サプリメント事典

-頭痛、片頭痛-

頭痛、片頭痛

目次
  • 頭痛、片頭痛の原因
  • 頭痛、片頭痛の対策
  • 頭痛、片頭痛に効果効能があるサプリメント
  • サプリメント以外での予防改善

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関連情報

頭痛、片頭痛の原因

頭痛のうち90%以上は頭蓋外異常によるものでそれ以外は頭蓋内異常(脳腫瘍、クモ膜下出血など)です、頭蓋外異常には片頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛の3種類があります。

片頭痛は1日に2~3回から週に2~3回程度、数時間から数日間にわたり頭の片側が痛むもので特に女性に多く、生理周期合わせて起きます。片頭痛の原因は脳の血管が何かの理由で拡張して、神経を刺激するためです。

群発頭痛は年に1~2回ほど1~2ヶ月にわたって頭痛が起こるものです。

緊張型頭痛は女性に多く右か左のこめかみから頭の横にかけて痛みが走り、しばしば肩こりも伴います。緊張型頭痛の原因には心理的と肉体的な要因があり心理的要因はストレスや過労、悩みなどで、肉体的要因はデスクワークなので長時間同じ姿勢を続けることによる筋肉の緊張、疲労睡眠不足、月経前などです。

頭蓋内異常の症状として、脳腫瘍は朝起きたとき頭痛と吐き気を伴ないます、クモ膜下出血はバットで殴られたような激しい痛みと嘔吐があり、髄膜炎は発熱を伴なった痛みがあります。

頭痛、片頭痛の対策

頭痛、片頭痛の対策としては日頃から精神的、肉体的な疲労を溜めずに自立神経のバランスを整えることです。

頭痛、片頭痛に効果効能があるサプリメント


サプリメント選びのワンポイント・アドバイス

イチョウ葉、レシチンは脳を活性化して、脳の血流を改善させる働きがあります。

ビタミンEは自律神経に働きかけ血行を促進したうえ更年期障害の改善にも有効です。

フィーバーフューは片頭痛の発作の回数を減らしたり、痛みを軽くする作用があります。

ブルーベリー(ビルベリー)は眼精疲労による頭痛に有効です。

マルチビタミン・ミネラルを服用すること で、三大栄養素代謝を円滑に進める 酵素を十分に働かせることができます。日常の体調を維持す るための、予防として服用してくださ。

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サプリメント以外での予防改善

疲労やストレス、睡眠不足などは避けて適度な運度や十分な休養によって自律神経を整えてください。

事務仕事などで筋肉の緊張からくる頭痛は、首や肩を中心に軽い運動をしたり温めたりして緊張をほぐしてください。

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関連情報


脳腫瘍(しゅよう)の「覚醒手術」



脳腫瘍の手術
脳腫瘍は、異常な細胞が脳内で増殖する病気です。治療には腫瘍をできる限り多く切除することが必要ですが、腫瘍の位置によっては摘出の際に脳組織を傷つけ、体のマヒや失語症などが残る恐れもあります。

「腫瘍を多く切除しつつ、後遺症を防ぐ」この二律背反の難題を解決したのが、「覚醒手術」です。

覚醒手術
手術台に横たわる患者に、医師がパソコン画面の単語や絵を見せ、「この三つの単語をつなげて文章を作って下さい」と話しかけます。

「かべに ペンキを ぬる」と答える患者、医師は「大丈夫そうですね。言葉のもつれなど違和感はありませんか」と問いかけを続けます。

患者は、頭の骨の一部を外され、脳がむき出しの状態ですが、意識は鮮明です。執刀医は患者の受け答えの様子を見ながら、脳腫瘍を電気メスなどで慎重に摘出していきます。
その間にも、患者とやり取りする「反応テスト」を担当する医師が頻繁に声をかけ、氏名や住所、趣味なども尋ねます。手を握ったり開いたりさせ、まばたきや舌の動きも見ます。


手術中は、医師が病変付近を電気や器具で刺激します。会話が途切れる、物の名前を言えない、顔が引きつるなどの異常な反応が出たら、その付近の腫瘍はそれ以上取りません。東京女子医大脳神経外科教授の堀智勝さんは「従来の手術に比べ、安全で効果の高い治療ができます」と話します。

脳を包む硬膜は刺激で痛みを感じますが、脳組織自体は痛みを感じません。そこで、まず全身麻酔で頭の骨を切開する「開頭」を行ってから、麻酔を中断して意識を回復させます。
この間に反応テストをしながら腫瘍を摘出し、再び全身麻酔をかけて頭部を閉じます。約10年前、効きも目覚めも早い麻酔薬が登場して、実施されるようになりました。

従来の手術では、腫瘍全体の7割程度を取れれば成功とされてきましたが、同大でこれまでに手術した約60人の患者では、平均で約95%の量の腫瘍を摘出できました。良性の脳腫瘍の場合、4年後の生存率は100%と、通常の手術に比べ2、3割高いです。3割程度の患者に一時的な言語障害やマヒが見られますが、数か月以内にほぼ消えると言います。

この手術は脳腫瘍のほか、脳血管にこぶができる海綿状血管腫、突然意識を失うてんかんなどにも実施されます。

ただ、脳の部位と働きには個人差が大きいです。そこで、言葉を発したり運動したりする際、脳のどの部分が働くかを調べるため、覚醒手術に先立ち、測定用電極を埋め込む手術を行う場合が多いです。

さらに、覚醒手術中に脳のMRI画像も撮影するため、手術時間が9時間程度と、従来の2倍近いです。患者には体力と忍耐も必要で、東京女子医大は15~65歳の患者に行っています。

保険がききますが、反応テストなどにスタッフも数多く必要なため、一部の大学病院でしか実施されていません。

関係医療機関 東京女子医大脳神経外科

関連ページ 手術による「てんかん」治療


がん(脳腫瘍)の放射線治療「サイバーナイフ」


放射線治療「サイバーナイフ」
神経や血管、組織が密集している頭や顔、首(頭頸部:とうけいぶ)の手術は、できるだけ避けたいものです。患者には、手術に耐えるだけの体力がない高齢者らも多いです。その点、メスを使わない放射線治療なら患者の体の負担が少ないです。ただし、通常の放射線は照射範囲が広く、微細な部位には使えないです。そこで、精密に照射できる最新鋭器「サイバーナイフ」が、放射線治療の新たな可能性を広げています。

サイバーナイフの仕組みはこうです。あらかじめ作成した画像に2方向から撮影したエックス線画像を重ね合わせて病巣を正確にとらえます。これを基に、6か所の関節を持つクレーンのようなロボットアームが、患者の体の微妙な動きに即応して位置を自在に変えながら、アーム先端の小型リニアック(直線加速器)から放射線を照射します。

リニアックは患者の頭頸部の周囲100か所のポイントから各12方向に照射します。最大1200本の放射線を病巣の形状に合わせて、方向と強さを変えて照射し、体が大きく動くと中断して誤射を防ぎます。

サイバーナイフは1992年、アメリカで開発されました。ロボットアームの動きは、巡航ミサイルが動く標的を追跡して撃ち落とす軍事技術が応用されており、照射の誤差は1ミリ以内と精度が高いです。メスのような鋭い切れ味の「電脳ナイフ」が名前の由来です。

従来、脳神経外科の放射線治療には、ガンマ線を照射する「ガンマナイフ」が多用されてきました。サイバーナイフと比較しても効果に違いはありませんが、ガンマナイフは重い金属フレームを患者の頭がい骨にねじで固定するため、痛みが多少あります。治療できるのは基本的に頭がい骨内にある3センチ以下の病巣に限られています。

これに対しサイバーナイフは、メッシュ状の固定用マスクをはめるだけです。何日にも分けて広い範囲に照射し、大きな病巣も治療できます。「針の穴に糸を通す」精度で、ガンマナイフでは治療できない頭がい底や頸部、脊髄(せきずい)の周辺、眼球と眼球の間など、頭がい骨の外にある病巣でも治療できます。

サイバーナイフの治療対象
頭頸部腫瘍のほか、くも膜下出血を引き起こす動静脈奇形や三叉(さんさ)神経痛なども治療できます。

治療は麻酔をせずに約1時間で、照射後に吐き気、発熱などが起こることがありますが、数日で治まります。叉神経痛などを除く、多くの疾患で健康保険が使え、治療費の自已負担は通常、3割となります。


関東脳神経外科病院サイバーナイフセンター長の井上洋(いのうえひろし)さん(群馬県藤岡市・神経機構研究所長)は「放射線を病巣に集中させるピンポイントの照射ができるので、頭頸部に最適ですが、今後、肺がんや乳がんなどにも広がるでしょう」と話しています。

ただサイバーナイフ装置は1台数億円と高価で、目下、全国で14施設にあるのみです。

ガンマナイフ
ガンマナイフは1968年、スウェーデンで開発された放射線治療装置です。

国内には1990年に初めて導入された。コバルト60を放射線源にして、頭部を覆うヘルメット型コリメーターの201個の穴からガンマ線を放射します。虫眼鏡で光を一点に集中する要領で、病巣を焼き切ります。

主な設置施設は日本ガンマナイフサポート協会のホームページで分かります。

関係医療機関

関東脳神経外科病院(埼玉県)

脳神経外科聖麗メモリアル病院(茨城県)

おか脳神経外科病院(東京都)

新緑会脳神経外科病院(神奈川県)

津島市民病院(愛知県)

蘇生会総合病院(京都府)

大阪大学病院(大阪府)

岡山旭東病院(岡山県)

厚南セントヒル病院(山口県)

済生会今治病院(愛媛県)

共愛会 戸畑診療所(福岡県)

九州大学病院(福岡県)

大分岡病院(大分県)

熊本放射線外科病院(熊本県)

脳梗塞の新薬 tPA(組織性プラスミノーゲン活性化因子)

脳梗塞

脳梗塞は、動脈硬化で脳の動脈が狭くなつたり、心臓などからはがれ落ちて流れてきた血栓によって、脳の血管が詰まる病気です。脳細胞に栄養や酸素が送られないと、細胞が死に、半身まひなどの後遺症や最悪は死亡にもつながります。

脳梗塞のほか、脳内の血管が破れる「脳内出血」、脳血管にできたコブ(脳動脈瘤)が破れる「くも膜下出血」の3疾患を合わせて脳卒中と呼びます、患者は計約140万人にものぼります。死因別では、がん、心臓病に次いで3番目に多いです。その脳卒中の死亡者のうち、脳梗塞が6割以上を占めています。

脳梗塞には従来、血栓を溶かす効果的な方法がなく、脳梗塞が広がるのを防ぐ薬などが投与されてきました。そこに登場したのがtPA(組織性プラスミノーゲン活性化因子)です。血栓に吸着して効率よく血栓を溶かし、脳の血流を速やかに再開させます。

脳梗塞の新薬 tPA(組織性プラスミノーゲン活性化因子)

まず使用量の1割を静脈注射で急速に投与した後、残る9割を点滴で1時間かけてゆっくりと投与します。アメリカの脳梗塞治療の指針は、発症後3時間以内(超急性期)に、この方法を最優先すべき治療法として勧めているほか、世界約40か国で認められています。

日本でも1990年代初めに臨床試験(治験)が始まりましたが、薬の特許を巡り、日米企業問で訴訟紛争が起きて中止となりました。そのあおりで、日本は世界の流れから取り残されていました。

この薬は心筋梗塞治療としては既に承認されていましたが、今回ようやく脳梗塞についても追加承認されました。欧米に遅れること約10年ということになります。

国内の治験では、脳梗塞の発症後3時間以内にtPA治療を行うと、3か月後には、ほとんど後遺症を患うことなく社会復帰できた割合が37%でした。アメリカでの治験もほぼ同じで、社会復帰の割合は処置しない場合よりも5割も高かったです。

tPA(組織性プラスミノーゲン活性化因子)の副作用

しかし、全員に効果があるわけではないうえ、副作用もあります。tPAの早期承認を訴えてきた日本脳卒中学会理事で札幌医大名誉教授の端和夫(はしかずお)さんも「血栓を溶かすtPAは、脳出血を起こしやすくなります。使用の際、医師は細心の注意が必要です」と指摘します。

発症から長時間たった後にこの薬を使うと、脳出血の恐れが高まり、効果も乏しくなります。そこで、治療の対象は

・発症後3時間以内

・CT(コンピューター断層撮影)検査で、脳出血の危険性が低いことを確認

などの場合に限られています。

患者・家族にとって重要な点は「脳梗塞を起こしたら、3時間以内に病院で治療を受ける」ことです。しかし、国立循環器病センターの調べでは、発症後3時間以内に受診した患者は19%しかいません。「脳梗塞と気づくのが遅れた」「救急車を呼ばずに自力で来院した」などが原因です。

アメリカは、早期の脳梗塞治療を呼びかけるキャンペーンを行い、成果を上げています。救命率向上のため、日本でも同様の取り組みが必要です。

脳仮塞の症状とtPA治療

脳梗塞の症状としては

1.片方の手足など半身の動きが急に悪くなる

2.突然ろれつが回らなくなる、言葉が出にくくなる

3.片方の目が見えにくくなる、視野が狭くなる

4.突然ふらつき、歩けなくなる

5.意識がなくなる

本人の自覚がないこともあるため、これらの症状に家族が気づいたら、すぐ救急車を呼んでください。

ここで紹介したtPA治療は、発症から長時間経過していると脳出血の危険性が高まることから、日本脳卒中学会は施設として

・CTまたはMRI(磁気共鳴画像)による検査が24時間可能

・この治療を熟知した医師が勤務

などの条件を挙げています。

関係医療機関

国立循環器病センター

札幌医大病院

脳卒中の後遺症治療「経頭蓋磁気刺激治療」(TMS治療)

脳卒中の後遺症

脳卒中は脳の血管が詰まったり、破れたりして脳に損傷を与える病気です。脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血の3疾患を合わせて脳卒中と呼びます。脳卒中の患者は年間130万人以上で、年間医療費は約1兆9千万円にもなる国民病です。そして多くの場合、体がまひ(運動障害)する、後遺症が残ります。突然身体が動かなくなるため、患者の精神的ショックは大きく、脳卒中になった初期の7割の方はうつ病になります。

まひ(運動障害)の一般的な治療法は、リハビリテーションになります。しかし、それには限界があり、発症してから60日までは眼に見えて回復しますが、それを過ぎると回復が鈍くなり、4ヶ月を過ぎるとそれ以上の回復は見込めなくります。

新たな治療法「頭蓋磁気刺激治療」(TMS治療)

脳卒中の後遺症の治療に、画期的な実績を上げているのは、東京慈恵医大病院の安保雅博医師が行っている経頭蓋磁気刺激治療(TMS治療)です。経頭蓋磁気刺激装置という磁気を発生させる機械を使って、頭の上から運動神経を刺激する方法です。

人間の脳は大きく左右に分かれていて、右の脳は左半身の動き、左の脳は右半身の動きをつかさどっています。経頭蓋磁気刺激装置で右の脳に磁気の刺激を与えますと、神経回路を伝わり左半身が動きます。

頭蓋磁気刺激治療(TMS治療)は、損傷を受けていない、正常な側の脳に磁気刺激を与えます。20分間の磁気刺激治療を受けた後は、1時間のリハビリテーション(CI療法)を行います。この治療法により、わずか2週間ほどで驚くべき回復をみせます。そのうえ発症から10年以上たった患者さんも、この治療法によって回復します。

頭蓋磁気刺激治療(TMS治療)のメカニズム

人間の脳は右が損傷した場合、反対の左の脳が、動かない右の脳の働きを助けをすると考えられてきました。しかし安保雅博医師は逆に、正常な脳が損傷した脳の回復を妨げていると考えました。そのため経頭蓋磁気刺激装置で、正常な脳の働きを磁気で抑えてみたところ、脳の損傷した部分の周りが、活発に機能しはじめたのです。

頭蓋磁気刺激治療(TMS治療)は、正常な側の脳の働きを磁気刺激により一時的に抑えて、損傷した脳の機能を回復させるのです。

現在この治療は健康保険適用外ですが、研究段階のため治療費は病院側が負担します。ただし入院費とリハビリ費用は患者負担(健康保険適用)になります。

治療の適応基準

上肢(腕と手)のまひ、さらに腕を固定して指が1本でも開く動作ができる、患者さんのみに、この治療が適応されます。

経頭蓋磁気刺激治療は足のまひには、効果がありません。その理由は手や腕を動かす脳の部分は脳の表面にあるのに対して、足の運動をつかさどる部分が、脳の奥にあるため、磁気の刺激が十分届かないからです。このため安保医師は、磁気よりも強い電気刺激による治療方法を現在研究中です。

また脳卒中による失語症に対しても、経頭蓋磁気刺激治療による実績が少なく、効果は未知の部分が多いです。失語症の原因は、言語中枢をつかさどる左側の脳の損傷が原因になります。失語症は身体のまひよりも未知の部分が多いですが、現在身体のまひと同じく、正常な右の脳に磁気刺激を与えて、治療を行い一定の成果をあげています。

関係医療機関 

東京慈恵医大病院 

清水病院(鳥取県)

頭蓋磁気刺激治療による「うつ病」治療

頭蓋磁気刺激治療(TMS治療)は現在「うつ病」治療にも有効です。治療を行っている医療機関は、神奈川県立精神医療センター芹香病院(きんこうびょういん)です。

脳卒中の新しいリハビリ法「CI療法」

脳卒中のリハビリ

脳梗塞など脳卒中の後遺症で、左右どちらか一方の腕や足に運動障害(片まひ)が起こることが少なくありません。足のリハビリは歩けるようになることを目指しますが、腕や手は、短時間のリハビリを毎日続けてもあまり効果がない場合、まひしていない腕で食事や字を書くことができるよう、指導を切り替えることが多いです。

新しいリハビリ法「CI療法」

これに対し、まひした腕を集中的に訓練する、新しいリハビリ法「CI療法」があります。1989年ごろからアメリカで始められ、英語の頭文字をとって「CI療法」と呼ばれています。

(CI=constraint induced movement therapy 訳「脳卒中片まひの集中訓練」)

この方法は、健常な腕を使わないようにした上で、まひした腕を使う訓練を毎日長時間、2-3週間かけて行うのがポイントになります。

CI療法は日米以外にもイギリス、ドイツ、韓国など7か国以上で実施され、脳の外傷、脳性まひといった脳卒中以外の患者に応用された例もあるといいます。

兵庫医大病院と、分院の篠山病院では、2300年以降、47-81歳の男女20人にCI療法を実施しました。何も握れなかった人が、包丁を使えるようになるなど、14人で改善が見られました。一般に、後遺症が出てから時間が経過してしまうと回復しにくいとされますが、発症後16年以上たっても、ある程度動くようになった例もあります。

なぜ、腕の動きが回復するのか、同医大教授の道免和久(どうめんかずひさ)さんは「脳細胞に柔軟性(可塑性)があるため。集中的な訓練で、運動をつかさどる大脳皮質の障害のない部分が、障害のある領域の機能を果たすようになる」と見ています。

ただし、訓練は過酷です。同医大では、健常な腕を使わないよう三角きんで縛り、まひした手の訓練を毎日5時間、その訓練を10-14日間行います。作業療法士らが付きっきりで「タオルを動かす」簡単な動作から、「小銭をつまむ」「蝶結びをする」など、複雑な動作へと進めていきます。訓練項目は62通りにも及びます。

患者は単調な動作を繰り返す訓練に忍耐を強いられます。それでも、あきらめていた手の動きを取り戻す、喜びは大きいです。従来のやり方では「動く方しか訓練しない」と、物足りなかった患者の不満も解消されます。

CI療法の適用基準

もっとも、重いまひの場合、機能回復は難しいです。2004年からCI療法を導入した自衛隊中央病院リハビリテーション科医長の越智文雄さんは「この治療の対象者はかなり限定され、脳卒中の片まひ患者の二割ほど」と話します。

道免さんも「まひが消えて元通りに回復する〃奇跡の治療"ではない」と言い、指や手の関節を自力である程度動かせるなどの適用基準を設けています。

適用基準は兵庫医大、同篠山病院の基準では、まひしている側の手首が手の甲の側に20度以上動かせて、さらに親指を含めた3本の指が10度以上伸ばせることとしている。訓練初期はまったく手や腕が動かないのに長時間、単調な動作を繰り返さなければならないので、患者自身の強い意欲、集中訓練のストレスに耐えられる精神力、血圧や他の病気が安定していることなども求めています。

CI療法の現状

この治療は、日本神経学会などがまとめた「脳卒中治療ガイドライン」でリハビリの一つとして推奨はしていますが、普及していません。医療機関が請求できるリハビリの診療報酬は短時間に限られ、作業療法士が長時間患者に付きそうには、見合わないことも一因とみられています。

関係医療機関

兵庫医大病院

篠山病院

自衛隊中央病院

画像診断装置PETによる脳疾患の早期発見

PTEによるアルツハイマー病の診断

高齢化とともに増加するアルツハイマー病やパーキンソン病などの早期発見に、画像診断装置PET(陽電子放射断層撮影)が有効であることが分かってきました。元々、脳機能を観察するために開発された装置で、実際の診療で脳の検査に使う医療機関もあります。

脳は体内で最もブドウ糖を消費する器官です。アルツハイマー病は脳の神経細胞が委縮して、記憶障害が起きる認知症の一種で、委縮した部分の活動が鈍り、ブドウ糖の消費が減ります。PETによる診断は、このブドウ糖の取り込みを調べます。

PET画像では、脳活動の活発な部分が赤色に、逆に活動の低下した部分は青色で表示されます。アルツハイマー病の人の脳は健常な人に比べ、耳側の頭頂部付近の活動が低下していますので、アルツハイマー病の方の画像は青く染まります。

PET診断の特長は、CT(コンピューター断層撮影法)やMRI(磁気共鳴画像)ではとらえにくい早期のアルツハイマー病を把握できる点です。

全国でも数少ない頭部専用のPETを持つ県西部浜松医療センターでは、過去2年間にアルツハイマー病が疑われる患者約60人を検査して、8割をアルツハイマー病と診断しました。

同センター医長の尾内康臣さん(先端医療技術センター)は「MRI、CTは脳の様子を写真のように映すのは得意だが、外形的な変化が出ていない早期のアルツハイマー病の診断は苦手です。その点、PETは形状変化が表れる前の脳機能の変化を読みとれます」と説明します。

ただ、アルツハイマー病と診断されても、打てる手は多くありません。進行を半年ほど遅らせる抗認知症薬があるほかには、リハビリが試みられている段階です。それでも早期診断できれば、家族らが病気に配慮した適切な接し方ができるうえ、本人にも日常や社会生活での留意点をアドバイスできます。

PTEによるパーキンソン病の診断

手足の震えなどの症状が表れるパーキンソン病の早期診断にも、PETは活用され始めています。

この病気は、脳の神経細胞が変性し、神経伝達物質のドーパミンが減少することで起きます。検査にはブドウ糖の代わりに「CFT」という薬剤を使います。この薬剤は、ドーパミンを作り出す神経細胞に付着するため、薬の集まり具合を見れば、病気の初期でも活動低下の様子が確認できます。

同センターでは、過去1年間に約20人が、この検査でパーキンソン病と診断されました。手足の震えなどの症状が出る前から発症を“予測”することも可能です。ただ、薬剤が特殊なため、検査できる施設は全国でも少ないです。

PETによる脳検査を実施している東京都老人総合研究所付属診療所長の石井賢二さんは「診断で、アルツハイマー病やパーキンソン病の進行を遅らせることが期待できます。治療法の向上によって、普及が進むはず」と語っています。

現状では保険は適用されず、約10~40万円の診断料は全額自己負担か、医療機関が研究費で負担しています。

画像から病状を読みとる技術を備えた医師がまだ少なく、医師の養成も課題になっています。

関係医療機関

県西部浜松医療センター

東京都老人総合研究所付属診療所

ウェルニッケ脳症(ウェルニッケ・コルサコフ症侯群)

ウェルニッケ脳症 は脳の「脚気」(かつけ)

ビタミンB1不足が進むと「脚気」になるが、ダメージを受ける身体の筒所によって、乾性、湿性、脳の3種類があります。

乾性脚気は末梢神経と筋肉がダメージを受けるケースで、歩行困難、筋肉痛、スクワット(屈伸運動)ができなくなるなどの症状があらわれます。

湿性脚気は心臓がダメージを受けるケースで、心悸亢進(しんきこうしん)、浮腫による心臓の肥大、呼吸困難などの症状があらわれます。最終的には、うっ血性心不全で死にいたります。

脳にダメージが発生したケースが脳脚気で、とりわけ、アルコール依存症患者がウェルニッケ脳症(ウェルニッケ・コルサコフ症侯群とも)を発症しやすいです。

ウェルニッケ脳症には3つの特徴的な症状があります。目の玉が一点を見つめたまま動かなくなる(眼球運動麻痺)、歩行がおぼつかない(歩行異常)、場所や時間、人物などがわからなくなる(記憶障害)などです。この記憶障害をコルサコフ精神病と呼んでいます。

ほとんどのウェルニツケ脳症患者は、アルコール依存症患者ですが、胃がんやエイズ患者にもみられます。

ウェルニッケ脳症患者はみな、ビタミンB1が不足しています。その証拠に、B1を静脈注射すると、眼球運動麻痺が迅速に改善します。しかし、歩行異常や記憶障害の改善はそう単純ではありません。回復度合いは、症状のあらわれた期間が長びくほど悪化します。

最近の研究で、ウェルニッケ脳症では、脳の特定の箇所にフリーラジカルによるダメージが発生していることが発見されました。このことから、ビタミンB1不足によって脳のダメージが起こる際に活性酸素がかかわっていることが推測できます。

ビタミンB1不足の原因

ビタミンB1不足は、B1の摂取不足以外にも、B1要求の増加、B1の人体からの過剰排泄、食事からの抗チアミン(ビタミンB1)因子の摂取などによっても起こります。

アルコールを多量に摂取しますと、食物をしっかり食べない傾向があるので、ビタミンB1の摂取不足におちいりやすいです。しかも飲酒によって、ビタミンB1の腸管からの吸収が妨げられますから、さらに不足しやすくなります。酒を飲むと記憶がおぼつかなくなるという人は、ビタミンB1不足かもしれません。

糖類の代謝にはビタミンB1が大量に消費されるので、糖類をたくさん食べる人も不足しやすくなります。激しい運動や発熱、妊娠、授乳、思春期の成長の際にも、多くのビタミンB1が消費されます。

利尿剤を服用すると、ビタミンB1の腎臓における再吸収が妨げられるばかりか、尿中への排泄が進みます。アルコールをたくさん飲んだときも、尿量が増えるためビタミンB1の排泄が促進されます。茶、コーヒー、ベテルナッツには抗チアミン(ビタミンB1)因子が含まれているため、多く摂るほどビタミンB1は失われます。

ハマグリやアサリなどの貝類、ワラビやゼンマイなどの山菜を生で食べると、B1がこれらの食物に含まれるチアミナーゼによって壊されます。この場合は、加熱調理して食べればいい。チアミナーゼは加熱によって不活性化するので、B1の分解を防ぐことができます。

ウェルニッケ脳症の治療法

ビタミンB1を投与することにより、早めに治療を始めるのが一般的です。数日間ビタミンB1を1日1000ミリグラムほど静脈注射し、その後は150ミリグラムほど内服で補充する場合が多いです。

アルコール依存になっている方が多いので、アルコール依存に対するリハビリテーションや、末梢神経障害が併発することがあるのでリハビリテーションが必要となることがあります。

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