サプリメント事典

-動脈硬化-

動脈硬化 [生活習慣病]

目次
  • 動脈硬化の原因
  • 動脈硬化の対策
  • 動脈硬化に効果効能があるサプリメント
  • サプリメント以外での予防改善

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関連情報

動脈硬化の原因

動脈硬化の原因は、食事よるコレステロールと脂肪の摂り過ぎや過度の喫煙、体内の活性酸素の増加などがあげられます。動脈硬化は生活習慣病の糖尿病高血圧脂質異常症肥満、なども大きく影響しています。

動脈硬化の仕組みは活性酸素が酸化させた酸化悪玉コレステロールをマクロファージ(白血球の1種)が食べて、泡沫細胞になりそれが動脈の壁に蓄積することで血管が狭くなり、動脈の弾力が低下するのです。

動脈硬化が進むと脳内出血や心筋梗塞、腎機能症障害などの生命に関わる大きな病気につながります。

動脈硬化の対策

動脈硬化の対策としては悪玉コレステロールを減らす事と、活性酸素による悪玉コレステロールの酸化を防ぐことがポイントになります。

動脈硬化に効果効能があるサプリメント


サプリメント選びのワンポイント・アドバイス

EPA(IPA) DHA、オリーブ葉、シソ エゴマなどに含まれる不飽和脂肪酸が悪玉コレステロールを減らしてくれます。

OPC(オリゴメトリック・プロアントシアニジン)、グレープシードエキス、ビタミンC、ビタミンEこれらは抗酸化作用があり、悪玉コレステロールの酸化を防ぎます。

イチョウ葉は活性酸素から血管を守り血管を拡張して、血行を促進します。

食物繊維は腸内でコレステロールを吸着して体外に排泄します。

田七人参はコレステロール値を下げ、血行を促進します。

ビタミンB2は肝臓での脂肪代謝を促進してコレステロールを減らしてくれます。

紅麹(べにこうじ)の有効成分モナコリンKは肝臓でのコレステロールの合成を抑制して、血中から悪玉コレステロールを排除してくれます。

葉酸が不足すると「ホモシステイン血症」になり、血管を傷つけますので葉酸を摂る事により動脈硬化を防ぎます。

レシチンは悪玉コレスレロールと中性脂肪を減らして、善玉コレステロールを増やします。

レスベラトロールを摂取すると、寿命遺伝子「サーチュイン遺伝子」が働き、老化要因を抑え動脈硬化を予 防してくれます。

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サプリメント以外での予防改善

食事では肉類や甘いもの、バターなどを減らして魚類や植物性タンパク質、植物油(オレイン酸のオリーブ油、ナタネ油)野菜を増やしてください、もし肉類を食べたい場合は、鶏肉の脂肪が牛や豚の脂肪と比較して固まりずらいので鶏肉を選んでください。

生活面ではタバコやアルコールを控えて、適度な運動を心掛けてください。

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関連情報


閉塞性動脈硬化症(ASO)の人工血管外科手術

閉塞性動脈硬化症は、手足の末梢(まっしょう)動脈が詰まる病気です。50歳以上の中高年男性に多く、脂肪分の多い食生活の影響などで患者数は増えています。

症状は足に現れ、血行不良から足が冷たくなつたり、歩くと痛む「間欠性跛行(はこう)」という症状が出たりします。血管が詰まって、壊死(えし)し、切断を余儀なくされる患者の方も2%います。

治療の第一歩は、病気を悪化させる危険を減らすことです。喫煙、糖尿病、高脂血症、高血圧、肥満、運動不足、ストレスなどの改善で、最も大切なのは禁煙です。

それでも症状が改善しない場合、運動療法や薬物療法が行われます。運動療法では、自転車こぎなどの運動を1日30分程度、週3回行います。薬物療法は、血液をサラサラにする抗血小板薬を服用します。

これらの治療で十分な効果が得られない場合、最初に試みられるのが「血管内治療」です。足の付け根の動脈などに細い管(カテーテル)を挿入し、管の先に付けた風船を膨らませたり、金網の筒(ステント)を置いたりして狭くなった血管を広げます。

血管が完全に詰まっているなど症状が重い時は、血管を移植して患部を迂回(うかい)するバイパスを作ったり、人工血管に替えたりする外科手術が行われます。この手術は保険で認められています。

足の痛みやしびれなどの症状は、「脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)」などの腰痛症とも似ており、誤診されて不適切な治療が行われることがあります。

そして閉塞性動脈硬化症は「足首と上腕の血圧比指数(ABI)」を測る検査で診断できます。

ABIとは、あおむけに寝て測った足首の最高血圧を、上腕の最高血圧で割った値です。通常、足首の血圧の方が高めですが、動脈が細くなったり、詰まったりして血行が悪いと、心臓に近い上腕に比べて、血圧が低くなり、値が1より小さくなります。

0・9以下なら、動脈硬化が進んでいる危険性があるので、さらに超音波や血管造影などの精密検査を受けて、異常が見つかれば、診断がつきます。

脊柱管狭窄症では前かがみになると、痛みが楽になる傾向がありますが、閉塞性動脈硬化症では、そのようなことはありません。


関係医療機関 東京医科大学病院


大動脈瘤の新しい血管内治療「ステントグラフト内挿術」



大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)
大動脈瘤は、動脈硬化などによって大動脈の一部がもろくなり、瘤状(こぷじょう)にふくれる病気です。大きく、胸部大動脈瘤と腹部大動脈瘤に分類されます。自覚症状がないことがほとんどですが、破裂すると大量の血液を一気に失い、高い確率で死に至るため「サイレントキラー」とも呼ばれています。

破裂リスクは瘤の大きさや拡大速度、形状などによって診断されます。胸部で6センチ以上、腹部で5.5センチ以上の場合、あるいは1年間で0.5センチ以上拡大している場合は、手術を検討します。また、片側に瘤が飛び出ている「のう状瘤」と呼ばれるタイプは破裂リスクが高いです。

血圧を下げる等の内科的治療はほとんど効果なく、外科治療が中心となります。外科治療には、従来から行われているお腹を開いて行う「人工血管置換術」か、新しい血管内治療である「ステントグラフト手術」があります。

従来の治療法の「人工血管置換術」は、お腹を30センチ程切開して大動脈の血流を一時的に遮断して、瘤の部分を人工血管で置き換える手術です。治療法としてほぼ確立しており、死亡率は1-3%台と手術成績も安定しています。

しかし、開腹するために体への負担が大きいことや、全身麻酔をかけなければならないこと、また将来の腸閉塞や性機能障害などの合併症の危険性もあります。心臓や肺に過度の負担がかかるため、高齢の方や合併症の多い方は手術リスクが非常に高くなります。また、全身麻酔をかけられない方は、治療が受けられないというデメリットがあります。

新しい血管内治療の「ステントグラフト内挿術」
新しい血管内治療のステントグラフト内挿術は、「ステントグラフト」と呼ばれるステント付きの人工血管を、血管内に挿入して大動脈を内側から補強する方法で、お腹や胸を切る必要もなく、数日で退院が可能です。

ステントグラフト内挿術では、足の動脈(大腿動脈)から小さく折りたたんだステント付きの人工血管を大動脈の中に挿入し、レントゲン透視装置下で瘤の位置に留置固定する手術です。

足の付け根を数ミリから数センチ切開するだけで行えるため、全身麻酔をかけられないような合併症の多い患者さんにも、局所麻酔あるいは背中の麻酔(硬膜外麻酔や脊椎麻酔)下で行えます。

痛みが少なく入院期間が短くてすむのが特徴です。「人工血管置換術」では約2-3週間の入院期間を要していましたが、「ステントグラフト手術」では3-4日で退院が可能です。また、開腹しないので、手術リスクの高い高齢の方にとっては特に有用です。

ステントグラフト内挿術の特長は、なんといってもからだの負担が小さいことです。局所麻酔でも治療することができ、手術当日から食事や歩行が可能です。また、人工血管置換術は約3割に重い合併症が起こるのに対し、ステントグラフト内挿術は約5%といいます。なにより、心臓や肺の働きが弱い、高齢である、といった患者さんにも、治療の可能性を広げました。

東京慈恵医大病院の血管外科教授、大木隆生医師は「瘤の形によってはできないこともあるなど、ステントグラフトにも課題があります。しかし、手術できずに破裂の不安を抱えていた多くの患者さんが、この治療で再び安心して生活できるようになりました」と話しています。

大木医師はステントグラフトを開発するため1995年に単身渡米しました。アルバート・アインシュタイン医科大学で12年間勤務し教授となった後、06年、母校に請われて帰国しました。これまで日米両国で、1500例以上のステントグラフト治療を実施しています。同院では過去3年問に500例以上の腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術を施術しましたが、死亡者はゼロです。

大木医師は大動脈から分枝する腎動脈などが動脈瘤に巻き込まれた胸部大動脈瘤に対して「枝付きステント」などを駆使しています。ただし、すべてが手術対象となるわけではありません。慈恵医大病院でも、受診患者の約6割は破裂リスクが低いので経過観察になります。

腹部大動脈瘤が2007年1月に保険適用となって以降(胸部大動脈瘤は2008年7月に保険適用)、治療を受けられる病院は増加しました。

ステントグラフト内挿術の実施医の条件
ステントグラフト内挿術の実施医になるには条件があり、関連10学会で構成する「ステントグラフト実施基準管理委員会」の基準を満たす必要があります。

たとえば腹部大動脈瘤では「腹部大動脈・腸骨動脈瘤の治療(手術あるいはステントグラフト内挿術)を、術者または助手として10例以上経験している」などの条件があり、最初の2例は指導医のもとで実施しなくてはなりません。

関係医療機関

東京慈恵会医大病院

湘南鎌倉総合病院


下肢静脈瘤の「硬化療法」と「ストリッピング手術」


下肢静脈瘤
体の隅々から、二酸化炭素や老廃物を運んでかえる静脈は、ポンプの働きをする心臓から遠いので、血液が滞留しがちです。人間は立って生活しますので、静脈には逆流防止用の弁が何か所も付いていますが、これが壊れ、血液が足にたまるのが静脈瘤です。命にかかわることはありませんが、足のかゆみなどが続き、放置しますと悪化し、皮膚がただれることもあります。

患者には、長時間の立ち仕事を長年続けてきた職人や、妊娠・出産を経験した中年以上の女性などが多いです。

足の静脈血は、歩いたり階段を上ったりすれば、筋肉の働きに助けられて心臓に帰っていきます。足が「第二の心臓」と言われるゆえんです。しかし立ったまま働く人などは、足の血液が滞留しがちで、弁にも負担がかかります。妊娠した女性も、ホルモンの影響などで足の血液が、心臓に戻りにくくなり、弁が故障しやすくなります。

実際、最も逆流が起きやすいのは、足の付け根の内側にある表在静脈の弁です。ここは足の骨近くを流れる深部静脈との合流点で、ひざ下にできる静脈瘤の大部分は、表在静脈の血液を止めることで、治療できます。流れを遮っても、血液は合流部から深部静脈に迂回して流れるので、問題はありません。

「硬化療法」と「ストリッピング手術」
血管を固めてしまう薬を注射する「硬化療法」もありますが、再発しやすいです。治療には、静脈瘤ができた血管全体を壊れた弁ごと抜き取る「ストリッピング手術」が最も効果的です。ただし全身麻酔を使うため、従来は約一週間の入院が必要でした。

日本医科歯科大血管外科では、この2つの治療法を組み合わせることで、日帰り手術を行っています。太ももの静脈は手術で引く抜きますが、ひざ下には硬化療法を行います。傷口は、足の付け根とひざ下の二か所に約2センチできるだけで、目立ちません。

麻酔の使い方の工夫も、日帰り手術を可能にしました。局所麻酔で、治療が終わると患者は手術室を歩いて出てきます。病院内でしばらく様子を見た上で帰宅できます。長時間の立ち仕事や激しい運動を避ければ、その日から普通に生活できるといいます。

この局所麻酔はTLA(大量低濃度局所浸潤麻酔)といいます。太もも全体に、十分の一の濃度に薄めた麻酔薬を、通常の量の十倍程度つかいます。血管を引く抜く痛みや出血が減り、痛み止めの効果も翌朝まで持続します。

手術時間は40分程度です。手術から約一か月は、血流が滞るのを防ぐため、特殊なストッキングをはいて足を圧迫する必要があります。ストッキング代以外は、すべて保険がききます。

血管内治療
体の負担の少ない日帰り最新治療として、最近、ラジオ波や半導体レーザーを使った「血管内治療」も登場しています。局所麻酔(TLA麻酔)を使い、逆流が起きている静脈にごく細いカテーテルを挿入します。超音波診断装置で血管の形を見ながら、ラジオ波やレーザーの熱で静脈の内部を焼ききり、血液の流れを止めてしまう手術です。

局所麻酔を使い、血管を引き抜くストリッピング手術以上に、傷が小さくて済むのが特長で、手術時間はわずか15分から20分で終わります。

しかし残念ながら、まだ保険がきかないため、一部の医療機関でしか実施していませんが、すでに欧米では主流になりつつあるといいます。

大切なのは正しい診断で、下肢静脈瘤は症状に合わせて、様々な治療を選択できるようになりました。専門の血管外科を受診し、最適な治療法を選んでください。

関係医療機関 日本医科歯科大血管外科

脳卒中のステント新治療

大きな脳動脈瘤

脳動脈の分かれ目などにできるこぶ(脳動脈瘤)は、くも膜下出血の原因となるため、破裂を防ぐ治療が検討されます。入り口が広い大きな動脈瘤は、こぶにコイルを詰めてふさぐ血管内治療が難しいとされてきました。コイルがこぶから飛び出すのを防ぐ新しいステント(金属製の網)が開発され、開頭せずに済む負担が軽いこの治療法も選択できるようになりました。

神戸市在住の50代女性は、視野が白くかすむため、市内の病院を受診したところ、画像検査で、左目裏側の内頸動脈の分かれ目に、最大径約2センチの動脈瘤が見つかりました。

破裂前でも動脈瘤は、5~7ミリの大きさから破裂を防ぐ治療が検討されます。10ミリ以上になると、1年間に100人のうち5人が破裂する程度に危険が高まります。大きなこぶの破裂は大量出血につながるため、女性には早期の治療が必要でした。

動脈瘤の治療は、こぶの根元をクリップで留める手術と、脚の付け根の血管から入れた細い管(カテーテル)を操作してこぶ内にコイルを詰める血管内治療が行われています。

女性の動脈瘤は目の神経に近く、手術では神経を傷つけ、目や顔の動きに障害が出る心配がありました。また、こぶの入り口が7ミリと広く、詰め切る前にコイルがはみ出てしまうため、従来の血管内治療も難しいです。

脳動脈瘤塞栓術用ステントによる治療

幸いだったことは、2010年7月に新たな脳動脈瘤塞栓術用ステントが保険で使えるようになったことです。こぶの入り口をまたいでステントを置き、その後にコイルを詰める方式です。女性は2010年8月に、神戸市中央区の神戸市立医療センター中央市民病院で治療を受けました。

治療した同病院脳神経外科部長の坂井信幸さんは「ステントがコイルの脱落を防ぐため、すき間なくコイルを詰められます。治療時間も、ステントなしにコイルを詰める場合と比べ、半分以下の1時間半で終わることができました」と話します。

脳動脈瘤塞栓術用ステントは、こぶの最大径が7ミリ以上で、入り口が最大径の2分の1より大きい未破裂動脈瘤の治療に使われます。

国内では1年に3万2000件の脳動脈瘤の手術・治療が行われています。そのうちの25%の8000件が血管内治療です。坂井さんは「年1000件以上は、この新しいステントで行われるでしょう」と話します。同治療は研修を受けた日本脳神経血管内治療学会専門医が行いますが、2011年に約120人に増えるといいます。

外科手術が向いている中大脳動脈治療

大きな脳動脈瘤は、内頸動脈、椎骨動脈、脳底動脈に出来ることが多いいです。これらの血管のこぶには血管内治療が可能ですが、脳表面を覆う中大脳動脈は、分岐が複雑で、外科手術が向いています。

中大脳動脈などに出来た風船のように膨らんだ形のこぶには、両側の血管を挟み、こぶに血が流れないようにした後で、首やこめかみの動脈と血管をつなぎ、血流を回復するバイパス術が行われています。

坂井さんは「大きな脳動脈瘤の治療には、血管内治療、外科手術の両方とも、高い技術が必要です」と話しています。

関係医療機関

神戸市立医療センター中央市民病院

胸部大動脈瘤・ハイブリッド手術

高齢者に多い胸部大動脈瘤

大動脈は心臓から全身に血液を送る体内で最も太い血管で、弓状に曲がり背骨に沿って腹部方向に延びています。動脈硬化などで血管に弱い部分があると、血流の圧力で血管の壁が薄く大きく瘤状に膨らみます。この動脈瘤自体はほぼ無症状ですが、直径が60ミリを超えると破裂の危険性が高まります。破裂時には激しい胸の痛みや大量の出血で意識障害などに陥り、死亡率は8割を超えます。

ステントグラフトによる治療は手術後の負担が軽減される利点で知られています。ステントグラフトはポリエステルやフッ素樹脂製の人工血管に金網を編み込んだもので、直径10ミリ未満に折り畳んで太ももの付け根の血管などから挿入します。患部に届くと血管の太さに合わせて26ミリ~40ミリに開き、手術は2時間程度で終わります。

従来は人工心肺を使いながら動脈瘤を切り取り、人工血管に置き換える治療が主流で、手術は12時間に及ぶこともありました。翌日以降も集中治療室で数日間管理され、手術後から退院まで最低10日は必要でした。患者の中心は高齢者で体力も低下しており、手術が難しいケースも多かったです。

そこで考えられたのが、ステントグラフトと呼ばれる人工血管を患部に置く治療に、バイパス手術を加えた「ハイブリッド(混成)手術」です。

ステントグラフトとバイパスの組み合わせハイブリッド手術

ハイブリッド手術は、弓状に大動脈が曲がる「弓部」にできた大動脈瘤に行います。弓部周辺は、脳や腕につながる左総頸動脈(ひだりそうけいどうみゃく)、左鎖骨下動脈、腕頭動脈の3本の血管に分岐しています。ステントグラフトは、腹部大動脈瘤、弓部より下の胸部大動脈瘤の治療に既に使われていますが、弓部では枝分かれする血管をふさいでしまいます。このため人工血管で迂回路を作るバイパス手術を事前に行い血流を確保したうえで、ステントグラフトを挿入するこの手法が考案されました。

人工心肺は不要で、開胸手術が必要な場合もありますが、多くはわきの下や鎖骨部分の切開で済みます。手術は3~8時間で、翌日には通常の食事や歩行も可能です。そして治療には保険が適用されます。

大阪在住の80代男性は2000年に、心筋梗塞で入院した際、弓部の大動脈瘤が見つかりました。そして2008年には、受診した森之宮病院(大阪市城東区)で61ミリに肥大していることが判明しました。高齢や病歴などから通常の手術が難しく、男性はハイブリッド手術を受けることになりました。

両わきと頸動脈付近を切り、人工血管を縫いつけるバイパス手術も行った上で、左足の付け根の血管からステントグラフトを挿入しました。手術の8日後には退院した男性は、「翌日には普通に食事もできました。今は好きなお酒も楽しんでいます」と話しています。

同病院では昨年、胸部大動脈瘤の手術や治療を受けた患者約85人の8割がハイブリッド手術を受けています。男性の主治医の加藤雅明・心臓血管外科部長は「治療実績の分析が今後必要ですが、諸外国のデータからも手術時間や入院期間も大幅に短縮でき、合併症の危険性も低いです」と強調しています。

関係医療機関

森之宮病院心臓血管外科

脳梗塞の新治療血栓回収治療

脳梗塞は薬物治療が中心

血栓を溶かす薬である「tPA(=ティーピーエー)」(組織性プラスミノーゲン活性化因子)の点滴治療は、受けた患者さんの4割が、3か月後にほぼ後遺症なく回復するとされています。

しかし、tPAは新たな出血の危険も高まることから、対象は以下の場合とされ、救急車で運ばれた患者さんの数%にとどまります。

1.発症から3時間以内である

2.CT(コンピューター断層撮影法)検査で出血の危険が低いと確認できる

それ以外は一般的に、脳のむくみを抑えたり血を固まりにくくしたりするなどの薬物治療が中心です。

カテーテルを使う血栓回収治療

新たに登場した「血栓回収治療」は、脚の付け根の血管からカテーテルを通し、先端から、形状記憶合金でできたワイヤをらせん状に開くとともに、樹脂製の細い糸を出して血栓をからめ取り、引っ張り出します。

しかし、血栓回収治療が可能なのは、カテーテルが入れる太さの脳血管が詰まった場合に限られます。また、脳の損傷が進んだ後では効果がないため、発症から8時間までの患者さんを対象としています。

欧米では2000年代前半から実用化しています。米国の臨床試験では、tPAを使えなかった164人に行い、3か月後に身の回りのことを介助なしに行えるまで回復したのは36%でした。一方、死亡やまひにつながる脳内出血などの重い有害事象は9・8%にみられました。機器が血管を突き破って死亡した例もありました。

血栓回収治療は、細い血管や大きく曲がった部位に用いるのは危険で、ワイヤで血管を傷つける恐れがあります。虎の門病院(東京・港区)脳神経血管内治療科部長の松丸祐司さんは「安全に行うためには、十分に訓練した医師が行う必要があります」と話します。

2010年10月、同病院に救急車搬送された73歳男性は、当初まひの回復が見られたためtPA治療は見合わせましたが、その後症状が悪化しました。すでに発症から3時間以上たっていたため、血栓回収治療を行いました。右手にややしびれが残るものの、10日後には日常生活に支障のない状態まで回復しました。

松丸さんは「3時間以内なら従来通りtPA治療を優先し、血栓回収治療はtPAの効果がなかった場合や使えない場合に用います」と話します。

日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本脳神経血管内治療学会は合同で、この治療ができる施設の基準を定め、医師にはメーカーによる研修の受講を義務づけています。メーカーによりますと、約400施設の約600人(2011年1月6日現在)が受講を済ませています。

関係医療機関

虎の門病院脳神経血管内治療科

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脳梗塞の新薬 tPA(組織性プラスミノーゲン活性化因子)

腎動脈狭窄症のステント治療

腎不全になる腎動脈狭窄症

腎動脈は大動脈から分かれて、左右の腎臓につながる直径6ミリほどの血管です。腎動脈狭窄症は、血管が硬くなったりもろくなったりする動脈硬化が進んだために起きます。

腎臓は血液中の老廃物を除去する臓器です。腎不全になると、週3回程度、血液を浄化する人工透析に通院しなくてはなりません。透析が必要になる原因は、糖尿病性腎症や慢性腎炎が多いいですが、腎動脈狭窄が原因の場合も1%程度あると東京慈恵医大血管外科教授、大木さんは推測します。

腎動脈狭窄症では、腎機能の低下による自覚症状が出る前に、高血圧が表れることを知っておいてください。狭窄で血流が低下すると、腎臓は全身が低血圧状態になっていると判断し、血流を増やそうと、血圧を上昇させるホルモンを分泌するためです。

一般的な高血圧症では、血圧は40歳代から徐々に上がるが、55歳以上で発症した高血圧や、高齢になって突然悪化した場合、腎動脈狭窄が原因の可能性があります。

腎動脈の狭窄は、体外から血管の様子を見る超音波検査で診断できます。

大木さんは、検査対象として、以下の5つの症状をあげています。

1.高血圧が55歳以上で発症、あるいは悪化した

2.2剤以上の薬を使っても血圧が下がらない

3.腎臓の大きさが左右で大きく違う

4.原因不明の腎機能障害

5.心臓の冠状動脈や足の血管に狭窄がある

体への負担が軽い腎動脈ステント治療

66歳の女性は、高血圧が悪化し、疲労感を強く感じるようになりました。顔がむくみ、腎臓に血液を送る動脈が詰まる「腎動脈狭窄(きょうさく)症」と診断されました。半年後に、左右の腎動脈が2本とも完全に詰まり、腎臓が働かなくなる急性腎不全を起こし、人工透析を始めました。間もなく、腎臓への血液の流れを再開するため、大木さんに、腎動脈にステント(金網の筒)を入れる治療を受けたところ、腎機能が回復しました。血圧も安定して元気に退院し、透析から開放されました。

腎動脈ステント治療は、足の付け根の動脈から、細い管(カテーテル)を入れて、狭くなった部分まで送り込み、風船状の器具で血管を広げたうえ、再び狭くならないよう筒型のステントを血管内に置きます。部分麻酔で可能で、2、3日の入院で済むほど、体への負担が軽い治療法です。

この治療は、米国では年約6万件が行われていますが、日本では従来、高血圧に対する薬物療法が行われていた程度で、ステント治療はまだ年800件ほどです。医師の間でも腎動脈狭窄症の認識が、十分に広がっていないことが背景にあります。

米国で11年間診療して昨年、帰国した大木さんは「この治療で透析をせずに済む人や、血圧が正常化する患者はもっといるはずです。腎動脈の検査は超音波ででき、普及させる必要があります」と訴えます。

しかし、どの程度の狭窄でステント治療を行うべきかについて、米国でも指針はありません。比較的安全な治療ですが、カテーテルで血管内に血の塊ができ、腎機能の一層の低下などを招く危険もあります。大木さんは血圧や腎機能などをみて、「血管が70%以上、狭くなった場合」を目安に治療を検討すると言っています。

関係医療機関

東京慈恵医大血管外科

カレスサッポロ北光記念病院

湘南鎌倉総合病院

岸和田徳洲会病院

小倉記念病院

動脈硬化症の脈波速度・ABI・頸(けい)動脈などの各種検査

動脈の硬さを調べる脈波速度検査

動脈硬化は血管が硬くなると同時に、血管の内側の壁にコレステロールがたまる状態です。動脈硬化がある血管表面が崩れると、血液が固まって心筋梗塞(こうそく)などが引き起こされます。

「脈波速度検査」では、動脈の硬さを調べます。手首や首筋に触れる脈は、心臓から押し出された血液による振動が波(脈波)として血管壁に伝わったものです。健康な人は血管に弾力性があるため、振動が血管壁で吸収され、脈波の速度は遅いです。動脈硬化が進むと、脈波は速くなるので、速度を指標として動脈硬化の進行を推定することができます。

検査は、血圧測定用の圧迫帯(カフ)を上腕と足首に巻いて行います。検査機器に身長、年齢、性別を入力して、スタートボタンを押すと脈波速度が割り出されます。検査時間は5分ほどです。

年齢とともに、脈波速度は速くなりますが、健康な人の脈波速度と比較することで、「血管年齢」を推定することもできます。

内臓に脂肪がたまるメタボリックシンドロームと言われた50歳代の男性は3年前、東京医大病院(東京・西新宿)で脈波速度検査を受けました。脈波速度はかなり速く、「血管年齢は70歳に相当する」との結果が出ました。循環器内科教授の山科章さんは「将来、心筋梗塞などを発病する危険性が高い」と生活改善を指導しました。

身長168センチ、体重76キロの男性はスポーツジムに通い、食事量を減らすなどして1年後に10キロ減量しました。検査結果は正常になりまた。

山科さんは「実年齢より5~10歳以上高い結果が出たら注意が必要です」と話しています。検査は測定時の血圧などの影響を受けるので、安静な状態で行う必要があります。

足首と腕の血圧(ABI)検査

ある程度、動脈硬化が進んだ状態で「異常」を見つけることができるのが、「足首と上腕の血圧比指数(ABI)」検査です。あおむけに寝て測った足首の最高血圧を上腕の最高血圧で割った値のことです。

健康な人は、足首の血圧の方が高いので、ABIは「1」より大きくなる。ところが、動脈硬化は上半身より下半身で起こりやすいので、全身の動脈硬化が進むと足首の血圧が下がります。

0・9以下だと、足の血管が狭くなる「閉塞性動脈硬化症」の疑いが強くなります。この病気の患者の2割以上が心筋梗塞や狭心症、脳梗塞を併せ持っており、全身の動脈硬化進行度の指標にもなっています。検査は1分ほどで終わります。

頸(けい)動脈の血管検査

全身の動脈の中で動脈硬化が進みやすい血管の一つに、首の左右にある頸(けい)動脈があります。症状がなくても頸動脈の6割が狭さくしていると、2年間に5%の人が脳梗塞を起こします。皮膚表面近くを走る頸動脈は内部の様子を超音波で観察しやすいので、この動脈を調べ、全身の動脈硬化を推定することができます。

超音波検査は、脈波速度検査などと違い、実際に血管の内部を画像として診ることができる点が優れています。

しかし、超音波画像の濃淡や形から血管壁の状況を読みとる必要があるため、検査を行う医師や検査技師に技量が求められます。検査には20~30分かかります。

いずれの検査も循環器内科(頸動脈超音波検査は神経内科でも)で受けることができます。山科さんは「糖尿病などがある人は知らないうちに動脈硬化が進んでいることが多いいです。体に負担のない脈波速度検査とABI検査を年に1度は受けて動脈硬化の進行度をチェックして、心筋梗塞などの予防に役立ててほしい」と話しています。 

脈波速度検査とABI検査を受けられる医療機関

全国に約8000あります。

お問い合わせは、検査機器の販売会社・オムロンコーリン(電)0120・078・203(月~金曜日午前9時から午後5時まで)。

病気の疑いがあれば、健康保険の扱いになります。


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