが困難になります。手術に比べ安全性は高いですが、治療後に栓が心臓の壁に当たって新たな穴があき、外科手術に切り替えた例もあります。
カテーテル治療を行っている病院
日本では、治療技術の向上を図るため、国立循環器病センター小児科部長の越後茂之さんが中心となり、研究会を設立しました。
治療を実施できる施設の条件として
1.先天性心疾患に対する、カテーテル治療の実施件数が一定以上ある
2.研究会が定めた新治療の教育プログラムを、受けた医師のみが行う
などを課しています。
現在、治療できる施設は国立循環器病センター、埼玉医大、岡山大の3か所ですが、「今後は増えるとみられます」と越後さんは話しています。閉鎖栓が輸入承認された昨年3月以降、計59人に治療が行われ、栓の脱落もなく、全例で経過は良好でした。
埼玉医大助教授の小林俊樹さんは「欧米では広く実施され、確立された医療です。肺高血圧症など合併症が出る前に治療を受けて欲しい」と話しています。
関係医療機関
国立循環器病センター
埼玉医大病院
岡山大学病院
心不全の除細動器付きペースメーカー
慢性心不全の「心室細動」
重度の慢性心不全の40歳男性は、心臓の拍動が左右ばらばらで、食事をしても息が切れ、心臓が血液を全身に送れなくなる不整脈「心室細動」を起こしたこともありました。東京女子医大病院で2006年4月、心室細動が起きた時に電気ショックを与える除細動器付きのペースメーカーを体内に植え込みました。
ペースメーカーのおかげで拍動が整い、休まずに階段を上れるようになりました。植え込んだ翌年、2回の心室細動を起こしましたが、異常を感知すると自動で電気ショックが発生して震えを止め、まもなく拍動も正常に戻りました。
心臓は、内部で電気信号が発生し、これが心筋に伝わって規則正しく収縮、血液を全身に送り出す。40歳男性は信号の伝達に障害があって、収縮が左右ばらばらでした。このため、心臓の機能が低下して全身に十分な血液が送れなくなる心不全になっていました。
通常のペースメーカーは、脈が遅いなどの不整脈の患者に使われる装置で、心臓の右心室に電気信号を送り出すことで、拍動のリズムを整えます。心臓の収縮が左右ばらばらな患者向けに、左右の心室に電気信号を送ることができる両心室ペースメーカーが2000年前後に欧米で登場しました。国内では04年4月に保険適用されました。
しかし、心不全の患者は心室細動を起こしやすく、慢性心不全の死因の4割を占めています。このため、症状によってはペースメーカーとは別に、心室細動に対応できるよう「除細動器」を体内に植え込むケースもあります。
40歳男性も2005年に搬送先の病院で心室細動を起こし、除細動器を植え込みました。しかし、ペースメーカーの植え込みは見送り、内服薬の投与などでしのぐことになりました。
除細動機能付き両心室ペースメーカー
2006年、主治医で東京女子医科大講師の松田直樹さんから、除細動機能が付いた両心室ペースメーカーを植え込む臨床試験に参加するよう勧められました。松田さんは「ペースメーカーと除細動器の二つを植え込むと、体に負担になり、機械の誤作動の危険もあります。一つで二つの機能が果たせる方が望ましい」と話します。
Aさんが植え込んだペースメーカーは、重さ約70グラムです。手のひらに乗るぐらいの大きさです。鎖骨のあたりに植え込み、静脈から心臓に入れた3本のリード線は、右心房、右心室、左心室に入れられます。
ペースメーカーには、マイクロコンピューターや電池が組み込まれており、右心房のリード線が電気信号をキャッチすると、左右の心室に入れたリード線が、心臓が発する信号よりも先にペースメーカーからの信号を伝え、心臓を収縮させます。
心室細動が起きた時は、リード線が異常を感知し、ペースメーカーから強いエネルギーの電気を流してショックを与えて、震えを止めます。
保険が適用された除細動機能付き両心室ペースメーカー
ペースメーカーの電池の寿命は、作動具合によっても異なりますが、平均5年程度です。胸の上から特殊な装置を当てて、電池残量をチェックできます。充電はできないため、電池残量が少なくなると、ペースメーカーを取り換えます。
除細動機能付き両心室ペースメーカーは2006年夏、保険が適用されました。手術は、厚生労働省が定める一定の基準を満たす全国約270施設で受けられます。詳しくは、医療機器メーカーで作る「日本不整脈デバイス工業会」のホームページ内で確認できます。
関係医療機関
関連サイト
心臓弁膜症の新しい大動脈弁形成術
心臓弁膜症の「弁置換術」と「弁形成術」
心臓弁膜症は主に、大動脈弁の病気と、左心房と左心室を隔てる僧帽弁の病気があります。血管の動脈硬化などが原因となり、高齢化などの影響で手術件数は年々増えています。
手術法の一つ、弁置換術で金属性の機械弁を入れると、血液の塊(血栓)ができないようにするワーファリンを一生飲む必要があります。出血しやすくなるので、けがをしないように運動を控えるなど、生活の制限が多くなります。一方、弁形成術は異物を入れないので、薬を飲む必要がありません。
僧帽弁は2枚の弁からなる単純構造なので弁形成術ができるが、3弁から成る大動脈弁の形成術は難しいです。しかし、東邦大医療センター大橋病院心臓血管外科教授の尾崎重之さんは、「自己心膜を使った大動脈弁形成術」により、手術を可能にしました。
自己心膜を使った新しい大動脈弁形成術
まず、心臓を包む心膜の一部(縦7センチ、横8センチ)を切り取って特殊な溶液に10分ほど浸して強度を上げます。この心膜から3枚の弁を作り、動きが悪くなった大動脈弁を除去した後に、3枚の弁を縫いつけます。
2007年4月の初手術以来、2010年6月までに180例以上実施されました。一番怖いのは、手術後に血栓ができて脳梗塞を発病することですが、発病は有りませんでした。人工弁を入れた場合、手術1年後の脳梗塞発病率が2、3%なので、それより低いです。
関東在住の50代男性は2008年春、階段を上る時に息切れがするようになり、大動脈弁の病気と診断されました。肝硬変の持病があったため、出血しやすい症状がありました。
人工弁を入れてワーファリンを飲まなくてはならなくなると、これまで以上に出血しやすくなり、生活上の支障が大きくなります。そこで、尾崎さんは新しい大動脈弁形成術を提案しました。手術は約4時間で終わり、約2週間後に退院しました。男性は、息切れなどの症状がなくなりました。
この手術は保険が利きます。しかし、手術を受けた患者はまだ少なく、長期的な成績も不明で、弁の耐久性の確認などの課題があります。
尾崎さんは「妊娠の予定がある女性はワーファリンを服用すると出産時に止血が難しくなるので、弁形成術が有効です」と話しています。
関係医療機関
β(ベータ)遮断薬やカルシウム拮抗薬による心房細胞治療
抗不整脈薬が中心の「心房細動」治療
心房細動は、心臓上部の心房が不規則に震える不整脈のことです。心拍数も増え、1分間に350回(健康人は70回ほど)以上になることもあります。
心房細動には以下2種類があります。
1.不整脈が1週間以内で治まる「発作性心房細動」
2.1週間を超える「慢性心房細動」
症状は、発作性心房細動が胸のドキドキ、めまい、慢性心房細動が息切れ、倦怠感などです。心房の血液がよどみ、血液の塊(血栓)ができて、脳に飛び、脳梗塞を引き起こすこともあります。患者数は70歳以上の高齢者を中心に70万人以上といわれています。
心房細動の薬物治療は、これまで、不整脈を抑えるとされる抗不整脈薬が中心に置かれ、2001年の診療指針も、その考え方を踏まえて作成されました。
治療の成績が良い「心拍数を下げる」治療
治療には、もう一つ異なる方法があります。心房細動を抑えることはあきらめて、高血圧治療で使われるβ(ベータ)遮断薬やカルシウム拮抗薬などを服用し、速くなった心拍数を下げる治療です。
抗不整脈薬による治療の方が成績が良いと思われていましたが、そうではありませんでした。2002年の米国研究では、両治療の死亡率は統計的に同じで、どちらかと言うと、心拍数を下げる治療の方が成績が良いことが分かりました。
2008年の新指針の作成者の一人、心臓血管研究所付属病院(東京・六本木)研究本部長(循環器内科)の山下武志さんは「抗不整脈薬を使っても、実際には不整脈を抑えるのは難しいです。また、抗不整脈薬の一部に新たに別の不整脈を起こすものがあり、それが影響したのかもしれません」と解説します。
新指針では、抗不整脈薬に比べて副作用が少ないβ遮断薬などの治療を評価しています。一方、症状が強い患者さんに対しては、抗不整脈薬の効果が大きいとしています。この改訂に沿って、山下さんは自覚症状が軽い患者を中心に、β遮断薬などによる治療を行っています。
心房細動の治療には薬による治療以外に、足の付け根などから先端に電極がついたカテーテル(細い管)を心臓に入れて、電気を流して不整脈を起こす余分な信号の通路を焼き切る心筋焼灼術(カテーテル・アブレーション)もあります。これは、薬が効かず、症状が強い患者さんに行われます。
2008年の新指針で重要視されているのは、心房細動によって起きる脳梗塞の予防です。
その危険度は、以下の5項目の有無が影響します。
1.心不全
2.高血圧
3.年齢(75歳以上)
4.糖尿病
5.脳梗塞や一過性脳虚血発作(一時的に脳血流が障害される病気)などの病歴
5だけ2点で、ほかは1点として合計しますと、点数が高いほど発病率が高くなります。
新指針では2点以上の場合、血栓ができにくくするワーファリンの服用を勧めます。1点なら患者と医師の意向で決め、0点なら服用せずに経過観察としました。
心房細胞による脳梗塞を予防する薬としては、ワーファリン以外に、ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(商品名プラザキサカプセル)が2011年に承認されました。
関係医療機関
拡張型心筋症に対する「免疫吸着療法 」「血漿交換療法」
「自己抗体」による拡張型心筋症
拡張型心筋症は、心臓の筋肉が薄くなり、血液を送るポンプ機能が低下する難病です。悪化すると、心不全や不整脈などを招きます。患者数は約1万8000人で、どの年代でも発症しますが、比較的男性に多い傾向があります。
原因は複数あるとみられますが、風邪などのウイルス感染で免疫機能に異常が生じ、本来は体を守る抗体が、心臓を異物と誤認して攻撃することが一因と考えられています。このような抗体を「自己抗体」と呼びます。
血圧を下げるβ(ベータ)遮断薬などの投与で、患者の5年生存率は8割近くに高まりました。しかし、薬物治療で目立った効果がない重症者の治療経過は、依然として悪いです。
自己抗体を取り除く免疫吸着療法
免疫吸着療法は、血液から分離した血漿から、自己抗体をフィルターで取り除く治療法です。運動神経が障害されるギランバレー症候群などの治療で既に行われています。この治療を拡張型心筋症でも保険で受けられるようにするため、2010年2月から北里研究所病院などで臨床試験が始まりました。
拡張型心筋症で大阪在住の46歳女性は、2005年に同病院が臨床試験に先立ち行った研究に参加しました。治療前は「会話や食事だけで心拍が急増し、苦しくなった。絶望して泣くと更に苦しくなるため涙も流せなかった」といいます。
それが治療半年後には、停止の恐れさえあったポンプ機能が正常の下限近くまで回復しました。今も安定し、「夫と会話したり、思い切り笑ったりしても苦しくないのが何よりうれしい」と話します。同病院の研究では、この女性を含む重症者8人中5人のポンプ機能が改善しました。
2010年の臨床試験は18歳以上の重症者約40人が対象です。副作用や、自己抗体の検査値と効果の関係などをみます。入院期間は2週間で、1回2時間の治療を5回受けます。くじ引きで10回行う患者も選び、効果を比較します。
同病院循環器内科副部長の馬場彰泰さんは「最近の研究で、患者の8割から自己抗体が見つかりました。治療効果には個人差がありますが、有効な患者は多いのではないかと思います」と話しています。
子供の拡張型心筋症に対する血漿交換療法
子供の拡張型心筋症に対しては、血漿交換療法の開発が進んでいます。患者の血液から分離した血漿を、献血で得た血漿と入れ替え、自己抗体を取り除く方法です。
山梨大学病院が開発し、2009年末以降、10歳代の子供2人に実施しました。同病院救急部教授の松田兼一さんは「寝たきりだった2人とも階段を上れるようになりましたた。治療数を増やし、国の先進医療に申請したい」と話したいます。
関係医療機関