サプリメント事典

-美肌-

美肌

目次
  • 「美肌」美しい肌の大敵
  • 「美肌」美しい肌を保つ対策
  • 「美肌」に効果効能があるサプリメント
  • サプリメント以外での対策

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関連情報


髪の毛

「美肌」美しい肌の大敵

「美肌」美しい肌の大敵はシミやバカス、肌荒れです。

1、シミの原因は紫外線が細胞を破壊したときにできる物質「リポフスチン」が皮膚に蓄積した物です。「リポフスチン」は加齢色素とも呼ばれています。

2、ソバカスは皮膚が紫外線を浴びると、皮膚の内部に有害な活性酸素ができます、これを吸収して無毒化するのが黒い色素「メラニン」でこれが増えることにより肌が黒くなります。これが俗にいう「日焼け」で黒い色素「メラニン」が肌に残ってソバカスになります。

3、肌荒れは風邪疲労による体調不良や、栄養不足、便秘などで起きます。

「美肌」美しい肌を保つ仕組みは、皮膚は中から新しい細胞ができて古い細胞を押し上げ、古い細胞は角質層になって表面から落ちていきます。古い細胞が新しい細胞に代わることを新陳代謝と呼び、細胞が入れ替わる速度を「ターンオーバー」と呼びます。

「ターンオーバー」は肌を露出した部分で約10日、衣類で覆われている部分の皮膚では約20日ですが加齢や環境の変化などによって順調に進まないと、古い細胞が残ってシミやソバカスになります。

「美肌」美しい肌を保つ対策

「美肌」美しい肌を保つ対策としては、いかに新陳代謝を活性化するかがポイントになります。

「美肌」に効果効能があるサプリメント


サプリメント選びのワンポイント アドバイス

ビタミンCはメラニンの生成を押さえ、肌にできた黒いメラニンを脱色したうえコラーゲンの生成に欠かせせず、強い抗酸化物質でもありますので美肌作りには重要です。
アセロラやカムカムはビタミンCを豊富に含んでいます。

ビタミンAビタミンB2は皮膚や粘膜の健康を守る働きがあります、特にビタミンAは皮膚のターンオーバーを活発にします。

ビタミンEはビタミンAやCと共に活性酸素を分解して、顔の毛細血管の血行を良くして表皮細胞の新陳代謝を活発にします。

クランベリー、グレープシードエキス、ラズベリーは強い抗酸化力で肌を守ります。

サジーはビタミンAを多く含みその他のビタミンも含んでいて肌を美しく守ってくれます。

プラセンタの「成長因子」(グロース・ファクター)によって細胞の分裂速度が速まり、全身の組織、臓器、肌を若返らせます。

プルーンはビタミンAを豊富に含み便秘にも効果があります。

ビオチンの不足は、掌せき膿庖症(しょうせきのうほうしょう)とアトピー性皮膚炎の原因と言われます。

レスベラトロールを摂取すると、寿命遺伝子「サーチュイン遺伝子」が働き、老化要因を抑え肌の老化を予 防します。

マルチビタミン・ミネラルを服用することで、三大栄養素代謝を円滑に進める酵素を十分に働かせることができます。日常の体調を維持するための、予防として服用してください。


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サプリメント以外での対策

紫外線は美肌の大敵ですので、日焼けのし過ぎには注意してください。

入浴やシャワーを日に何度も繰り返すと皮膚の皮脂膜を作る表皮ブドウ球菌などが洗い流されて、回復する時間がないためドライスキン乾燥肌になる上に、そこから病原菌などが進入しやすくなりますので肌の洗い過ぎに注意してください。

また使用する石けんは市販のグリセリンの入っていない安価な石けんでなく、マルセイユ石けんやアレッポ石けんなどグリセリンを含んだ物を選びましょう。グリセリンには空気中の水分を吸収する性質があり肌の潤いを守ってくれます。

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関連情報


尋常性白斑には新紫外線療法「ナローバンドUVB」

尋常性白斑(じんじょうせいはくはん)は皮膚の色素を作る細胞「メラノサイト」が少なくなり、色素が抜けてしまい、白いシミのようになってしまう病気です。かゆみや痛みはありませんが、美容上の問題で悩む方は多いです。

尋常性白斑には、全身に左右対称にできる「汎発型」、片側の神経に沿ってできる「分節型」、一部にできる「限局型」があります。このうち「汎発型」は、免疫細胞のリンパ球があやまって、メラノサイトを攻撃することが原因とされています。このため患部に紫外線を照射し、免疫細胞を死滅させたり、働きを抑制したりす治療が行われます。

従来の治療は、感受性を高める薬と波長の長い紫外線(UVA)照射を併用する、PUVA(プーバ)療法が主な治療法でした。しかし副作用として、照射後24時間は、日光を浴びるとやけどをする恐れがあったり、顔の治療が困難だったりしました。

新しく開発されたナローバンドUVBは、治療に有効なごく限られた範囲の波長のみを照射しますので、エネルギーがPUVA(プーバ)療法より強力で、薬が不要になり顔の治療も可能になりました。

ナローバンドUVBは、尋常性白斑だけでなく、皮膚の表面に白いかさぶたのような鱗屑(りんせつ)ができ、痛みやかゆみを伴なう尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)や、アトピー性皮膚炎の治療にも使われています。

ただし紫外線を使いますので、皮膚がんの心配がありますので、初回に少量を照射し、皮膚の赤みをみて、慎重に治療を進めなければなりません。尋常性乾癬はナローバンドUVBでは完治しませんので、再治療が必要になります。このため尋常性乾癬の治療では、発がんの危険が高まりますので、薬物療法と組み合わせる工夫が必要になります。

関係医療機関 東京大学病院

ケロイドの治療法

外傷、やけど、手術などで皮膚が傷ついた跡は、傷を修復する過程で赤く盛り上がり、かゆみが出ることがあります。通常の傷は少しずつ目立たなくなりますが、赤みなどが残る傷跡は、肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)と呼ばれます。この場合、悪化することはなく、治療の必要はありません。

これに対し、傷跡が数ヶ月以上経過しても、周囲の正常な組織に少しずつ広がり続けるのがケロイドです。強いかゆみや痛みがあるばかりでなく、赤黒くなるなど、見た目の問題も大きいです。

とくに肩や胸、下腹部など呼吸や日常動作で、皮膚を引っ張る力がかかる部位にケロイドは、できやすいです。にきびやピヤスで開けた耳たぶの穴から、こぶ状に大きくなることもあります。遺伝やアレルギーなど複合的な原因がると言われ、自然に治りません。

これまで確実な治療法がなかったですが、最近は傷跡の手術と、電子線(放射線の一種)を当てる治療を組み合わせる方法が、効果を上げています。

日本医大の治療の手順は、手術でケロイドの広がりを防ぐため、傷跡を手術で大きめに深く切り取ります。皮膚の深い部位から皮下、真皮、表皮の三層を、傷が盛り上がるような形に縫い合わせる三層縫合という方法をとります。いずれの傷の部分が伸びて、平らになることを見越して、皮膚に余裕を持たせる特殊な縫い方をします。

しかし手術でケロイドを取り除いただけでは、再発の恐れがありますので、翌日から手術した部位に放射線治療器で電子線を照射します。傷を修復する働きが過剰になり、ケロイドの原因となる線維芽細胞の増殖を抑えるためです。日本医大では、再発しやすい胸や肩は4日間、耳たぶは2日間と、部位によって当てる放射線の量を変えています。電子線は皮膚表面に強い作用がありますが、内臓や骨などには達しない性質を持つため、照射による発がんの心配はないそうです。

治療後の自己管理は、患部の保護や湿布のため、厚さ数ミリのシリコン製シートを3ヶ月から半年ほど張ります。さらにアレルギーを起こす物質の作用を抑えるために、抗アレルギー薬のトラニストを内服することが多いです。

これらの治療で日本医大では、再発率は胸や肩などで3割、その他では2割以下に抑ええられ、患者の7割が治っています。治療には保険が使え、通常1週間程度の入院が必要になります。

関係医療機関 日本医科大学付属病院

重度の火傷などに人工皮膚

皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織の三層構造になっています。皮膚表面が傷ついた場合、表皮に近い組織を尻や腹などの正常な部分から移植します。

しかし重い火傷や傷によって、皮下組織まで傷つくと、表面の移植では、厚みがなくなって傷ついた部分に不自然な段差ができたり、へこんでしまったりします。また皮膚をつまんだ時に、皮膚全体が伸びるような柔軟さも取り戻せません。

このような重度の皮膚の損傷には、「人工皮膚」を使用します、主成分はコラーゲンです。厚さ約3ミリのスポンジ状で、牛や豚の真皮や腱を材料に、拒絶反応が少ないように作られています。
重い火傷や事故などによる皮膚の損傷、皮膚がんなどの腫瘍の切除後、唇や上あごがくっつかないで生まれてくる口唇・口蓋烈(こうしん・こうがいれつ)などに使われます。保険は適用されます。

皮膚は5、6倍に伸びるため、全身の30%程度までの火傷なら、自分の皮膚に移植だけで治すことができます。しかし、それ以上の火傷では感染症を起こしやすく、治りも遅くなるため、人工皮膚が使用されます。

使い方は、傷口をきれいにして、不要な組織を切除した上で、人工皮膚を糸などで張り付け縫い合わせます。後はガーゼなどをあてて、軽く圧迫し固定します。手術から一週間程度で、皮下組織から新たな毛細血管や細胞の元になる線維芽細胞が人工皮膚のスポンジの中に入り込みます。二、三週間ほどで元の皮膚に近い状態になります。

人工皮膚の課題は、張り付けた部分から発汗や発毛がほとんどなく、感触も劣ることです。頭髪など目立つ部分は、残った髪を移植する場合もありますが、広範囲ではかつらが必要になります。黒ずむ場合もあり、見た目に分からないほどまでに、回復するのは難しいです。

関係医療機関 日本医科大学付属病院

糖尿病性潰瘍や壊疽などに「創傷ケアセンター」


糖尿病性潰瘍や壊疽


糖尿病が悪化しますと、動脈硬化が進んで足の血管が詰まり、皮膚や骨が膿む壊疽(えそ)を起こします。この場合は、足を切断するケースが多いです。

このような糖尿病性潰瘍や壊疽(えそ)の患者は増えており、70万人とも推定されています。このほか、動脈や静脈の血流障害による潰瘍、床ずれ(褥瘡:じょくそう)など、なかなか治らない傷を総称して「慢性創傷」と言います。

しかし、慢性創傷を治す体系的な技術や知識を持った医師は、日本にはほとんどいないのが実情です。担当の診療科も決まっていません。

内科は糖尿病の治療はできるが、足の傷は不得手です。一方、骨を治療する整形外科も、細菌感染を伴う場合は治療を避けがちになります。足の切断は、医師の治療経験が乏しい場合もあると言われてます

創傷治療の「創傷ケアセンター」


そこで、創傷治療が進んだ米国の医療マネジメント会社が、専門病院から検査・治療法などの情報を集め、日本の病院での治療に導入したのが「創傷ケアセンター」です。腐りかけた足などの「再生」を目指します。その最も重要な鍵となるのが「血流」です。

専用の検査機器で血流を調べ、ある程度血流があれば、腐った部分切除して組織の再生を促します。血流が足りないなら、バイパス血管を植えるなどの治療を行い、足の切断を回避します。

医療マネジメント会社は、このような治療手順書を病院に提供し、担当の医師や看護師には米国で研修を受けてもらいます。実際の診療では、傷の大きさ、状態などの診療記録を送ってもらい、問題点を指摘したうえ、米国の創傷専門医との電話検討会を通し、治療法について助言します。

練馬総合病院など比較的治療経験の長い全国5か所の創傷ケアセンターでは、14週間以内での治癒率は平均7割。別の病院で「足の切断が必要」と言われた患者のうち、4割は切断を回避できた。治療には保険が使えます。

関係医療機関 練馬総合病院



多汗症の治療


多汗症の症状
汗には2通りあります。暑い日や、運動で体温が高くなった時、体から熱を逃がすために全身から出る汗と、もう1つは、緊張したり、驚いたりした時に手のひらや足の裏、額、わきの下から出る汗です。

多汗症は後者の汗が異常に多い症状を指しますが、緊張していなくても汗が出ます。「手のひらや足の裏が常に湿っている」状態から、「間をおかず、しずくがポタポタ落ちる」まで程度の差はありますが、人口の約0.5%を占めています。

多汗症は、交感神経の働きに関係があります。背骨に沿って左右両側に走る副交感は、脳の中枢からの発汗の指令を汗腺に伝えます。原因は不明ですが、中枢の働きが過敏なため、汗が絶え間なく出るのです。

多汗症の薬による治療法
治療には、まず薬を使います。汗が多い場所に、制汗剤を塗るのが一般的です。だだ、効果には個人差があり、症状が重いと不十分なことが多いです。交換神経の働きを抑える飲み薬もありますが、全身の汗を止めるので、体温調節ができなくなる上、便秘や脈拍の増加といった副作用もあります。

多汗症の手術
薬物治療で十分な効果がない場合、手術を行います。まずわきの下に数ミリの穴を1か所あけ、胸腔鏡(きょうくうきょう)と呼ばれる小型カメラを入れます。拡大画像を見ながら、先端についた電気メスで、手のひらなどの発汗をつかさどる、交感神経を切ります。手術は、左右のわきの下から行います。保険がきき、通常は1~2泊ほどの入院が必要になります。

代償性発汗
効果は高いのですが、問題もあります。手のひらや足の裏の発汗を抑えると、代わりに背中やおなか、太ももなどの汗が増えるのです。これが「代償性発汗」と呼ばれる副作用で、原因は分かりませんが、ほとんどの場合に起こります。

NTT東日本関東病院では、1400人に手術を実施した結果、90%は手のひら発汗が「完全に止まる」「ほぼ止まる」状態になった反面、代償性発汗も96%に見られました。アンケートでは、86%が手術を受けて「満足」と答えた一方、「受けない方がよかった」(2%)「どちらとも言えない」(12%)と答えた人もいます。

多汗症の手術を受ける場合は、代償性発汗についてよく理解して、手術を受けるかどうか時間をかけて慎重に判断することが必要になります。「何となく不快」というだけでなく、「非常に困っている」「手のひらの汗さえ止まれば仕事ができる」といった強い動機が必要になります。

代償性発汗を配慮した、手術もあります。チタン製クリップで挟み、交換神経の働きを遮断する方法です。手術に手間がかかり、傷口も左右2か所ずつに増えますが、神経を切らずにすみます。代償性発汗が予想以上につらい場合は再度、手術でクリップを取り除けば、以前の状態に戻る可能性が高いのです。

関連医療機関
NTT東日本関東病院
昭和大藤が丘病院


メラノーマ(皮膚がん)のダーモスコープ検査


皮膚がんの一種、悪性黒色腫「メラノーマ」
ほくろが気になり、受診した皮膚科で「早めに取った方がいい」と言われたのに、別の皮膚科では「心配ありません」。そんな経験のある人は、意外に多いのではないでしょうか。

ほくろは皮膚に色素が集まったもので、通常は心配ありませんが、ごく一部に、がんの可能性があります。短期間で色や形が変わったり、大きさが5ミリ以上になったりした場合は、注意が必要です。

メラノーマは、腫瘍の厚さが1.5ミリ以下で、転移がない早期の場合、手術でほとんどが完治します。しかし、不用意に切除するなど外的な刺激で細胞がばらばらになりやすく、傷つけると転移が促されると考えられています。

このため、胃、大腸がんの検査のような、組織の一部を採って顕微鏡で調べる検査はあまり行われません。
従来、医師が肉眼や虫めがねで観察して、がん化した「悪性」か、「良性」かを見分けていました。

しかし、これだけでは正確な診断は難しいです。そこで登場したのが医療用拡大鏡「ダーモスコープ」です。

メラノーマのダーモスコープ検査
小ぶりな懐中電灯くらいの大きさで、先端の円形レンズ部を肌に密着させると、ほくろを10倍に拡大して見ることができます。レンズ部に組み込まれた電球で明るい視野を得て、中央に映る目盛りでほくろの直径を測ります。肌には超音波検査などで使われるゼリーを塗り、レンズ内の光の乱反射を抑えます。数10倍の拡大機能を備えた製品もあり、いずれも検査中の痛みはありません。

ダーモスコープの登場で、手のひらや足の裏のほくろの検査精度が格段に上がりました。足の裏などに数多く刻まれた「皮溝」(ひこう)と呼ばれる細い筋と、皮溝と皮溝の間で丘のように高くなった「皮丘」(ひきゅう)の観察が、診断に役立つことが分かったためです。

国立がんセンター中央病院、皮膚科医長の山本明史さんは「良性のほくろは、主に皮溝の部分だけに黒い色素が見られるが、メラノーマでは逆に、主に皮丘部に黒い色素が見られる」と話しています。

日本人のメラノーマの約三割は足の裏にできるため、この装置の意義は大きいのです。皮溝がはっきりしない肩や背中などでも、肉眼ではとらえきれないメラノーマ特有の色や形の変化が判別できます。

ところが、この検査はあまり普及していません。「装置の元祖」であるドイツ製品の販売会社によると、全国に約一万五千か所の皮膚科がありますが、販売台数は700台に過ぎません。検査に保険点数が加算されないことなどが原因です。

しかし、ダーモスコープはほくろの診察に欠かせません。受診する際は、事前にこの装憧の有無を確認するといいです。

日本皮膚科学会では、ホームページで皮膚科専門医の名簿を掲載しています。指導的な専門医がいる「教育研修施設」約570の病院名を知ることもでき、ダーモスコープ導入の有無を問い合わせる手がかりになります。

関連医療機関 国立がんセンター中央病院

関連サイト 日本皮膚科学会


リンパ浮腫の顕微鏡下リンパ管細静脈吻合術(ふんごうじゅつ)



リンパ浮腫
リンパ液の流れが滞り、手や足などにたまってむくむのが、リンパ浮腫です。乳がんや子宮がんの手術、放射線治療でリンパ管が傷つき、後遺症として起きることが多いですが、生まれつきリンパ液の流れが悪い人もいます。

むくみは、外見も不自然で、重くなると歩けなくなったり、皮膚が象の皮のように硬くなったりする場合があります。そのほか、体がだるい、疲れやすいなどの症状も現れます。

治療は、マッサージや弾性包帯、医療用スリーブやストッキングなどの着用で、むくんだ部分を圧迫しリンパ液を押し出して、症状を緩和するのが一般的です。

顕微鏡下リンパ管細静脈吻合術
一方、東大形成外科で取り組んでいる「顕微鏡下リンパ管細静脈吻合術」は、リンパ管を静脈につないで、リンパ液の流れを回復させます。ひじやひざ、手首、くるぶしの内側などを2~3センチ切開し、直径0.2~0.3ミリのリンパ管を顕微鏡でのぞきながら、0.05ミリの糸で静脈に縫いつけるという細かい手術です。

局所麻酔で傷口もほとんど目立たず、体への負担も比較的少ないです。保険も適用されている治療ですが、問題はすべての人に効果が出るとは限らないことです。

東大形成外科によると、これまでに足のリンパ浮腫で手術をした129人のうち、効果が表れやすい発症間もない患者35人では、31人が太もも、ひざ、ふくらはぎ、足首、足の甲のいずれかの周囲の長さが手術後、細くなったといいます。残る4人は変わらないか、かえって悪くなりました。
手術の効果を上げるためには、医療用のストッキングなどが欠かせず、きちんと着用することです。

リンパ浮腫は、手や足に出ることが多いですが、男女問わず陰部が大きく腫れ上がることもあります。圧迫による治療が難しい陰部のリンパ浮腫は、特に手術で効果が期待できます。

東大形成外科のような局所麻酔ではなく、全身麻酔で実施する医療機関も多く、手術法も細かい点では施設によって異なります。例えば、北大では、1本ずつではなく、数本のリンパ管を集めて血管の中に移植しています。

最近、特殊な装置を使えば、リンパ管の流れを拡大して、ビデオで直接確かめることができるようになっりましたので、どのリンパ管をつないだ場合に効果的かがわかり、さらに治療成績が向上する可能性があります。

関係医療機関 東大形成外科


下肢静脈瘤の「硬化療法」と「ストリッピング手術」



下肢静脈瘤
体の隅々から、二酸化炭素や老廃物を運んでかえる静脈は、ポンプの働きをする心臓から遠いので、血液が滞留しがちです。人間は立って生活しますので、静脈には逆流防止用の弁が何か所も付いていますが、これが壊れ、血液が足にたまるのが静脈瘤です。命にかかわることはありませんが、足のかゆみなどが続き、放置しますと悪化し、皮膚がただれることもあります。

患者には、長時間の立ち仕事を長年続けてきた職人や、妊娠・出産を経験した中年以上の女性などが多いです。

足の静脈血は、歩いたり階段を上ったりすれば、筋肉の働きに助けられて心臓に帰っていきます。足が「第二の心臓」と言われるゆえんです。しかし立ったまま働く人などは、足の血液が滞留しがちで、弁にも負担がかかります。妊娠した女性も、ホルモンの影響などで足の血液が、心臓に戻りにくくなり、弁が故障しやすくなります。

実際、最も逆流が起きやすいのは、足の付け根の内側にある表在静脈の弁です。ここは足の骨近くを流れる深部静脈との合流点で、ひざ下にできる静脈瘤の大部分は、表在静脈の血液を止めることで、治療できます。流れを遮っても、血液は合流部から深部静脈に迂回して流れるので、問題はありません。

「硬化療法」と「ストリッピング手術」
血管を固めてしまう薬を注射する「硬化療法」もありますが、再発しやすいです。治療には、静脈瘤ができた血管全体を壊れた弁ごと抜き取る「ストリッピング手術」が最も効果的です。ただし全身麻酔を使うため、従来は約一週間の入院が必要でした。

日本医科歯科大血管外科では、この2つの治療法を組み合わせることで、日帰り手術を行っています。太ももの静脈は手術で引く抜きますが、ひざ下には硬化療法を行います。傷口は、足の付け根とひざ下の二か所に約2センチできるだけで、目立ちません。

麻酔の使い方の工夫も、日帰り手術を可能にしました。局所麻酔で、治療が終わると患者は手術室を歩いて出てきます。病院内でしばらく様子を見た上で帰宅できます。長時間の立ち仕事や激しい運動を避ければ、その日から普通に生活できるといいます。

この局所麻酔はTLA(大量低濃度局所浸潤麻酔)といいます。太もも全体に、十分の一の濃度に薄めた麻酔薬を、通常の量の十倍程度つかいます。血管を引く抜く痛みや出血が減り、痛み止めの効果も翌朝まで持続します。

手術時間は40分程度です。手術から約一か月は、血流が滞るのを防ぐため、特殊なストッキングをはいて足を圧迫する必要があります。ストッキング代以外は、すべて保険がききます。

血管内治療
体の負担の少ない日帰り最新治療として、最近、ラジオ波や半導体レーザーを使った「血管内治療」も登場しています。局所麻酔(TLA麻酔)を使い、逆流が起きている静脈にごく細いカテーテルを挿入します。超音波診断装置で血管の形を見ながら、ラジオ波やレーザーの熱で静脈の内部を焼ききり、血液の流れを止めてしまう手術です。

局所麻酔を使い、血管を引き抜くストリッピング手術以上に、傷が小さくて済むのが特長で、手術時間はわずか15分から20分で終わります。

しかし残念ながら、まだ保険がきかないため、一部の医療機関でしか実施していませんが、すでに欧米では主流になりつつあるといいます。

大切なのは正しい診断で、下肢静脈瘤は症状に合わせて、様々な治療を選択できるようになりました。専門の血管外科を受診し、最適な治療法を選んでください。

関係医療機関 日本医科歯科大血管外科


床ずれ(褥瘡じょくそう)の「局所陰圧閉鎖療法」



床ずれ(褥瘡じょくそう)の原因
床ずれ(褥瘡じょくそう)は、体の特定の部位に体重の圧力がかかり続け、長時間血流が妨げられた結果、皮膚やその下の脂肪などの組織が壊死(えし)に至る状態です。おしりの中心の仙骨部、後頭部、かかと、肩、ひじなど、骨が突出した部位に起きやすいです。

寝たきりの人が床ずれ(褥瘡じょくそう)になりやすく、皮膚がただれ、悪化するとポケットのように深い穴が開きます。

床ずれの危険因子は、以下のようなものがあります。

●やせて骨張っている。

●自分で動けない。

●栄養状態が悪い。

●おむつをするなど、常に湿っていて皮膚が弱い部分がある。

●関節がこわばっている。

●むくみがある。

日本褥瘡学会の2007年の試算では、床ずれの患者は、少なくとも12万人に上ります。2010年春、専用の装置で傷を密閉して、傷口から出る体液(滲出液しんしゅつ)を吸引し、回復を早める「局所陰圧閉鎖療法」が新たに保険適用になりました。床ずれ(褥瘡じょくそう)重症患者の治療の選択肢が、広がりました。

床ずれ(褥瘡じょくそう)の治療
杏林大病院(東京都三鷹市)形成外科講師の大浦紀彦さんによりますと、床ずれ対策で最も重要なのは、寝たきり患者さんの体にかかる圧力を分散させることです。寝返りを打たせることや、空気圧を調節できるエアマットレスなどの使用が必要になります。次に大切なのが栄養管理です。低栄養状態の患者さんは、傷の誘因となるむくみや骨の突出が、起こりやすいからです。

この2点を踏まえたうえで、出来た傷に対しては、ポリウレタン製のスポンジなどで覆って湿り気を保つなどし、皮膚の再生を促すのが治療の基本とされます。症状に応じ、傷をふさぐために盛り上がってくる肉芽の形成を促進する塗り薬やスプレーも用いられています。皮膚にとどまる浅い傷であれば、通常2~3週間でふさがるといいます。

しかし、傷が皮膚だけでなく、その下の脂肪や筋肉に及ぶほど深くなった重症例は治りにくいです。マットレスに皮膚が引っ張られるズレの影響で、傷が皮膚の下にポケット状に広がるケースも多く、病院に治療に来る患者さんの4割は、傷が皮下組織に至るタイプです。

保険適用になった「局所陰圧閉鎖療法」
2010年春、保険適用になった「局所陰圧閉鎖療法」は、こうした深い床ずれなどが対象になります。海外では、1990年代から専用機器が使われてきました。

壊死部分を切除し洗浄したうえで、傷にスポンジ状のポリウレタンをあて、上からフィルムで覆い密閉した後、穴を開けて吸引用チューブをつなぎ、中の圧力を下げます。

大浦さんは「陰圧すると肉芽の形成が促進されるうえ、吸引によって過剰な滲出液や老廃物を除去でき、傷を清潔に保てます。傷周囲の血流促進効果もあり、早い回復につながると思われます」と解説しています。

国内の11医療機関で、80人の患者を対象に、専用装置を用いた陰圧閉鎖療法の臨床試験を行ったところ、5センチ以上の傷が閉鎖(肉芽が出来た状態)に至った平均日数は17・7日です。従来の治療を行った127人の平均63・5日と比べ、大幅に短縮しました。

重症患者の場合、回復を早めるために、壊死した組織を切除し、皮膚を移植する手術を行うことも多いいですが、「事前に陰圧閉鎖療法を行えば、切除範囲を小さくできることも多くなる」と大浦さんは話します。

なお、傷口が細菌に感染していた場合は、抗菌剤を先に使用します。細菌繁殖の恐れがあるので、すぐに傷を覆うのは避けた方がいいそうです。

関係医療機関 杏林大病院





脱毛治療薬のフィナステリド(プロペシア)

フィナステリド(プロペシア)の効果
外用育毛剤は、頭皮からしみ込ませ、血行を促進することで、髪の毛を作る毛母細胞を活性化するのが主流になります。これと異なる仕組みで作用するのが、飲む脱毛治療薬フィナステリド(商品名プロペシア)です。

男性の脱毛症の一因は、精巣などから分泌される男性ホルモンの一種、テストステロンです。このホルモンは、全身の骨や筋肉の成長を促しますが、髪の毛を作る毛母細胞では、酵素5α-リダクターゼによってジヒドロテストステロン(DHT)と呼ばれるホルモンに変わります。このジヒドロテストステロン(DHT)が、毛母細胞の働きを抑えるタンパク質を作るために、毛母細胞が死に、脱毛症が起きるのです。

フィナステリド(プロペシア)は、酵素の5α-リダクターゼの分泌を抑える働きがあります。アメリカの製薬会社メルクが、まず男性ホルモンによって進行する前立腺肥大症の治療薬として販売したのですが、脱毛を抑える効果にも注目して、開発しました。初の経口の脱毛治療薬として、すでに世界60か国以上で、使われています。

フィナステリド(プロペシア)の治験(臨床試験)
東京医科大学で20~50歳の男性を対象に、治験(臨床試験)が行われました。方法はフィナステリドの効果をプラセボ(偽の薬)と比べるやり方です。この薬を使った132人の頭頂部の写真を撮影して評価したところ、58%の人が脱毛症状があった部分に頭髪が増え、40%が現状維持でした。一方プラセボ(偽の薬)では、現状維持が70%でしたが、20%の人は脱毛が進みました。

この治験結果、ある程度効果がある外用育毛剤との比較は難しいが、眼に見えて頭髪量が増えるという意味では、フィナステリドの方が高い効果が期待できるそうです。

しかし、効果の程度は個人差がありますし、根本治療できず、服用をやめると脱毛が始まります。顕著な効果が期待できるのは半年までで、その後はあまり改善は見込めないそうです。フィナステリドは育毛剤としては、完璧な薬ではありません。

フィナステリドは保険が適用されず、医療費は全額自己負担です。またこの薬の処方は、男性に限定されています。アメリカ食品医薬品局は、妊娠中の女性が飲むと、胎児に先天異常などが現れる可能性があると、警告しています。

関連サイト AGA-news


イソフラボン(大豆イソフラボン)とカプサイシン併用の育毛効果


併用の育毛効果
イソフラボン(大豆イソフラボン)とカプサイシンを同時に摂取すると育毛に大きな効果があることを、名古屋市立大医学研究科の岡嶋研二教授、原田直明講師らのグループが実証しました。岡嶋教授は「一日に、小さじ二杯の唐辛子と半丁の豆腐を食べると効果が出る」といいます。

髪の毛のもととなる毛母細胞は、ペプチド「IGF-1」によって分裂・増殖が盛んになる。岡嶋教授らは、カプサイシンとイソフラボンが、毛根の中のIGF-1を増加させる働きを持つことを、マウスを使った実験で突き止めました。

実際に薄毛や円形脱毛症の人31人に5ヶ月間、一日カプサイシン6ミリグラム、イソフラボン75ミリグラムを摂取してもらったところ、20人に育毛効果が認められました。実験とは別に12歳の重症円形脱毛症の少年が摂取すると、はっきりと効果が表れました。


カプサイシンの効果効能
カプサイシンはカロテノイド(ファイトケミカル)の一種で、トウガラシの辛み成分です。
カプサイシンは交感神経を刺激して、アドレナリンの分泌を促進させ、エネルギー代謝を盛んにさせます。代謝が高まりますと、脂肪燃焼、疲労回復、体温の上昇などが盛んになりますので、冷え性や肩こり、ダイエットに有効です。カプサイシンはその他に健胃作用、殺菌作用などがあります。


イソフラボン(大豆イソフラボン)の効果効能
イソフラボン(大豆イソフラボン)はフラボノイド(ファイトケミカル)の一種で、ソラマメやエンドウマメなどのマメ科の植物、特に大豆に多く含まれています。イソフラボン(大豆イソフラボン)は女性ホルモンのエストロゲンと似た構造をしているので、「ファイトエストロゲン」とも呼ばれていて、閉経後の女性の健康を損なうことなく、維持してくれます。

イソフラボン(大豆イソフラボン)の主な働きは4つあります。
1更年期障害の緩和
2骨粗しょう症の予防
3心臓病や脳梗塞の予防
4乳がんや前立腺がんの予防


フィーバーフュー(ナツシロギク)に男性型脱毛症の進行を抑える効果


男性型脱毛症
原因は遺伝やストレス、老化、男性ホルモンなどが考えられています。タイプは額から前頭部にかけてM字型に毛が後退していくM型と、頭頂部から円型に脱毛していていくO型の2つがあります。

いずれのタイプでも毛周期(毛髪の成長期・退行期・休止期)のサイクルを繰り返すうちに、その周期がしだいに短くなり毛が十分な硬さや太さまで成長できなくなります。
その結果、本数は変わらないのに毛が細いせいで、薄くなったように見えるのです。毛周期が短くなったことで脱毛も早くなり、やがて毛母細胞や毛乳頭が消滅して毛が生えなくなります。

フィーバーフュー(ナツシロギク)
大阪大と医療用具開発会社が共同開発したサプリメントの主成分に、男性型脱毛症の進行を抑える働きがあることを、同大の冨田哲也助教らの研究チームがヒトの細胞を使った実験で確かめました。

この成分は、発熱などに効くとして古くから欧米で愛用されてきたハーブの一種フィーバーフュー(ナツシロギク)から抽出した「パルテノライド」。近年の研究で、がん転移や様々な炎症を引き起こす司令塔役のたんぱく質「NF―kB」に結びつき、転移や炎症を抑える働きがあることが分かっています。

研究チームは、この成分のリウマチや関節炎に対する作用を調べている最中に脱毛症への効果を見つけました。リウマチ患者に与えたところ、痛みが和らいだうえに「髪の毛が太くなったり、薄くなった頭頂部にうぶ毛が生えたりした」(冨田助教)といいます。

額の生え際や頭頂部の毛が薄くなる男性型脱毛症の原因物質は、男性ホルモンの一種「ジヒドロテストステロン」(DHT)とされる。DHTの生成には「NF―kB」がかかわっており、パルテノライドがその働きを抑えることで、脱毛症の進行が抑制されると研究チームはみています。

フィーバーフューの効果効能
フィーバーフューは、もともとヨーロッパの東南部のバルカン半島に自生していた植物です。和名は「ナツシロギク」で、可憐な花を咲かせ、葉は強い芳香性を放ち観賞用としても、人気のある植物です。欧州では昔から民間療法としてリウマチや生理不順、頭痛などに用いられていました。現在では片頭痛の予防改善に、用いられています。


男性型脱毛症(AGA)の育毛発毛剤「ミノキシジル」



男性型脱毛症(AGA)のメカニズム
男性型脱毛症は、ヘアサイクルの成長期が短縮し、太く硬い毛がだんだんと、あまり成長していない細く短い毛に置き換わっていくことで始まります(硬毛の軟毛化)。

通常なら5年くらい伸びる髪の毛が、成長期が1年、あるいはもっと短くなり、抜けてしまう。髪の毛が十分に成長しないので、毛根もあまり太く、深くならないうちに、休止期に入ってしまう。その萎縮した毛根から、3ヵ月くらい後に新しい毛が生えてきて、それが1年も経たないうちにまた抜けてしまう。そして、その繰り返しが続きます。

そうやって、毛根はどんどん萎縮し、細く短い、色素も少ない軟らかい毛が増えていき、だんだんうぶ毛状になってきます。そういった状態がさらに進むと、休止期から成長期に移行しない、つまり新しい毛を生やさない毛根も増え、結果的に、細く軟らかい毛の本数まで減ってしまいます。

なお男性型脱毛症は、一般的には、男性の前頭部、頭頂部に起きる変化と考えられています。しかし、女性に起きる薄毛、脱毛のなかにも、女性の体内にも少量ながら存在する副腎性の男性ホルモンの影響による「女性の男性型脱毛症」があるのではないかという見方が、最近出始めています。

ジヒドロテストステロンがおもな原因物質


このような男性型脱毛症のおもな原因は、「ジヒドロテストステロン」という物質であることがわかってきました。ジヒドロテストステロンは、男性ホルモンのテストステロンが5αーリダクターゼという還元酵素によって変換されてできる体内物質です。

男子は思春期を迎えると、体が筋肉質になり、声変わりをして、ヒゲや陰毛が生え、ペニスが大きくなって射精をするようになります。男性ホルモンのテストステロンは、こういった男性のいわゆる「男らしさ」を表現している物質で、おもに睾丸(精巣)で作られています。このようにテストステロンは、とくに男性の心身にとって大きな役割を果たしている体内物質です。

ただし、テストステロンをはじめとする男性ホルモンは、女性の体内にも少量ながら存在しますし、男性の体内にも女性ホルモンが少量存在します。

このテストステロンから、酵素5αーリダクターゼの働きによってジヒドロテストステロンが作られると、毛乳頭が萎縮し、毛母細胞の成長が抑制されます。そのために、先ほど説明した「硬毛の軟毛化」、つまり髪の毛が太く硬く成長する前に抜けてしまい、細く短い毛が多くなるという症状が進み、薄毛が目立つようになってきます。これが男性型脱毛症のおもな原因なのです。
男性型脱毛症(AGA)の治療は頭皮のケアを進めるとともに、ミノキシジルの使用による発毛の促進に、あわせて積極的に取り組むことが大切になります。

ミノキシジルとは
ミノキシジルは、もともとは1970年代に、高血圧症の患者さんの血圧を下げる薬として開発されました。しかし血圧を下げる効果はさほど見られず、全身の体毛が増えるという副作用があったために、実際の治療ではじきにあまり使われなくなりました。

製薬メーカーはこの「多毛」という作用に着目して、発毛薬として開発、販売をし直して、現在に至っています。当初は血圧を下げるために作られた薬で、未梢血管を広げる作用がありますので、使用すれば血流の改善が期待できます。加えて近ごろでは、この薬に、「毛乳頭細胞の増殖を促進する」「毛母細胞の退行を抑制する」などの作用があることがわかっています。

このミノキシジルという薬は、日本で市販されている「リアップ」「リアップレデイ」の主成分であり、アメリカで販売されている「ロゲイン」の主成分でもあります。違うのは主成分の濃度で、「リアップ」「リアップレディ」は1%濃度、「ロゲイン」は5%濃度および2%濃度(女性向けの「ウィメンズロゲイン」)です。このほかに外国では、12%濃度の商品を販売しているところもあります。

以上のような市販の育毛剤はいずれも塗り薬ですが、病院で治療薬として使用する場合は、塗り薬として用いる場合もありますし、飲み薬として使用するケースもあります。

ミノキシジルの副作用
塗り薬の濃度が高いほうが効果があがっていいだろうと思われるかもしれませんが、濃度が上がるほど、皮の荒れ(接触性皮膚炎)が生じるおそれが高まりますので、その点に気をつけなければいけません。

ミノキシジルのそのほかの副作用としては、まずもともと血圧降下剤として作られた薬ですから、使用中に血圧がある程度下がる可能性があります。また、高血圧の症状があり、現在何らかの血圧降下剤を使用している人では、血圧が下がりすぎてしまう可能性も考えられます。

実際には、ミノキシジルを塗り薬として使用してとくに血圧に影響が出ることはほとんどありませんが、高血圧、低血圧である人、心臓、腎臓などに障害がある人、体のむくみがある人は、慎重に使用する必要があります。

ごくまれに、朝起きたときに上まぶたにむくみを感じることがありますが、多くの場合、使用を続けるうちに、1週間程度で症状が消えるようです。また、とくに飲み薬として使う場含、体毛が増えるという副作用が見られます。

ミノキシジルによる治療の実際
ミノキシジルを使用すると、髪の毛が太くなり、長く伸びてくるのに加えて、休止期の毛根が成長期に移行して、新しい毛が生えてくることもあります。一般的には、どちらかといえば頭頂部の薄毛に効果的であるとされていますが、数年というレベルの長期間にわたって使用を継続すると、前頭部にも発毛効果が見られるケースがあります。

ミノキシジルによって発毛を促進するのは、「オフェンス」の治療と考えることができます。「ディフェンス」は相手の出方に応じてやり方を決めていくものですが、「オフェンス」はこちらから攻めるのですから、いろいろなタイプの薄毛、脱毛に対して、ミノキシジルの使用によって積極的に治療を進めていくことができます。


更年期による女性の薄毛脱毛にたいする治療法


40歳代、50歳代女性に起きる薄毛、脱毛の原因
40歳代、50歳代女性に起きる薄毛、脱毛は、基本的には加齢による脱毛が多いと考えられます。
私たち人間の心身の老化は、目立たなくても、20歳代のころから始まっています。それは男性も女性もそうですし、皮膚や髪の毛も、もちろん例外ではありません。髪の毛についていえば、思春期から20歳前後までは太く丈夫になっていきますが、それから後、20歳代半ば以降は、年をとるにしたがって、細くなり、コシやハリが弱くなり、伸びる速度も遅くなっていきます。

そういった変化は、徐々にではあっても、若いうちからずっと進んでいます。しかし髪の毛は、スピードが遅くなっても伸びてはいますし、20歳代から30歳代のころまでは、まだそれほど目立ったり、深刻なものになったりすることはあまりありません。

女性の脱毛は、頭頂部のツムジのあたりからしだいに薄毛が広がっていくのが、加齢による女性の脱毛に、よく見られるパターンです。

エストロゲンが急激に減少する更年期
40歳代、50歳代という年代に入ってくると、女性ホルモンの急激な減少など、ホルモンバランスの乱れによる心身の大きな変動が起きてきます。いわゆる更年期です。

女性ホルモンのエストロゲンは髪の毛の成長に深く関与しています。髪の毛の幹細胞の成長を促し、頭皮のコラーゲン量を増加させて髪にコシとハリを与え、血管拡張作用がありヘアサイクルにも延長をもたらすといわれています。おそらくはこうした女性ホルモンの減少などもかかわって、40歳代、50歳代になると、前髪が細く、少なく、頼りなさが目立ってくる女性が少なくありません。

加齢による女性脱毛は、おもに頭頂部で進行していくことが多いものです。しかし最近では、40歳代、50歳代女性の前髪が薄くなるのは、男性ホルモン変化の作用による男性型脱毛症が起きているケースもあるのではないかという見方がされ始めています。

40歳代、50歳代女性への発毛育毛治療
いずれにせよ、前頭部の髪の毛が頼りなくなってくると、たとえば前髪をアップにするようなスタイルがたいへんセットしづらくなります。「おかしいな」と感じて、鏡で見たり束ねてみたりすると、そのころにはすでに、前頭部以外の場所の髪の毛も、ある程度細く、少なくなっていますので、髪の毛が頼りなかったり地肌が透けたりするのが、あちこちで目につきます。

それで「自分の髪の毛にたいへんなことが起きている」と深刻に悩んで、専門医を訪れる。こういった成り行きが、薄毛に悩む40歳代、50歳代の女性の、一つの典型的なパターンといえます。この年代の女性ではとくに、「自分の髪の毛は、いつまでもあって当たり前」という気持ちが男性よりもずっと強く、それだけに、深刻に悩んでしまう人が少なくありません。

40歳代、50歳代女性の薄毛に対しては、多くの場合、ミノキシジルという発毛を促進する薬を中心として、その人の状況に応じた各種のビタミン・ミネラルなどを組み合わせたサプリメントなどをあわせて使用していく治療が有効です。

ミノキシジルは・発毛を促す薬剤です。体毛の増加などの副作用には気をつける必要がありますが、多くの人に効果をあげている薬です。ミネラルでは、とくに男性ホルモンが関与していると考えられる女性の脱毛の場合、亜鉛成分を多量に含むサプリメントが有効なことが多いようです。

また、スピロノラクトン(商品名アルダクトンA)という薬を使用することもあります。この薬の本来の作用は利尿や血圧降下ですが、女性ホルモンに似た働きをもつ薬剤としても知られているために、40歳代、50歳代女性の女性ホルモン減少に対する一種のサポート的な役割を期待してのことです。

同じように女性ホルモンに似た働きを持つイソフラボンも、女性の体に対して大切な働きをもつ物質として注目されています。

イソフラボンは大豆胚芽に多く含まれる物質で、食品では、大豆を素材として使った料理や、豆腐、納豆などから摂取できます。またイソフラボンをメインにした健康食品やサプリメントなども各種販売されていますが、その摂取最についてはいろいろと意見があり、とりすぎには注意が必要です。

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イソフラボン(大豆イソフラボン)とカプサイシン併用の育毛効果


若い女性の脱毛薄毛にたいする発毛育毛治療



若い女性の薄毛の原因
20歳代をはじめとする若い女性の薄毛、脱毛は、さまざまな原因やきっかけによって引き起こされる可能性があります。まず、血流障害による脱毛で、ストレス過剰や生活状況が影響していると思われるケースが、かなり多く見られます。

実際の治療では睡眠時間の不足、不規則な睡眠、片寄った食事などを改めて、生活をできるだけ立て直すようにして、ストレスを解消したり和らげたりしていく工夫をすることによって、数ヵ月のうちに髪の毛が相当しっかりした状態を取り戻してくることが少なくありません。

薬による治療としてはやはり、ミノキシジルによる発毛促進、ビタミン、ミネラルなどになります。

若い女性によく見られる各種の脱毛薄毛の原因と治療

  • 頭皮のトラブルから薄毛、抜け毛へ
    若い女性で多く見られるのが、頭皮の荒れ、トラブル、疾患などが、結果的に薄毛や抜け毛につながっているケースです。毛穴周りのフケ、アブラから起こる細菌性の炎症(脂漏性皮膚炎)、ヘアケア用品(シャンプー、トリートメント、カラーリング、パーマなど)が合わずに頭皮を荒らしてしまつたり(接触性皮膚炎)、ストレス過剰が頭皮の荒れにつながることもあります。

    なるべく刺激の少ないシャンプーなどを選ぶとともに、シャンプーその他のヘアケアを実施するときに、できるだけ頭皮を傷つけないように気を配るよう習慣づけることで、かなりの場合、頭皮の状況は改善されます。
  • 過度のダイエットと薄毛、抜け毛
    不適切なダイエットによる脱毛などといったケースもあります。人間の毛やツメは皮膚の最外層にあたりますが、行きすぎたダイエットによって、その形成に不可欠な微量ミネラルが腸から吸収できなくなってしまうことがあります。

    そうすると、髪が伸びない、細くなる、ツメが伸びずに薄く軟らかくなる、皮膚がカサカサになる、といった状態に至ることがあります。そういった状況が続けば、抜け毛の増加や貧血などの症状が表れる場合もあります。
  • 出産後の一時的な脱毛
    出産を終えた後に、抜け毛が増えたり薄毛が目立ったりすることがあります。妊娠中は、お腹の子供に栄養を取られますが、妊婦の髪の毛は、出産準備のために分泌されるエストロゲン(卵胞ホルモン)などの女性ホルモンによって成長期が維持され、抜け毛が少なくなります。

    しかし出産後はホルモンバランスが通常の状態に戻り、成長期が維持されていた髪の毛がいっせいに休止期に入ってしまうために、出産後に一時的に抜け毛が多くなり、髪が薄くなってしまいます。通常は脱毛後3-4ヵ月の時期から徐々に回復し始めます。

    ときに別の理由による脱毛に移行してしまうケースもありますので、いつまでも改善しない場合には、医師に相談したほうがいいでしょう。
  • 卵巣機能の低下による脱毛
    さまざまな原因から、ホルモン分泌の減少、卵巣機能の低下が起きるケースが、20歳代、30歳代の女性でも増加しているといわれ、「卵巣機能低下症」「若年性更年期障害」などとも呼ばれています。

    女性ホルモンの減少、男性ホルモンの影響の強まりなどから、脱毛が起きるということも考えられます。

    卵巣機能の低下によって、月経不順、無月経、不正出血や、発汗、ほてり、冷え、イライラなど更年期障害と似た症状が出ることもあります。そのようなときには、婦人科医などを受診して、その治療を優先するようにしてください。
  • 甲状腺異常などの病気に伴う脱毛
    髪の毛が薄くなってきたことを心配して、皮膚科などの医療機関を受診し、そこで別の病気が見つかるというケースも案外見られます。

    比較的よくあるのが、甲状腺機能充進症、甲状腺機能低下症、甲状腺の炎症や腫れなど、甲状腺の病気です。バセドウ病や橋本病といった疾患が関連している場合もあります。また、鉄欠乏性貧血から薄毛や脱毛が起こることもあります。

    いずれの場合も、まずその病気の診断と治療について医師とよく相談し、しっかりと健康を取り戻すのがいちばん大切なことです。

    注意)橋本病では、甲状腺ホルモンの量が不足して、新陳代謝が低下し全てが老けていくような症状がみられます。無気力で頭の働きが鈍くなり、忘れっぽく、ひどくなると痴呆の原因の1つにもなります。寒がりで皮膚も乾燥してカサカサになったり、体全体がむくみ、髪も抜け、眠気がありボーッとして活動的でなくなります。
  • トリコチロマニア(抜毛症)
    自分の頭髪やまゆ毛などを、多くは無意識のうちに自分で抜いてしまう機械的脱毛症をいいます。小学生くらいまでの女子によく見られる症状として、以前から知られていましたが、最近は思春期以降や20歳代、30歳代の女性にも増えているようです。

    毛を抜くことを頻繁に繰り返してやめられないという人もいますし、たとえば読書をしながらなど、なかば無自覚に抜いている人もいるようです。利き手側の首筋の生え際、えり足の髪の毛が、きれいなラインを描いて抜けているといったケースもありました。

    ストレスなど精神的な背景がかかわり、そういったことから自分を守ろうとする防衡機制(無意識にストレスを解消する方法)の表れであることが多いと考えられます。患者さん本人との話し合いのなかから、その原因やきっかけとなっている心理的な要因を探していくことが、しばしば治療の手がかりになります。精神科を受診して治療することをおすすめします。


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女性の円形脱毛症にたいする治療



円形脱毛症
円形脱毛症は、病名のとおり、コインのように円形の脱毛が起きる病気です。脱毛の広さは、1センチ程度の小さなものから数センチに及ぶものまでさまざまです。1ヵ所だけでなく多発することもありますし、髪の毛だけでなく、まゆ毛やわき毛など全身の毛が抜けてしまうこともあります。

年代としては、子供から大人までどの年齢層でも見られますが、20歳代がもっとも多くなっています。女性だけの病気ではありませんが、患者数は女性のほうが約1.5倍多いといわれ、女性をたいへん悩ませる髪のトラブルの一つです。

次のようなタイプに人別されます。
・通常型(単発型、多発型)
・不整局面型(頭髪の生え際が帯状に脱毛。難治例が多い)
・全頭型(ほとんどの頭髪が抜ける)
・汎発型(頭髪とともに全身の毛が抜ける)


円形脱毛症の原因
円形脱毛症と聞くと「ストレスの病気」と思われることが多いようですが、円形脱毛症とストレスの因果関係を示す医学的なデータは、いまのところありません。しかし、カウンセラーなどからは、幼少のころから思春期、大人に至るまで、ストレスの多い状況になると円形脱毛症を繰り返してきた女性の事例が報告されています。

また、患者さんには、性格的に几帳面でまじめな人が多く見られることなどからも、ストレスは、円形脱毛症の見過ごせない誘因の一つであるといえるでしょう。

最近では、「自己免疫疾患」の一種という見方が有力です。人間の体には、細菌やウイルスなど外敵の侵入から自身を守る「免疫」機構があり、おもにリンパ球がその働きを担っています。円形脱毛症の人の脱毛した部分の頭皮を観察すると、毛根にリンパ球が集まり、毛根が萎縮しています。何らかの理由でリンパ球が、自分の体の一部である毛根を、「外敵」「異物」と間違えて攻撃して、髪の毛の成長が止められているようなのです。

円形脱毛症の治療法
円形脱毛症は、小さな1ヵ所の脱毛から、髪の毛がほとんど抜けたり、全身の毛が抜けるなど、症状はさまざまです。また、どういった症状に、どのような治療法が有効かについても、いろいろなケースが見られます。

以下は、一般的に比較的よく用いられている薬剤、治療法です。

・塩化カルプ□ニウム(フロジン液)
塗り薬・末梢血管の拡張作用。育毛剤「カロヤンガツシュ」(商品名)などの主成分。

・グリチルリチン
飲み薬。抗炎症・抗アレルギー作用。漢方薬として用いられるカンゾウから抽出した薬効成分。

・ステロイド
塗り薬、あるいは飲み薬。注射する場合もある。人間の副腎皮質という部位で作られる副腎性の糖質コルチコイドホルモン。毛根の炎症を抑える。

・セファランチン
塗り薬(セファランチンアルコール)、あるいは飲み薬。タマサキツヅラフジという植物から抽出したアルカロイド成分。

・ミノキシジル
塗り薬、あるいは飲み薬。発毛促進作用

・ドライアイス圧抵療法
雪状のドライアイスを固めたもので患部に刺激を与える。

・液体窒素療法
液体窒素を含ませた綿球で患部に刺激を与える。

・紫外線療沫
長波長の紫外線A波(UVA)を患部に照射して、リンパ球の異常な働きを抑える。

・局所免疫療法
薬を使って局所に人為的に皮膚炎(かぶれ)を起こし、その状態を維持しながら発毛を促進させる。

・免疫抑制剤
塗り薬、あるいは飲み薬。アトピー性皮膚炎の治療で好成績をあげ、円形脱毛症の治療効果も期待されている。

・低出カレーザー
脱毛部、あるいは頸部の神経節にレーザーを照射して、頭皮の血流をよくする。


円形脱毛を見つけたら早めに皮膚科へ
頭部に円形の脱毛を見つけたときには、早めに皮膚科医などに相談するようにしてください。治療を始めるのが早いほど、症状を効果的に抑えることが期待できます。日常生活では、睡眠をなるべくよく取り、バランスのいい食事に努め、心身のストレス緩和の工夫を心がけましょう。

円形脱毛症の場合はとくに、どんな治療法が効果的かは、人によってさまざまです。また、治療にかなり時間がかかることもあります。医師とよく相談しながら、根気よく治療に取り組んでください。



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円形脱毛症の局所免疫療法



円形脱毛症の原因
円形脱毛症は頭髪などに円形に脱毛をきたす病気で、原因は未だにはっきりとしていません。各年齢層に起こり、男女差はほとんどありません。

通常はウイルスや細菌と戦う仕事をしているリンパ球という免疫細胞が、自分の毛包を攻撃してしまう事で起こります。多くの場合は自然に治癒しますが稀に難治化し、頭髪だけでなく、まつげや眉毛その他全身の体毛を侵すこともあります。難治化した場合は膠原病(こうげんびょう)や甲状腺疾患などの全身性疾患の検査が必要な場合もあります。


円形脱毛症は、症状によって以下のように分類されています。

● 単発型
いわゆる10円はげというタイプで、放置しておいても3ヵ月から半年で自然に治ります。ただし稀に重症なタイプに移行する事があります。ステロイドの外用や局所注射・紫外線療法などで治療すると早く治ります。
● 多発型
10円はげが頭髪などに2個以上出現するタイプで、単発型に比べると治療が難しい事が多いようです。治療は単発型の治療に加えて、局所免疫療法を行うことがあります。

● 急速進行型
急激に全頭の毛髪あるいは全身の毛が、抜けてしまうタイプで、短期間に全頭の毛がぬけてしまいます。このタイプは全て抜けてしまったあと、しばらくすると自然に発毛して治癒する事が多いのですが、全ての毛が一旦抜けてしまうので、患者さんの精神的ショックは大きいです。そのため少しでも抜け毛を減らすために、ステロイドの内服を行う治療を選択する事が多いです。

● 蛇行型(Ophiasis型)
側頭部から後頭部に蛇行状に、脱毛が拡がるタイプで慢性に経過し、あらゆる治療に抵抗します。ステロイドの局所注射、局所免疫療法が有効な場合があります。

● 全頭型・汎発型
慢性的に全頭あるいは眉毛・まつげまでもが抜けてしまいます。ひどい場合は全身の毛が抜けてしまいます。ステロイドの内服は効果的ですが、中止すると再発してしまう事が多く、あまり良い治療法ではありませんが、場合によってはステロイド内服をパルス療法という方法で行う場合があります。一般的には局所免疫療法が適応されます。ステロイドの局所注射を併用する事もあります。


円形脱毛症の局所免疫療法
慢性期の多発性~全頭型円形脱毛症に適応がある、世界標準といえる治療法ですが、残念ながら日本では保険適応の認可が下りていないので、自費診療になります。

頭部にかぶれを起こさせることにより、発毛を促すという原理を利用します。


局所免疫療法の原理
SADBE(squalic acid dibutyl ester)もしくはDPCP(diphenylcyclopropenone)という物質は自然界には存在しない化学合成試薬です。

この物質は健常な人間が触れると、必ずかぶれるという特徴を持っています。円形脱毛症は、自分の毛根を自分のリンパ球が攻撃することが原因で、発症する病気です。かぶれを起こさせることによって、この自分を攻撃するリンパ球に対して、かぶれを抑制する別のリンパ球を呼び寄せます。結果として自分を攻撃するリンパ球の作用を抑制して、発毛を促すという薬剤です。

局所免疫療法の施術法
SADBEもしくはDPCPの2%溶液を、頭部の脱毛部に貼りつけます。およそ48時間後にはがして、通常通りシャンプーや石鹸で洗い流します。この時点では何も起こっていません。

48時間のうちに耐えられないかゆみが出現したときは、無理をせず早めにはがして、処方されているローションを塗ります。1~2週後同部が赤く腫れてきます。これでリンパ球が、SADBEもしくはDPCPを嫌いと覚えたことになり、この状態を感作成立といいます。

2~3週後より頭部全体に、SADBEもしくはDPCPを塗ります。通常2万分の1という低濃度から外用を開始し、徐々に濃度を上げていきます。少しうすら痒い、少しフケが出る、頭皮がうっすら赤みを帯びるくらいがちょうど良い濃度です。濃度が決定したら2~3週に1度塗布を繰り返します。効果判定は濃度が決まってから1~2ヶ月後に行います。

発毛が認められる場合は、治療を継続します。毛髪が生えそろったら、徐々に外用回数を減らしていきます。治療中、急激な脱毛の再燃が見られた場合、症状により短期ステロイド全身投与を行う場合があります。

予想される副作用とその対策
頭皮のかぶれが強すぎた場合、ステロイドの外用剤を一日数回、塗布します。かゆみが顔面全体や全身に拡大した場合は、ステロイド内服も併用します。アトピー性皮膚炎を持っている場合、このような反応が起こる確率が、一般の人より高い傾向にあります。

じんましんが軽症の場合は、抗ヒスタミン薬の内服を併用してコントロールしながら外用を続けます。


アトピー性皮膚炎の症状を緩和する乳酸菌「ラクトバチルス・アシドフィルス L-92株」



「ラクトバチルス・アシドフィルス L-92株」の二重盲検試験
カルピス健康・機能性食品開発研究所は、同社保有の乳酸菌「ラクトバチルス・アシドフィルス L-92株」(以下、L.アシドフィルスL-92株)を用いた食品を継続摂取することで、アトピー性皮膚炎の症状が緩和されることを二重盲検試験(ヒト試験)で確認しました。


文部科学省実施の児童生徒対象の「アレルギー疾患に関する調査研究」(小中高生:有効回答1277万3554人)によると、アレルギー性鼻炎9.2%(約117.5万人)、喘息5.7%(約72.8万人)、アトピー性皮膚炎5.5%(約70.3万人)の患者数がいることがわかりました。

アレルギーのなかでもアトピー性皮膚炎は、子どもの発症が多く、年齢を経るにつれて治る傾向にあるようですが、成人になっても続く人や再び発症する人もいます。

アトピー性皮膚炎は、皮膚にかゆみが起きるアレルギーで、皮膚生理機能の異常やハウスダスト・食物成分による過剰反応などが要因のひとつといわれています。

長期間の特別な対処法が必要で、短期間ではなかなか改善されないアレルギーとして知られています。

同社では、保有乳酸菌の一つである「L.アシドフィルスL-92株」が花粉症・通年性アレルギー性鼻炎の症状緩和の働きがあることを確認しました。前の年、同じI型アレルギーであるアトピー性皮膚炎においても同様の働きがあるかどうかの試験を実施し、有効性が示唆されたため、プラセボ対照二重盲検試験を実施し、治療の補助に役立つかどうかを調べていました。

アトピー性皮膚炎の原因
アトピー性皮膚炎の原因は、現在の生活環境が昔と違って細菌の無い超清潔社会になったため、戦う相手がいなくなった体の免疫がバランスを崩して、体に入ってくるダニの死骸やホコリそして特定の食品などに過剰に反応して独特の皮膚炎を起こすのがアトピー性皮膚炎です。これがアトピー性皮膚炎を含めたアレルギー反応の原因です。

アトピー性皮膚炎のアレルギー反応についてもう少し詳しく解説しますと、人間の免疫システムには細菌に対する細菌型免疫と、吸血ダニや寄生虫に対するIgE抗体とマスト細胞(肥満細胞)を使ったIgE型免疫の2つのシステムがあります。しかし現在は細菌があまりいない、清潔な環境のため細菌型免疫システムが小さくなり、IgE抗体型免疫システムが大きくなり免疫のバランスが崩れてしまったのです

年代によって症状の現れ方は異なりますが、思春期以降は、首のまわりが黒ずみ、皮膚が苔癬化(たいせんか:厚ぼったく、きめが荒い状態)して、強いかゆみを訴えます。

顔面に紅班が生じるケースもあり、角質が剥がれ落ちてしまうこともあります。季節によって症状の重さは変化します。通常は夏季に軽減し、冬季は乾燥して悪化します。


爪白せんのパルス(間欠)療法



爪白せんの症状と原因
爪白せんは、水虫の原因になる白せん菌が爪の傷や割れ目から入り込み、爪が黄色に濁って変形する病気です。爪がぼろぼろになって、はがれることもあります。

皮膚科専門医で作る「ジャパン・フット・ウィーク研究会」は、爪白せんの患者は1200万人いると推定しています。国民の10人に1人が、かかっている計算です。長く水虫とつきあってきた中高年層が爪白せんを併発している場合が多いですが、若い年代にも徐々に広がりつつあります。

この病気がなおりにくいのは、水虫用の塗り薬が爪の内側に入りにくく、効かない点です。内服薬で効果のある「塩酸テルビナフィン(商品名・ラミシール)」も出回っていますが、半年以上使わなければ、なりません。かゆみなど自覚症状もないため、放置している人が多いです。

帝京大皮膚科教授の渡辺晋一さんは「爪白せんは、菌をいわば培養している状態です。治療しないと爪から菌が出てきて、家族にもうつすことになります」と話しています。

イトラコナゾールを使った「パルス療法」
治療には抗菌薬「イトラコナゾール(商品名・イトリゾール)」も広く使われています。カプセルタイプの薬ですが、保険で認められている一日投与鍛は100ミリ・グラムです。これだと毎日飲み続けなければなりません。そこで渡辺さんらは、毎日は服用しなくてもすむ「パルス療法」について、全国30か所の病院で三つの方法を比較テストして、治療期間を大幅に短縮できる手法を確認しました。

パルス療法は、薬の内服を一定期間続けた後に、しばらく休止期をおく治療法です。200人近い爪白せん患者にイトラコナゾールを使い、

(1)1日200ミリ・グラムを一週間服用後、3週間休むパターンを3回(総投与量4200ミリ・グラム)

(2)(1)と同様で6回(同8400ミリ・グラム)

(3)1日400ミリ・グラムを1週間服用後、3週間休むパターンを3回(同8400ミリ・グラム)

に分け、半年後の爪の濁りなどを比べました。

すると、「一度に薬をたくさん投与、短期間に終わらせる」(3)が、効果が最も高かったです。6%は完治し、「著しい効果」「有効」も加えると約85%に上りました。一方、(1)(2)の効果は、65%前後にとどまりました。

パルス療法は欧米で、安全性が確認されています。国内でも大学病院や地域の基幹病院などで、独自の判断で取り組む医師が増えています。そんな中、詳細なデータ比較はこれが初めてで、最も効果の高い方法はどれか、データを元に明らかにできました。

イトラコナゾールは、体内で分解されない分は爪に運ばれ長くとどまります。そのため、服薬終了後も効果が続きます。パルス療法は、この性質を利用しました。爪の中のイトラコナゾール濃度をみると、(3)では、服用終了から9か月間、白せん菌を殺す十分な量の薬効成分が残り、効果が続いていたのです。

慶応大皮膚科教授の西川武二さんは「副作用もほとんどなく、患者のアンケートでも、7割はこの治療が良いと実感している」と語っています。

爪白せんの診断
爪白せんの診断は、爪の一部を切り取って、顕微鏡での確認と、菌の培養の2通りで行います。「水虫」と見えても、足の皮膚の湿疹(しっしん)であるケースも少なくなく、勝手に水虫と誤解している人は多いです。気になる人は、皮膚科専門医で正確な診断を受けることが、望ましいです。


関係医療機関

帝京大学病院皮膚科

慶応大学病院皮膚科

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