サプリメント事典

-頻尿-

頻尿

目次
  • 頻尿の原因
  • 頻尿の対策
  • 頻尿に効果効能があるサプリメント
  • サプリメント以外での予防改善

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関連情報

頻尿の原因

男性の頻尿の原因
頻尿の原因は男性の場合加齢によって前立腺が肥大します、その大きくなった前立腺が尿路を圧迫するのが頻尿の原因になります。前立腺肥大の原因物質は活性型男性ホルモンのジヒドロテストステロンです、この物質は酵素の5αリダクターゼが男性ホルモンのテストステロンに水素を結合させることにより作られます。

前立腺肥大は30歳代から始まり50歳代で50%、70歳代では70%の男性に認められます。前立腺肥大症の初期は尿がなかなか出ないで勢いがない、何度も排尿に行きたくなる、排尿に時間がかかる、排尿時に強い力を加えなければ出ない、などの症状がみられます。


女性の頻尿の原因
女性の頻尿の原因は尿道が短く肛門が近いため雑菌が入りやすいため、尿路感染症や膀胱炎などの泌尿器系疾患が多いです。また更年期以降は女性ホルモンが急激に落ち込むので膀胱が萎縮して頻尿になりがちになります。女性の60%が一度は尿路感染症を起こすといわれてます。

症状は残尿感がある、尿が混濁する、下腹部が痛くなる、排尿の時痛みがある、トイレに行く回数が増えたなどです。

この他、食品に含まれる刺激物やストレスが原因で起きる「間質性膀胱炎」(かんしつせいぼうこうえん)があります。この膀胱炎は男性女性ともに、起こります。

頻尿の対策

頻尿の対策としては男性が前立腺肥大の抑制、女性は尿路にいる雑菌の除去がポイントになります。

頻尿に効果効能があるサプリメント

クランベリー
ノコギリヤシ

サプリメント選びのワンポイント・アドバイス

クランベリーは尿路の菌の付着や増殖防いで膀胱炎や尿路感染症を予防改善します。

ノコギリヤシは肥大した前立腺を縮小させる効果があります。

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サプリメント以外での予防改善

尿道括約筋を鍛えることで尿漏れを改善させましょう。具体的には仰向けに寝て体全体をリラックスさせて意識を下腹部に集中し、尿道を引き締めたり緩めたりを繰り返すことで鍛えられます。

トイレに行きたいと思っても10分ほど我慢してみてください、これにより膀胱の畜尿量を増すことができます。ただし10分以上は我慢しないように、それ以上だと膀胱によくありません。

尿路感染症の人は水分を多く摂って尿の量増やして、膀胱や尿路の雑菌を洗い流しましょう。

間質性膀胱炎の方は、刺激物を控えることですが、もし飲んだり、食べてしまった場合も、「水」を大量に飲んで尿の刺激物を薄めてください。

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関連情報


間質性膀胱炎(かんしつせいぼうこうえん)の膀胱水圧拡張術

「普通の膀胱炎」や「ストレス」などの原因で、膀胱の粘膜が弱まり粘膜に小さな傷ができます。尿に含まれる飲食物の刺激物などの成分は「毎日四六時中」この傷に触れ続けます。結果、粘膜の下にある「間質」とよばれる層にまで炎症が及ぶと考えられています。このように起きた膀胱炎が、「間質性膀胱炎」です。


刺激になる飲食物は、一般的なものです。
  1. 水以外の水分
    コーヒー、お茶、果物のジュース、炭酸飲料
  2. 酸性の飲食物
    かんきつ類をはじめとする果物、酢のもの
  3. カリウム
    たまねぎ、きゅうり、しいたけ、熟していないトマトをはじめとする生野菜、大豆食品
  4. 辛み成分
    とうがらし、わさび、マスタードなどの調味料
早期に発見するには、以下の目安があります。
  • 尿の回数一日8回以上
  • 平均尿量150ミリリットル以下
  • 尿がたまると違和感がある
間質性膀胱炎に合うサプリメントは現在ありません。間質性膀胱炎の治療法としては「食事療法」と「膀胱水圧拡張術」があります。

「食事療法」は、刺激物を控えることですが、もし飲んだり、食べてしまった場合も、「水」を大量に飲んで尿の刺激物を薄めてください。

「膀胱水圧拡張術」は尿をたくさんためられなくなった膀胱を、半強制的に広げる治療です。一般的に3泊4日の入院・手術で現在、保険適用されていません。

関係医療機関 東邦大学医療センター大森病院泌尿器科

尿失禁の干渉低周波治療

尿失禁は男性より女性に多く、成人女性の4人に1人が悩むと言われています。
女性の場合、尿漏れの3分の2を占めるのが、運動やくしゃみでお腹に力が入ると漏れる「腹圧性尿失禁」です。残りは主に、尿意を催してからトイレに行くまで我慢できない「切迫性尿失禁」や、両方の症状がある「混合型尿失禁」です。

「腹圧性」の原因は、子宮や膀胱(ぼうこう)など骨盤内の臓器をハンモックのように下支えする筋肉(骨盤底筋)が、加齢や出産で徐々に緩み、尿道や膀胱の位置が不安定になることです。「切迫性」は、骨盤底筋の緩みのほか、膀胱を収縮させて排尿する神経の異常もあります。

タイプや重症度に応じ、薬や理学療法(体操や電気・磁気刺激)、手術を組み合わせて治療します。
「腹圧性」の場合、重症なら、テープで尿道を支える「TVT手術」や、膀胱をつり上げる手術を行います。「切迫性」は手術では治らないため、神経をコントロールする薬(抗コリン薬)を使います。

軽度から中度なら、いずれの場合も骨盤底筋を鍛える体操などを行います。肛門(こうもん)や膣(ちつ)を締めては緩める動きを繰り返す運動で、適切に行えば効果があります。ただ、自宅で根気よく続けるのは容易ではありません。

そこで登場したのが、電気や磁気で刺激する方法「干渉低周波治療」です。血行改善効果があり、主に整形外科治療で使われてきました。
干渉低周波治療は発生した弱い電流が、骨盤底筋を収縮させ、排尿に関する神経も刺激します。

1回の治療は約20分間。痛みや皮膚への刺激はほとんどなく、着衣のまま受けられます。保険が適用され、自己負担は数百円から1000円程度です。最初の1か月は6回、以降は月2回ほど行います。
ただ、治療をやめると再び症状が出ることが多く、切迫性の場合は薬も併用します。

治療効果を高めるには、骨盤底筋体操と併用するのが基本です。3か月しても効果がない場合、腹圧性なら手術、切迫性は薬物治療を柱にします。

関係医療機関  大阪中央病院
骨盤底筋体操サイト 骨盤底筋体操
排尿・排便障害支援サイト 日本コンチネンス協会

IgA腎症の「扁桃(へんとう)切除とステロイド剤投与」の併用治療



IgA腎症
腎臓は、血液中の老廃物や水分を濾過(ろか)し、尿を作り、体液の組成を一定に保つ働きがあります。血液を濾過するのは、腎臓の表面近くにある糸球体と呼ばれる毛細血管のかたまった組織です。

IgA腎症は、体内の免疫細胞が作る特殊なたんぱく質(免疫グロブリン)の一種、IgAが、この糸球体に沈着し、組織を破壊する病気です。IgAは本来、病原体など外敵を退治するが、これが腎臓に過剰に集まり、自らの組織を攻撃する自己免疫疾患です。原因は不明で、10―20歳代の人に最も多く発症します。

大半の患者は自覚症状がなく、約7割が検診で血尿が見つかり診断がつきます。発症から約30年たつと、半数が腎不全に陥り、人工透析が必要になります。透析の原因としては、糖尿病性腎症に次いで多いです。

治療は従来、降圧剤などの薬物療法や食事療法が行われてきましたが、病気の進行を遅らせることはできても、完治は無理でした。

「扁桃(へんとう)切除とステロイド剤投与」の併用治療
仙台社会保険病院腎臓疾患臨床研究センター主任部長の堀田修さんは、IgA腎症患者では、のどにある扁桃(へんとう)に病原体が常に感染し、糸球体に沈着しやすい異常なIgAが大量に作られていることに着目し、扁桃摘出とステロイド薬を組み合わせた治療法を考案しました。1980年代後半から800人を治療、その6割でたんぱく尿と血尿が出なくなりました。

治療は、入院して扁桃を摘出した後、強いステロイド剤(メチルプレドニゾロン)を3日間点滴して、4日間休むことを3回繰り返します。退院後は、弱いステロイド(プレドニゾロン)を飲み、2か月おきに量を減らし、1年後には服用をやめます。副作用は少ないです。

「扁桃の切除で、異常なIgAの供給源を断つ。次にステロイドの波状攻撃で、糸球体を攻撃する免疫細胞を抑える治療戦略」と堀田さんは説明します。扁桃を切除しても、体調に問題はないと言います。

治療を始めてから10年以上たった患者のデータでは、血尿が出てから3年以内に治療を始めれば、8割以上が治まります。一方、5年以上たって治療を始めた場合、完治率は4割以下に落ちます。早期に治療すればするほど、再発の確率は低くなります。しかし治療が遅れた患者の方でも、治りにくい反面、悪化もしないそうです。

堀田さんによると、腎臓細胞を採取し調べる腎生検の結果、糸球体の破壊が30%程度以内までの患者が併用療法の対象になります。併用療法は急速に広がっていて、保険も適用できます。

関連医療機関
 
虎の門病院分院腎センター
 
仙台社会保険病院腎臓疾患臨床研究センター


前立腺がんの待機療法(無治療経過観察)



進行が遅い前立腺がん
前立腺がんの検診では、採血によるPSA(前立腺特異抗原)検査が行われます。正常値は「4」以下ですが、肥大や炎症でも上がります。PSA検査でがんの疑いがあれば、外側から前立腺に刺した針で細胞を取り、顕微鏡で調べる生検を行います。

この検査の普及で、早期の前立腺がんが見つかる人が増え、新たな問題が生まれました。
前立腺がんは進行が遅く、命を脅かす場合でも発見から平均10年かかります。また、ほかの原因で亡くなった人を解剖すると、七十歳以上の20-30%に前立腺がんが見つかりました。がんと言っても、おでき同様に、危険のないものが一定数あります。

ところが治療となると、手術では男性機能の低下が半数に見られ、5-10%の人には尿漏れが残ります。放射線治療でも排尿や排便の障害が起こる場合があります。注射や飲み薬によるホルモン療法は、がんを殺すのではなく抑えるものですが、やはり男性機能は失われたり、顔がほてったりします。

香川大泌尿器科教授の寛善行さんは「病巣が小さく、増殖速度が遅いものはある程度、見分けることができます。しかし100%完全ではないので、慎重な経過観察が必要になります」と説明しています。

待機療法の基準
待機療法(無治療経過観察)では、2、3か月に一度PSAをはかり、それを基に半年ごとに、増殖のスピードを判断します。寛さんたちは、待機療法が可能な基準を設定しています。

1.がんの進展度
PSAは10以下が望ましく、前立腺内にとどまるがんで、直腸から指を入れてもがんに触れない「T1c」という段階。PSA検査でがんが見つかった患者さんの六割は、このタイプです。

2.大きさ
生検では通常、針を6-12か所に刺します。このうちがんが出たのが2本以下が対象になります。
それを超えると、大きいと判断されます。さらにがんが出た組織を顕微鏡で見て、がんが占める占拠率が50%以下なのも条件になります。

3.悪性度
がん細胞の悪性度を示す10段階の「グリーソンスコア」という指標があり、顕微鏡による観察で診断します。数字が高いほど悪性度が高く、6以下が対象になります。

前立腺がんと言われた時に、医師にこの、三つの要件を質問すれば、待機療法が選択可能かどうかわかります。

経過観察中に、増殖が早く、2年以内にPSAが元の数値の2倍になりそうなことが予想される時は、手術や放射線などの治療を始めてください。研究を目的に登録した50人では、3年で35%が経過観察を中止し、治療を受けました。

寛さんは「待機療法には、治療をしないですむか、先延ばしにできる利点があります。しかし、一部の患者さんでは、治療の開始が遅れる場合があることも留意して下さい」と語しています。

関係医療機関 香川大泌尿器科


前立腺がんの超音波治療法HIFU(高密度焦点式超音波法)



前立腺がんの従来の治療法
前立腺は尿道を取り囲むように位置し、クリの実のような形をしています。精子とともに出る前立腺液を作ります。前立腺がんは高齢化とともに増え、毎年約7000人が亡くなっています。

がんが前立腺内にとどまる早期がんの場合、主に

1.前立腺を取り除く手術
2.体外からの放射線照射
3.ホルモン療法

の3つの治療法があります。

しかし、それぞれ様々な副作用があります。手術は出血量が比較的多く、2、3週間以上の入院が必要となり、失禁などの排尿障害が2割ほど、性機能障害が6-9割出ます。放射線治療は排尿障害は少ないですが、膀胱(ぽうこう)炎や直腸出血を生じることがあります。ホルモン療法は、ほとんどが性機能障害になります。

そこで体への負担が少ないと期待されるのが超音波治療法HIFU(高密度焦点式超音波法)です。検査用の数千倍の強力な超音波を使って、病巣を80-98度に加熱し、がん細胞を焼き殺します。

超音波治療法HIFU(高密度焦点式超音波法)
治療はまず、腰椎(ようつい)麻酔か全身麻酔を行い、先端から超音波が出る棒状の器具(直径3.2センチ)を肛門に挿入します。モニター画面を見ながら、前立腺全体に強力な超音波をかけます。超音波の照射範囲や強さなどは、あらかじめコンピューターで設定されています。

防衛医大泌尿器科医師の住友誠さんによると、治療時間は前立腺の大きさで異なり、3、4時間ほどです。治療後2週間は、尿道が狭くならないよう細い管を人れておく必要がありますが、手術の翌日には歩行と食事が可能となり、通常3、4日間で退院できます。

国内で最も治療経験が、豊富な東海大八王子病院泌脈器科助教授の内田豊昭さんが、患者86人に対する治療成績をまとめたところ、がん細胞が消失する割合は、平均、1年半後で76%でした。一方、副作用の性機能障害は31%で、排尿障害が23%でした。

治療成績では、5年後のがん消失率が約80%の手術にやや劣りますが、出血が避けられ、性機能障害の副作用も比較的少ないです。

前立腺がんには小型の放射線カプセルを患部に埋め込む治療(小線源組織内照射)も認可され、選択の幅が広がりました。この治療や超音波治療は心臓病など持病で手術できない高齢者や、なるべく性機能を温存したい人には有効な治療となります。

超音波治療法HIFU(高密度焦点式超音波法)は、手術や放射線の治療後、がんの取り残しや再発がわかった場合に行う選択もあります。ただし、前立腺内に結石があると温度が上がりすぎる危険があり、実施できません。また保険がきかず、費用は80万から100万円ほどかかります。

治療法が確立している手術や放射線に比べて、超音波治療は国内での実績が少なく、有効性や安全性は十分明らかになっていません。自分の病状も考慮して、慎重に治療法を選ぶ必要があります。

前立腺がんの進行と治療法の選択
前立腺内にがんがとどまっている「限局がん」では外科手術、腹腔鏡下手術、体外放射線治療法、小線源療法、超音波療法などがあります。

がんが前立腺の外にまで広がっている「局所浸潤がん」では、ホルモン療法、体外放射線治療法が選択できます。

がんが他の臓器にまで広がっている「転移がん」では、ホルモン療法で治療を行います。

関係医療機関

防衛医大泌尿器科

東海大八王子病院泌脈器科


膀胱がん体内に膀胱再建



膀胱がんによる全摘手術
膀胱がんは、がんが膀胱の内側の表面にとどまっていれば、尿道から管を通し、がんを削り取る方法で治療できます。膀胱を取らずに済み、再発しても治療を繰り返すことが可能です。

しかし、がんが粘膜より深く筋肉の層まで進んだ場合などでは、手術で膀胱をそっくり取る全摘手術が必要になります。この場合、手術後の排尿をどうスムーズにするかが、大きな問題になります。

膀胱再建手術
膀胱全摘後の排尿には、人工の排尿口(ストーマ)をおなかに開けて体外の袋に尿をためる方法と、代用の膀胱を腹部の中に作る方法(膀胱再建)があります。それぞれはさらに、次の①②と、③④の手術
法に分かれます。

①腎臓から伸びた尿管の先を、腹部に穴を開けたストーマまで導き、外につけた袋に尿をためる。

②切除した小腸(回腸)の一部を管として用い、腎臓から伸びた尿管をっないで、腹部に開けたストーマのに尿をためる。

③腸管の一部を使い、尿をためる袋を作る。がんが広がり尿道を残せない場合に行う手術で、おへそに開けた穴に外から管を差し込んで排尿する。

④腸管の一部を用いて3と同様に尿をためる袋(新膀胱)を作る。新膀胱に尿道をっなぎ、腹圧で押すようにして排尿する。尿道までがんが及んでおらず、尿道を残せた場合に実施できる。

最も自然に近い形で排尿できるのが④の方法です。

静岡県立静岡がんセンター院長の鳶巣賢一(とびすけんいち)さん(泌尿器科)によりますと、最も多く行われているのは②で、全体の5-6割になります。次いで①の方法が2割程度です。手術時間が短くて済む反面、ストーマを作って体外の袋に尿をためなければなりません。

一方、④の新膀胱を作っている患者は10-15%ほどに過ぎず、手術が複雑な③はほんの数%ではないかといわれてます。

「全摘患者の半数程度では、新膀胱で自然に近い排尿を目指すことができるはず」と鳶巣さんはみています。実施例が少ないのは、「この手術に熟練した医師が少ないためではないか」と言います。

ただ、新膀胱では長期間使っていると、通常の膀胱(500ミリ・リツトル程度)の倍以上に大きくなってしまう問題があります。自分では排尿したつもりでも残尿を大量にため込み、腎機能障害を招く心配があります。体液のミネラルバランスが崩れ、骨が弱くなる場合もあります。定期的に診察を受け、残尿がないかを確認することが必要になります。

手術で膀胱を取ることになったとしても、できるだけ自然に近い排尿ができるのに越したことはありません。手術後の排尿方法も含めて、主治医以外の医師の意見(セカンドオピニオン)も聞いてみてください。

注意)セカンド・オピニオンとは、よりよい決断をするために、当事者以外の、専門的な知識を持った第三者に、求めた「意見」の事です。


膀胱がんの標準的な治療
膀胱がんは血尿をきっかけに見つかることが多く、60-70歳代を中心に、男性が女性の3倍です。患者の6-7割は、がんが膀胱の内側の粘膜にとどまり、尿道から細長い電気メスを膀胱内に挿入して、がんを削り取る「経尿道的切除」が行われます。

治療後に、BCGや抗がん剤を膀胱内に注入する方法も併用されるが、再発しやすく、経尿道的切除を何度も繰り返すこともあります。
抗がん剤は比較的よく効き、手術不能な場合には4種類の抗がん剤を併用するMVAC(エムバック)療法が行われます。

関連医療機関 静岡県立静岡がんセンター


膀胱がんの動注化学・放射線治療併用による膀胱温存療法



膀胱がんと治療法
膀胱がんは膀胱の内側の上皮(粘膜)に発生するがんで、表在性膀胱がんと浸潤性膀胱がんの二つに大きく分けられます。進行するに従って外側へ向かって膀胱壁(粘膜・粘膜下層・筋層)の中に深く浸潤していきます。がんの浸潤が粘膜下層にまでとどまっているのが表在性膀胱がんで、筋層まで届き、それ以上に広がっているのが浸潤性膀胱がんです

膀胱がんの予後は、表在性膀胱がんと浸潤性膀胱がんではまったく異なります。前者の5年生存率は90パーセント以上と非常に高いのに、後者は40パーセント以下と半分にも満たないです。

加えて、表在性膀胱がんは尿道から膀胱鏡を膀胱へ挿入し、電気メスで腫瘍を切除する手術の経尿道的膀胱腫瘍切除術(=TUR-Bt)によって治癒し、膀胱を全摘することはありませんが、浸潤性膀胱がんは開腹手術で膀胱を全摘しなければなりません。膀胱をとられたうえに治癒も難しいというのが浸潤性膀胱がんで、患者さんにとっては二重の苦しみを負うため、この苦しみをなくす新たな治療法が切実に求められてきました。

もちろん、近年の尿路変更術の進歩によって、膀胱を全摘した患者の排尿に関するQOL(生活の質)はかなり改善したものの、体に備わった膀胱を失うという事実は変わりません。

そこで今、筑波大学付属病院で試みられている動注化学・放射線治療による膀胱温存療法は、本来の膀胱・排尿機能を残しながら治癒も得たいという患者の声に応えた、画期的治療法といえるでしょう。


膀胱温存療法の適応対象者
浸潤性膀胱がんは進行の程度によって、T2、T3、T4の3種類に大きく分けられます。少し専門的になりますが、T2はがんの浸潤が筋層にとどまるもので、T3は膀胱の周囲の脂肪組織へ浸潤しているもの、さらにT4は前立腺・子宮や骨盤壁など隣接臓器へ浸潤しているものです。

このうち膀胱温存療法の対象となるのはT2、T3の、リンパ節転移や遠隔臓器転移の認められない浸潤性膀胱がんです。浸潤の程度やリンパ節転移の有無などは、生検やCT、MRI等の画像検査で確かめます。

注意すべきはT2、T3の浸潤性膀胱がんのすべてが膀胱温存療法の対象となるわけではないことです。腫瘍の数や大きさなどをはじめ、経尿道的膀胱腫瘍切除術(=TUR-Bt)で切除した患部の組織から、がんの悪性度などを見るなど総合的に判断し、最終的に膀胱温存療法の対象となるか否かを決定します。

浸潤性膀胱がんは腫瘍の数が1個、すなわち単発のケースが多いようで、腫瘍の数が増えるほど、また腫瘍のサイズが大きいほど再発の危険性は高くなります。いままでの経験と研究から、膀胱内の再発の危険性は腫瘍の数が2個以上のときは単発のときより約43倍、腫瘍の大きさが3センチ以上のときは3センチ未満のときより約6倍高まることが明らかにされています。

そうしたリスクファクターなどを勘案し、膀胱温存療法を行っても再発の恐れが少ない浸潤性膀胱がんを対象に膀胱温存療法を行っているのです。


動注化学・放射線治療併用による膀胱温存療法
動注化学・放射線治療併用による膀胱温存療法は、

1.経尿道的腫瘍切除術(TUR-Bt)
2.抗がん剤の動注化学療法+放射線治療
3.陽子線治療

の3段階の治療ステップで進みます。

最初のステップは膀胱鏡を尿道から膀胱へ挿し入れ、がん病巣を電気メスで切除します。肉眼で確認できた腫瘍はすべて切除できることもありますが、腫瘍を切除できず残してしまうこともあります。

2番目のステップは動注化学療法と放射線治療を同時併用する治療で、まず細い管(カテーテル)を太股の大腿動脈から挿入し内腸骨動脈まで進入させ、抗がん剤(メソトレキセート+シスプラチン)を投与します。これが動注化学療法です。

直接、腫瘍に高濃度の抗がん剤を投与するため、がんに対する殺傷力が増強します。しかも、全身に潜んでいるかもしれない、目に見えない小さながんの転移も十分に叩ける濃度と量(体表面積1平方メートルあたりメソトレキセート30ミリグラム、シスプラチン50ミリグラム)の抗がん剤を投与しますが、静脈から点滴投与する通常の方法と比べ副作用は軽くすみます。

動注化学療法は3週間ごとに3回行います。

放射線治療は、第1回目の動注化学療法の翌日から1回=1.8グレイを、膀胱の存在する骨盤の奥(小骨盤腔)に照射します。通常の体外照射で週5回、計23回=41.4グレイを当てます。

動注化学・放射線治療が終わった段階で、がんが存在したところの組織を膀胱鏡で取り、顕微鏡でがん細胞の有無を確かめます。がん細胞のないことが確認されたら次のステップの陽子線治療に進みますが、がん細胞が確認されたときは手術による膀胱全摘に切り替えます。

アメリカ等の研究では、浸潤性膀胱がん(T2、T3)の30パーセント前後は、静脈投与の抗がん剤治療のみで消失することが判明しています。

しかし、動注化学療法に放射線を加えると、腫瘍の消失率が90パーセント程度へ飛躍的に高まります。実際、筑波大学の動注化学・放射線治療では、93パーセントの浸潤性膀胱がんが消失し、ほとんどの患者が次のステップの陽子線治療に進んでいます。

陽子線治療
第3段階の陽子線治療は、腫瘍が存在したところに追加照射(ブースト)します。膀胱がんの再発防止をより確実なものにするためで、あらかじめ患部の周辺にマーカーとなる金属粒子を膀胱鏡で埋めこみ、照射範囲を厳密に絞りこんで陽子線を照射します。

もともと陽子線は人体の中でその破壊エネルギーがもっとも大きくなるピーク(ブラッグピーク)の位置を調節できるため、患部のみに放射線を集中的に照射し、その周りの正常組織への放射線障害を極力減らせるところに大きな特長があります。1回3グレイ相当を週5回、計11回=33グレイ相当を当てます。

膀胱温存療法はすべて完了するのに約3カ月間を要します。膀胱を全摘する手術の入院期間は2~3週間なので、その約4倍の入院期間を必要とすりますが、それに十分見合う生活の質(QOL)が保障されます。


(注意)陽子線治療の設備は、筑波を含んで全国で10箇所ほどしかありませんので、ほとんどの病院では陽子線治療はできません。

また陽子線治療は高度先進医療のため、治療費は全額患者さんの負担になります。費用はだいたい200万円以上になります。

関係医療機関

筑波大学付属病院

四国がんセンター

北海道大学付属病院


尿漏れをともなう「性器脱」の治療


「性器脱」の原因と症状
女性の骨盤の中には、膀胱や尿道、子宮、直腸など多くの器官があります。これらの臓器は、「骨盤底」と呼ばれるハンモック状の筋肉や靱帯(じんたい)が囲み、重いものを持ち上げるなど、力がかかってもずり落ちないように支えています。

ところが、骨盤底が緩んだり、筋肉の繊維の一部が切れたりすると、重みに耐えきれずに臓器が下がり、膣(ちつ)壁が臓器に押されて飛び出してしまいます。下がった臓器により「子宮脱」「膀胱瘤」「直腸瘤」と呼びますが、複数の臓器が飛び出すこともあり、「性器脱」と総称されています。

これらの症状は、50歳以降に多く、女性の約1割が経験すると言われています。座った時に、またの間に不快感を感じるなど、日常生活での不自由さは、大きいです。尿道も変形して尿が出にくく、尿漏れなどの症状も現れます。

「性器脱」の治療
落ちてきた臓器が膣の内部にとどまる初期なら、骨盤底の筋肉を締める体操や女性ホルモンの補充をすることで対処できます。

膣の入り口に達している場合、膣の中に歯止め役としてリング状の器具(ペッサリー)を入れることもありますが、膣内が炎症を起こすことも多く、長く使うことは難しいです。

さらに進行すると、膣の外まで飛び出してしまい、歩けなくなったり、膣が乾燥して出血したりすることもあります。こうなりますと手術の対象になります。

「性器脱」の手術
手術では、垂れ下がった臓器を元の位置に戻し、再発予防のため膣壁と臓器の間を補強します。子宮は摘出か一部を切除することもあります。

補強は、従来は骨盤内の組織(筋膜など)を重ねたり、強く縫い合わせたりしていましたが、もともと傷んだ組織を使うため、1-3割は再発していました。

これに代わり、ポリプロピレン製のメッシュで補強する方法が、数年前から普及してきました。伸びない素材で、膣壁と臓器の間に入れることにより、丈夫な「壁」を作ります。

昭和大横浜市北部病院泌尿器科教授の島田誠(しまだまこと)さんは「メッシュ手術の長期の治療成績はまだ出ていませんが、これまで実施した例では、再発率は5%以内になると思います」と話しています。

ただし、メッシュがずれて体外にはみ出したり感染を起こしたりする恐れもあり、手術には熟練した技術が必要になります。手術は1週間ほど入院して行い、保険がききます。

「性器脱」の予防は、産後の骨盤底筋ケア
性器脱を引き起こす骨盤底の損傷は、コルセットなどでの胴回りの締め付けや、便秘でいきむといった骨盤底に負担をかける動作の積み重ね、閉経、肥満も影響します。なにより最大の原因は出産です。赤ちゃんが産道を通る時、骨盤底が大きく引っ張られるからです。

三井記念病院産婦人科医長の中田真木(なかたまき)さんは「出産では上手にいきむ、産後3週間はこまめ
に横になり骨盤底に負担をかけない、などの予防が大切」とアドバイスしています。

性器脱の治療は、産婦人科と泌尿器科が担当します。泌尿器科でも、女性専用外来を設けるなど、かかりやすさに配慮した医療機関も出てきています。

子宮口が開いてから出産まで5時間以上かかつたり、3500グラム以上の赤ちゃんだったなどの場合は、骨盤底筋の受けたダメージは大きいです。自然の回復力があるので、産後3週間は養生し、その後、骨盤底筋を鍛える体操を取り入れてください。

なお、体形を早く元に戻そうときついガードルやコルセットを締めたり、腹筋運動をしたりという点も、骨盤底筋に大きな負担がかかります。希望する場合は、1か月健診で骨盤底筋の具合を確かめてからにしましょう。

関係医療機関

昭和大横浜市北部病院

三井記念病院


夜尿症のための「夜尿アラーム」



夜尿症の原因と治療法
朝目覚めると、パンツとふとんがびっしょり。お母さんに怒られるのが怖くて、なかなか起きられない。そんな体験が重なるうちに、自分に自信が持てなくなるのが夜尿症の深刻なところです。

京都府立医大病院の泌尿器科助教授・河内明宏(かわうちあきひろ)さんの調査では、おねしょをしない子の場合、自尊心の高い子は56%だったのに対し、毎晩おねしょをする子では20%にとどまっていました。

通常、排尿を自分の意志でコントロールできるようになるのは、大脳の排尿抑制機能が完成する4歳前後です。5歳くらいになると昼寝をしなくなるなど、睡眠のリズムも大人に近づいてきます。このため、5歳を過ぎてもおねしょを繰り返してしまう場合、夜尿症と診断されます。

河内さんの調査では、夜尿症(月1回の夜尿)は5-9歳の子供の11%にみられます。年齢が上がると自然に治ることもありますが、10-12歳でも4%が悩んでいます。河内さんは「夜尿はいびきと同じで、自分の意志では止められません。小学校低学年以降も続く時は、適切な治療が必要です」と話しています。

おねしょをブザーで知らせる「夜尿アラーム」
治療には主に薬が使われてきましたが、最近注目されているのが、おねしょをブザーで知らせる夜尿アラームです。尿を感知するセンサーをパンツに着けて眠り、尿が出たら「ピッ、ピッ」という電子音で知らせます。本人はアラーム音に気付かないことが多く、家族が体を揺すったり、起こしてあげたりします。

同病院では、これを3か月程度続けるうちに、尿意を感じてトイレに行けるようになったり、膀胱にためられる尿量が増えたりする場合が多いです。

欧米では1960年代から使われてきた。国内では「睡眠を妨げるのは、おねしょの治療に逆効果」との考えから普及しませんでしたが、治療効果の高いことがわかってきました。

薬物療法の場合、尿意で目覚めやすくなるなどの作用がある抗うつ薬では、おねしょの日数が半分以下になる有効率は約50%ですが、薬をやめると40-60%が再発してしまいますし、吐き気などの副作用もあります。

尿量を抑える抗利尿ホルモンの点鼻スプレーでは、有効率は40-80%です。副作用の心配は少ないものの、やめると多くの場合は再発します。これに対し、夜尿アラームの有効率は、同病院のデータでは約60%で、再発率は10-20%と低かったです。

ほあし子どものこころクリニツク(東京)では、薬で効果のない難治性の場合に、夜尿アラ-ムを使用しています。院長の帆足英一(ほあしえいいち)さんは「夜間尿量が多いなどの原因で起こる夜尿では効果は確認されていませんが、難治性の患者で75%の有効率でした」と話しています。

ただ、外泊などで即効性が必要な時は抗利尿ホルモンなどが有効で、状況や症状に応じて治療法を組み合わせます。夜尿アラームは5-6歳では効果が出にくいため、京都府立医大では8歳以降を対象にしています。国産の製品は、医療機関などを通して7000円程度で購入できます。

関連医療機関

京都府立医大病院

ほあし子どものこころクリニツク(東京)

関連サイト

夜尿症ーおねしよーナビ
専門医のインタビューや夜尿症の相談ができる医療機関名、修学旅行などの宿泊行事での対処法などを紹介しています。


前立腺肥大症の「ホルミウム・ヤグレーザー前立腺核出術」



前立腺肥大症の症状
年齢とともに、トイレが近くなる、排尿に時間がかかる、残尿感を覚える、といった症状が現れる男性が多くなります。原因は、前立腺が徐々に大きくなる前立腺肥大症の場合が大半です。

前立腺は、膀胱の下にあり、尿道の周りを包むように位置するクルミ大の男性特有の器官です。肥大した前立腺が尿道を圧迫するため、排尿に問題が起きます。患者は100万人以上で、50歳以上の男性の数人に1人が、この病気とも言われています。

治療では、まず前立腺の筋肉を緩ませて、尿の通りを良くするα1受容体遮断薬などを服用します。これで十分な効果がない場合、外科的な治療が行われます。以前は腹部を切り開く手術が多かったです。しかし、治療効果は高いものの、傷が大きく、体の回復も遅いです。

これに代わり、現在は麻酔をした上で尿道から内視鏡を入れ、肥大部分を電気メスで切り取る「経尿道的前立腺切除術」が主流になっています。手術に要する時間は1時間程度と短いですが、欠点は前立腺自体を切り取ることから、やや出血が多いことです。

新しい治療法「ホルミウム・ヤグレーザー前立腺核出術」
そこで増えてきたのが、電気メスの代わりに、正常組織への影響が少ない特殊な波長を持つレーザーを使った「ホルミウム・ヤグレーザー前立腺核出術」です。

先端からレーザーが出る棒状の器具を尿道から入れ、前立腺の内側部分を削り取っていきます。前立腺をミカンに例えると、外側の皮を残して内側の実をはがすように切除するため、出血が少なくて済みます。切り取った組織は、砕いて吸い出します。

慶応大では、年間100人近くを外科治療しているが、2004年には約15人をレーザーで治療しました。レーザーがとくに活躍するのは、肥大した前立腺の容積が50立方センチ以上と大きな場合です。前立腺が大きいと、手術による出血も多いためです。

慶応大の場合、電気メスによる切除では1週間程度の入院が必要になりますが、レーザーは出血が少ないため、入院も2日程度短縮できます。ただし、レーザーでの治療は電気メスに比べ方法がやや複雑なこともあり、導入した施設は全国で約50か所にとどまります。

最近広がり始めた治療であるため、長期の治療成績も分かっていませんが、「これまでの成績では、電気メスと同等で、90%以上の患者で効果が長続きすると推測されています」と慶応大泌尿器科教授の村井勝(むらいまさる)さんは言います。

レーザー治療にも保険が適用され、3割負担で6万円程度です。このほか入院費用などがかかります。村井さんは「技術の進歩で、治療による体の負担はどんどん小さくなっています。排尿で悩んでいる方は、泌尿器科を受診してほしい」と話しています。

治療開始の基準
尿の出方や悩みは個人によって大きく異なり、前立腺肥大があっても、本人がとくに生活の支障を感じていなければ、治療せずに様子を見るのも選択肢の1つです。ただし残尿が常に50㏄以上あり、腎臓の機能に悪影響を与える恐れがある場合は、治療を受けるのが望ましいです。

関連医療機関

慶応大学病院

腎動脈狭窄症のステント治療

腎不全になる腎動脈狭窄症

腎動脈は大動脈から分かれて、左右の腎臓につながる直径6ミリほどの血管です。腎動脈狭窄症は、血管が硬くなったりもろくなったりする動脈硬化が進んだために起きます。

腎臓は血液中の老廃物を除去する臓器です。腎不全になると、週3回程度、血液を浄化する人工透析に通院しなくてはなりません。透析が必要になる原因は、糖尿病性腎症や慢性腎炎が多いいですが、腎動脈狭窄が原因の場合も1%程度あると東京慈恵医大血管外科教授、大木さんは推測します。

腎動脈狭窄症では、腎機能の低下による自覚症状が出る前に、高血圧が表れることを知っておいてください。狭窄で血流が低下すると、腎臓は全身が低血圧状態になっていると判断し、血流を増やそうと、血圧を上昇させるホルモンを分泌するためです。

一般的な高血圧症では、血圧は40歳代から徐々に上がるが、55歳以上で発症した高血圧や、高齢になって突然悪化した場合、腎動脈狭窄が原因の可能性があります。

腎動脈の狭窄は、体外から血管の様子を見る超音波検査で診断できます。

大木さんは、検査対象として、以下の5つの症状をあげています。

1.高血圧が55歳以上で発症、あるいは悪化した

2.2剤以上の薬を使っても血圧が下がらない

3.腎臓の大きさが左右で大きく違う

4.原因不明の腎機能障害

5.心臓の冠状動脈や足の血管に狭窄がある

体への負担が軽い腎動脈ステント治療

66歳の女性は、高血圧が悪化し、疲労感を強く感じるようになりました。顔がむくみ、腎臓に血液を送る動脈が詰まる「腎動脈狭窄(きょうさく)症」と診断されました。半年後に、左右の腎動脈が2本とも完全に詰まり、腎臓が働かなくなる急性腎不全を起こし、人工透析を始めました。間もなく、腎臓への血液の流れを再開するため、大木さんに、腎動脈にステント(金網の筒)を入れる治療を受けたところ、腎機能が回復しました。血圧も安定して元気に退院し、透析から開放されました。

腎動脈ステント治療は、足の付け根の動脈から、細い管(カテーテル)を入れて、狭くなった部分まで送り込み、風船状の器具で血管を広げたうえ、再び狭くならないよう筒型のステントを血管内に置きます。部分麻酔で可能で、2、3日の入院で済むほど、体への負担が軽い治療法です。

この治療は、米国では年約6万件が行われていますが、日本では従来、高血圧に対する薬物療法が行われていた程度で、ステント治療はまだ年800件ほどです。医師の間でも腎動脈狭窄症の認識が、十分に広がっていないことが背景にあります。

米国で11年間診療して昨年、帰国した大木さんは「この治療で透析をせずに済む人や、血圧が正常化する患者はもっといるはずです。腎動脈の検査は超音波ででき、普及させる必要があります」と訴えます。

しかし、どの程度の狭窄でステント治療を行うべきかについて、米国でも指針はありません。比較的安全な治療ですが、カテーテルで血管内に血の塊ができ、腎機能の一層の低下などを招く危険もあります。大木さんは血圧や腎機能などをみて、「血管が70%以上、狭くなった場合」を目安に治療を検討すると言っています。

関係医療機関

東京慈恵医大血管外科

カレスサッポロ北光記念病院

湘南鎌倉総合病院

岸和田徳洲会病院

小倉記念病院

子宮頸がんのHPVワクチン

子宮頸がん

子宮の頚部にできるもので、子宮がん全体の約65%を占めるほど発生率の高いがんです。

初期は無症状のこともありますが、不正性器出血、おりものがみられます。進行すると出血が持続的になり、おりものも膿性になり悪臭を伴います。さらに進行すると、骨盤の神経が置かされて腰痛が起こったり、膀胱や直腸に広がって排尿困難が生じるようになります。

子宮頸がんの診断は、まず細胞診を行ないます。面貌(めんぼう)などで子宮頚部の細胞を擦り取って、がん細胞の有無を調べます。異常があれば、コルポスコープ(膣拡大鏡)で観察し、頚部の一部を採取して組織を調べます。この段階で、どの程度進行しているかなどがわかります。

出産を希望する人、妊娠中で早期がんの人には、子宮頸部だけを円錐状に切り取って子宮を保存する方法(円錐切除術)が用いられます。

子宮頸がんの原因

子宮頸がんの原因がヒト・パピローマウイルス(HPV)であることは、ドイツのハラルト・ツアハウゼン博士(2008年ノーベル生理学・医学賞)が1983年に発見しています。

HPVには100種類以上の型があります。発がん性があるのは15種類で、子宮頸部の粘膜組織の奥にある基底細胞に感染すると、「いぼ」ができます。

ほとんどの場合は自然に治癒しますが、まれに、HPVの遺伝子が基底細胞のDNAに組み込まれます。そうなると、細胞分裂が異常になり、がん化してしまいます。

感染からがん発症までに10-30年かかると推定されています。国内では毎年約1万5000人が発症し、約3500人が亡くなっています。

世界では年に約24万人が、このがんのため死亡していて、近年は20-30代の患者さんが増えています。

子宮頸がんワクチンによる予防手段があるため「予防できる唯一のがん」と言われ、有効性は10-20年継続するといわれています。

自治医大さいたま医療センター産婦人科の今野良教授によりますと、「12歳の女児全員が接種すれば、子宮頸がんにかかる人を73・1%減らせ、死亡者も73・2%減ると推計されます」と話しています。

子宮頸がんのHPVワクチン

HPVワクチンは、多くのワクチンとは働き方が異なります。

インフルエンザワクチンなど通常のワクチンは、無毒化したウイルスの一部などを体内に注射し、抗体を作って、免疫システムの中に「記憶」を残します。本物のウイルスが来たとき、感染自体は防げませんが、素早い免疫反応で、重症化を防ぐことができます。

一方、HPVワクチンは、ウイルスの「殻」を注射して、血中に大量の抗体を作ります。抗体は子宮頸部の粘膜組織からしみ出て、外からやってきたウイルスの感染を防ぎます。どのくらいの期間、抗体の量が維持され、効果が続くかは分かっていませんが、政府は、今年度中に接種費用の助成を始める予定です。

HPVの「殻は」、L1、L2という2種類のたんぱく質でできています。現在流通しているHPVワクチンは、患者数の多い16型と18型のL1を利用していますが、L1はウイルスの種類によって異なるため、ほかの型の感染は防げません。

万能型HPVワクチンの開発

理化学研究所の神田忠仁チームリーダーらは、L2に、がんを起こす15種類のHPVに共通する部分があることに注目して、L2の共通部分とL1を合体させた「次世代型ワクチン」を開発しました。すべての種類に効果がある万能型ワクチンになると期待されています。

武田薬品工業は先月、このワクチンの製造準備を始めました。神田さんは「次世代型ワクチンが完成すれば、検診の頻度も減らせます。2013年には臨床試験を始めたい」と話しています。

関係医療機関

自治医大さいたま医療センター産婦人科

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