サプリメント事典

-物忘れ-

物忘れ

目次
  • 物忘れの原因
  • 物忘れの対策
  • 物忘れに効果効能があるサプリメント
  • サプリメント以外での予防改善

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関連情報

物忘れの原因

物忘れは老化現象による記憶力の低下の健忘症と病気に分類される認知症とに分かれます。

健忘症

健忘症(記憶力の低下)の原因は、加齢による脳の神経伝達機能の低下によるものです。

認知症

健忘症は単に記憶力の低下ですが、認知症は自分の家族の顔すらも忘れるなどの見当識障害です。

認知症は脳血管性とアルツハイマー型に大別できます。

脳血管性認知症の原因は脳血管の動脈硬化により脳梗塞や脳内出血を起こしたあと、血行が悪くなったことにより脳機能が衰えたものです。

アルツハイマー型認知症の原因は、脳の記憶をつかさどる海馬の付近のアセチルコリン神経の脱落によるものです。

物忘れの対策

物忘れの対策としては、脳に必要な栄養補給と血行の促進がポイントになります。

物忘れに効果効能があるサプリメント


サプリメント選びのワンポイント・アドバイス

EPA(IPA) DHAは脳の神経細胞を成長させるホルモンNGF(神経成長因子)の生産に欠かせません、またアルツハイマーの引き金になる脳内の炎症を抑えます。

イチョウ葉とビンポセチンは血管を拡張して脳を覚醒させて記憶力を高めます。

カンカは血液を固まりにくくして血行を良くします。

高麗人参(朝鮮人参)は有効成分のジンセニシドがアセチルコリンを放出させます。

ビタミンB群のビタミンB1は脳の働きを活発にしています、ビタミンB6ビタミンB12は「頭のビタミン」と呼ばれ脳に欠かせないビタミンです。

ビタミンEは抗酸化効果がありコレステロールも減らして脳の血行を改善します。

レシチンは脳の伝達神経のアセチルコリンの原料になります。

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サプリメント以外での予防改善

食事面ではEPA(IPA) DHAやビタミンE、レシチンを含んだ食品を使ってバランスの良い食事を摂ってください。

EPA(IPA) DHAやビタミンEはイワシやサバ、サンマ、マグロなどに含まれています、またレシチンを含んだ食品は納豆や豆腐などの大豆食品です。

普段の生活では人づき合いや趣味などで、人生を積極的に楽しむように努めましょう。

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関連情報



特発性正常圧水頭症による痴呆の手術療法

特発性正常圧水頭症の原因
脳の中では、髄液と呼ばれる液体が作られ、脳内と脊髄を循環し、脳のクッションの役割をしている。水頭症は、髄液の流れが滞って脳内の空間(脳室)が広がり、脳の他の部分が圧迫されるために、様々な症状が現れる病気です。

特発性正常圧水頭症は、髄液の圧力は正常ですが、歩行障害、痴呆、尿失禁の3症状が出るのが特徴で、60歳以降に発症しやすいです。

国内の痴呆患者は170万人前後に上り、このうち5%程度は、正常圧水頭症が原因と考えられています。痴呆の中でも、例外的に手術で治すことが可能な病気です。

特発性正常圧水頭症の手術
脳内を圧迫する髄液が、脳室にたまらないよう、通り道を作る手術を行います。腰に注射器を刺して髄液を抜き、症状が良くなるようなら、手術の効果が期待できます。

国内で主に行われている手術は、脳室にチューブを刺し入れ、背中から皮膚の下を通して腹部の空間(腹腔)までチューブを延ばし、たまった髄液を抜く「脳室腹腔短絡術」(VPシャント)です。チューブには、髄液の排出を調整するバルブがついていて、手術後にも調整できます。

チューブの入り口を作る必要があり、頭や皮膚を数か所切り開きますが、全身麻酔で1時間程度で終わります。手術の後、8割以上の人は歩行障害が改善し、痴呆症状も半数以上は1年以内に治まるそうです。3割は、介助がほぼ不要になるほど回復します。

手術には、頭に傷をつけない方法もある。髄液の通り道となる背骨の腰付近にチューブを入れ、腹腔に流す「腰椎くも膜下腔腹腔短絡術」(LPシャント)です。総合南東北病院(福島県郡山市)、横浜南共済病院(横浜市)などが多く手がけている。手術法が違っても、治療成績に差は見られないといいます。いずれの手術にも保険が適用されます。

この病気のことがほとんど知られておらず、治療すれば良くなるはずの多くの人が、適切な治療を受けていません。限られた専門医にしか実態が認識されておらず、ほかの病気と誤診されている人もいるのが実情です。

関係医療機関 総合南東北病院 横浜南共済病院
特発性正常圧水頭症のサイト 特発性正常圧水頭症iNPH


手術による「てんかん」治療


てんかん
てんかんは、脳の電気信号の伝達異常によって、突然意識を失って倒れたり、けいれんを起こしたりします。自動車の運転免許を取れないほか、発作で日常生活に大きな支障を与えます。原因は脳腫瘍や、胎児期に大脳が形作られる際の異常、頭部外傷や脳卒中などさまざまあります。患者は1000人あたり5-10人と言われ、決して珍しくない病気です。

抗てんかん薬は患者の三分の二に有効とされています。しかし、薬で改善しない場合を「難治性てんかん」と呼び、人口の0.1%程度の患者がいます。病変が脳全体に及ぶものと、局所にとどまるものがあり、難治性でも局所にとどまれば手術が可能です。手術は脳の病変を切除したり、異常な電気信号が出る部位を切断したりします。手術で全体の95%は発作が以前より少なくなり、その八8-9割は発作が完全に消えると言います。手術できる患者は国内で年3000-4000人に上るとされています。しかし、年間手術数は500件程度にとどまっています。

「専門医とされる神経内科医でも、手術は危険で効果が小さいと思いこんでいる場合が少なくない」と、国立精神・神経センター武蔵病院手術部長の大槻泰介さんは指摘します。

手術による「てんかん」治療
手術で改善しやすいのは、脳中心部の海馬と呼ばれる部位に、委縮や硬化が見られる「内側型側頭葉てんかん」や、腫瘍や大脳の形成異常が原因のものなどです。画像で異常が見つかる場合が多く、手術自体は数10年前から行われていたが、治療成績はここ10年ほどで飛躍的に向上しています。画像診断の進歩で、てんかんの原因となる病変が正確に特定されやすくなったためです。

脳の構造の変化などを見るため、以前から使われてきた磁気共鳴画像(MRI)に加え、脳の血流を見る単光子放射型コンピューター断層撮影(SPECT)、ブドウ糖代謝を見る陽電子放射断層撮影(PET)、脳の電気信号の変化をとらえる脳磁図(MEG)などが登場し、診断、治療の大きな力になっています。

大槻さんは「手術で確実に治るてんかんがあることを知ってほしい。従来難しいとされた場所も手術ができるようになり、後遺症も減っている」と言います。

2002年には日本神経学会で、てんかんの治療指針(ガイドライン)がまとめられ、手術の有効性も盛り込まれています。大人では、薬を飲んで二、三年経過を見ても改善しない場合は、手術の検討対象となります。子どもの場合、てんかんが成長に及ぼす影響が大きいことを考慮し、早めに手術することが多いです。発作を起こすことで、日常生活にどの程度支障が出るかも、手術の判断基準となります。

検査や手術などの入院期間は約二か月。治療には保険が適用されます。ただし、脳手術だけに、全体の1%弱には手足のまひや言葉の障害など、重大な後遺症が出てしまいます。手術を受けても改善しない人も5%程度います。日本てんかん学会認定医がいて、手術ができる施設は20程度あります。手術経験の豊富な施設で十分な説明を受け、納得の上で手術を受けること決めてください。

てんかんの薬物治療
脳全体に発作が広がり、意識を失い体を硬直させてけいれんを起こす「全般発作」にはバルプロ酸(一般名)、脳の嘉の機能が間題を起こし、けいれん、しびれ、幻聴などを起こす「部分発作」にはカルバマゼピン(同)が第一選択薬として使われています。

薬で効果がない場合、手術が検討されます。日本神経学会の「てんかん治療ガイドライン(指針)」がホームページで公開されています。

関係医療機関 国立精神・神経センター武蔵病院

関連サイト 日本神経学会 日本てんかん学会


パーキンソン病の脳深部刺激療法


パーキンソン病
手足の震えや筋肉のこわばりといった運動障害が起きるのが、パーキンソン病の特長です。詳しい原因は不明ですが、ドーパミンという脳内の神経伝達物質が不足するために起きます。50-60歳代に多く、患者は国内で約10万人、国の特定疾患(難病)に指定されています。

ドーパミンを薬で補うのが治療の基本ですが、病気の進行に伴って効果が徐々に薄れてきます。服用始めは薬がよく効いていますが、次第に症状が進行し、薬の量を上限まで増やしても足が動かなくなり、顔の筋肉のこわばりで言葉すら出ないような状態になったりします。

脳深部刺激療法
日大板橋病院(東京・板橋区)脳神経外科では、脳に電極を埋め込んで、電気刺激を与える「脳深部刺激療法」の手術を行っています。この手術は1970年代末から痛みの治療法として研究され、意思と関係なく、震えるような不随意運動を抑える効果もあるとして、パーキンソン病にも90年代から導入され始めました。

電気刺激装置は、バッテリーを含むパルス(電気抽動)発生装置と電極からなり、規則的に電流を送ります。狭心症の治療に使う心臓ペースメーカーを、脳に応用した形です。

手術はまず、MRI(磁気共鳴画像)で撮影した脳の画像を基に、コンピューターを使い、電極を埋め込む位置を決めます。

頭部に二か所の穴を開け、脳の視床下核という部分に、極細の電極の針を刺します。1ミリの位置のずれで効果に大きな違いが出る、精密さを要求される手術です。

さらに、右鎖骨下を切り開いて胸にパルス発生装置を埋め込み、脳に刺した電極と線をつなぐ手術を行います。微弱な電流の刺激が、神経伝達の流れを調節し、不随意運動を抑制すると考えられています。

睡眠時は電流を切っても良いですが、基本的に24時間、流したままです。月に一度通院し、効き具合などを見てもらい電流を調整します。体外からのリモコンで、操作が可能になっています。
完全に元通りになるわけではありませんが、服のボタンを留めたり、食べ物を口に運んだりといった日常の動作ができるまでに回復します。ドーパミンを補う薬の量は、手術前より少なくなります。

ただ、脳の深部にかかわる手術だけに危険もあります。最も重大なのが脳出血で、約2%に起こります。またパーキンソン病そのものが治るわけではないので、効果がいつまで続くかは、病気の進行にもよります。すでに最重症の人では、この手術をしてもあまり効果が期待できません。中程度の病状の人が、最も適していると言われます。

手術は2000年から保険適用になり、特定疾患の認定患者は、さらに公費負担が受けられます。

パーキンソン病の薬物治療
パーキンソン病の治療の基本は、脳内の神経伝達物質ドーパミンが不足しているのを、薬で補うことです。
代表的な薬は、脳内でドーパミンに変化する物質を補充する「Lドーパ」という薬です。

効果は強い反面、吐き気や幻覚といった副作用を引き起こすこともあります。最大の難点は、何年も使っているうちに、しだいに効き目が落ちることで、量を増やすにも限界があります。

このためドーパミンを受け取る側の神経細胞の働きを強めようという「ドーパミン受容体刺激薬」もよく使われ、新薬の開発も進められています。

関係医療機関 日大板橋病院脳神経外科


メニエール病の治療「早期の生活改善」と「薬物療法」


メニエール病の症状と原因
メニエール病は、内耳を満たしているリンパ液が過剰になり、「水ぶくれ」になる病気です。内耳は、平衡感覚をつかさどったり位置を感知したりする三半規管や耳石器などの器官が集まっています。これが水ぶくれでうまく働かなくなり、耳鳴り、難聴、ぐるぐる回る回転性のめまい発作が繰り返し起きます。悪化すると治療は難しく、厚生労働省の特定疾患(難病)に指定されています。患者は十万人当たり十数人ほどで、女性の方が多いです。

水ぶくれの原因は不明ですが、ストレスによる自律神経や内分泌系の失調が一因とも見られています。東海大教授の高橋正紘さん(耳鼻咽喉科)は患者200人を詳しく調べ、発症に個人の性格が関連していることを突き止めました。

親や上司の期待に沿うよう努力し、嫌なことは我慢するなど、人からの評価に敏感で徹底的に仕事をする人が、そうでない人より二倍以上、発症しやすいことが分かりました。

メニエール病の「早期の生活改善」
メニエール病は生活習慣病ですので、治療として徹底した生活指導が行われます。
  1. 週何回かは、汗をかく程度の運動を行う。
  2. 毎週一日は必ず休日を取り、自分の楽しみに時間を使ってストレスを発散する。
  3. 長時間労働を避ける(夜9時以降は仕事をしない)。
以上のように、体に負担をかける生活を改めます。

高橋さんは「メニエール病はライフスタイルが影響する生活習慣病。進行すると治療は難しいが、発症から一年以内の早い段階で生活を改善すれば完治も見込める」と強調します。同病院は月曜日午後、めまい外来を開いています。

メニエール病の「薬物療法」
一方、薬物療法を行う医療機関もあります。埼玉医大名誉教授で新宿恒心クリニック、めまい.平衡障害・耳鳴りセンター長の坂田英治さんは「中耳腔ステロイド剤注人法」を実施しています。

めまいは、内耳の器官が異常に反応し、それが脳に伝わって起きます。ステロイド剤にはこの興奮を鎮める作用があり、中耳に薬剤を注入し、その奥の内耳にしみこませる方法です。

鼓膜に注射針を刺し、10秒ほどかけて中耳に流し込みます。これを1-2週間ごとに2-3回行います。坂田さんによると、病状が早期なら、約八割の患者に症状の改善など効果がありました。ステロイド剤は局所への注入なので、副作用は心配ないそうです。

こうした内耳への薬剤の局所投与は、厚生労働省研究班も効果を詳しく調べる研究を進めています。

坂田さんは「めまいや耳鳴り、難聴は、脳梗塞など命にかかわる病気が原因の場合もある。症状があれば、早めに専門医を受診するべきだ」と話しています。

関連医療機関 東海大学医学部付属病院 新宿恒心クリニック


画像診断装置PETによる脳疾患の早期発見



PTEによるアルツハイマー病の診断
高齢化とともに増加するアルツハイマー病やパーキンソン病などの早期発見に、画像診断装置PET(陽電子放射断層撮影)が有効であることが分かってきました。元々、脳機能を観察するために開発された装置で、実際の診療で脳の検査に使う医療機関もあります。

脳は体内で最もブドウ糖を消費する器官です。アルツハイマー病は脳の神経細胞が委縮して、記憶障害が起きる認知症の一種で、委縮した部分の活動が鈍り、ブドウ糖の消費が減ります。PETによる診断は、このブドウ糖の取り込みを調べます。

PET画像では、脳活動の活発な部分が赤色に、逆に活動の低下した部分は青色で表示されます。アルツハイマー病の人の脳は健常な人に比べ、耳側の頭頂部付近の活動が低下していますので、アルツハイマー病の方の画像は青く染まります。

PET診断の特長は、CT(コンピューター断層撮影法)やMRI(磁気共鳴画像)ではとらえにくい早期のアルツハイマー病を把握できる点です。

全国でも数少ない頭部専用のPETを持つ県西部浜松医療センターでは、過去2年間にアルツハイマー病が疑われる患者約60人を検査して、8割をアルツハイマー病と診断しました。

同センター医長の尾内康臣さん(先端医療技術センター)は「MRI、CTは脳の様子を写真のように映すのは得意だが、外形的な変化が出ていない早期のアルツハイマー病の診断は苦手です。その点、PETは形状変化が表れる前の脳機能の変化を読みとれます」と説明します。

ただ、アルツハイマー病と診断されても、打てる手は多くありません。進行を半年ほど遅らせる抗認知症薬があるほかには、リハビリが試みられている段階です。それでも早期診断できれば、家族らが病気に配慮した適切な接し方ができるうえ、本人にも日常や社会生活での留意点をアドバイスできます。


PTEによるパーキンソン病の診断
手足の震えなどの症状が表れるパーキンソン病の早期診断にも、PETは活用され始めています。

この病気は、脳の神経細胞が変性し、神経伝達物質のドーパミンが減少することで起きます。検査にはブドウ糖の代わりに「CFT」という薬剤を使います。この薬剤は、ドーパミンを作り出す神経細胞に付着するため、薬の集まり具合を見れば、病気の初期でも活動低下の様子が確認できます。

同センターでは、過去1年間に約20人が、この検査でパーキンソン病と診断されました。手足の震えなどの症状が出る前から発症を“予測”することも可能です。ただ、薬剤が特殊なため、検査できる施設は全国でも少ないです。

PETによる脳検査を実施している東京都老人総合研究所付属診療所長の石井賢二さんは「診断で、アルツハイマー病やパーキンソン病の進行を遅らせることが期待できます。治療法の向上によって、普及が進むはず」と語っています。

現状では保険は適用されず、約10~40万円の診断料は全額自己負担か、医療機関が研究費で負担しています。
画像から病状を読みとる技術を備えた医師がまだ少なく、医師の養成も課題になっています。

関係医療機関

県西部浜松医療センター

東京都老人総合研究所付属診療所


ウェルニッケ脳症(ウェルニッケ・コルサコフ症侯群)



ウェルニッケ脳症 は脳の「脚気」(かつけ)
ビタミンB1不足が進むと「脚気」になるが、ダメージを受ける身体の筒所によって、乾性、湿性、脳の3種類があります。

乾性脚気は末梢神経と筋肉がダメージを受けるケースで、歩行困難、筋肉痛、スクワット(屈伸運動)ができなくなるなどの症状があらわれます。

湿性脚気は心臓がダメージを受けるケースで、心悸亢進(しんきこうしん)、浮腫による心臓の肥大、呼吸困難などの症状があらわれます。最終的には、うっ血性心不全で死にいたります。

脳にダメージが発生したケースが脳脚気で、とりわけ、アルコール依存症患者がウェルニッケ脳症(ウェルニッケ・コルサコフ症侯群とも)を発症しやすいです。

ウェルニッケ脳症には3つの特徴的な症状があります。目の玉が一点を見つめたまま動かなくなる(眼球運動麻痺)、歩行がおぼつかない(歩行異常)、場所や時間、人物などがわからなくなる(記憶障害)などです。この記憶障害をコルサコフ精神病と呼んでいます。

ほとんどのウェルニツケ脳症患者は、アルコール依存症患者ですが、胃がんやエイズ患者にもみられます。

ウェルニッケ脳症患者はみな、ビタミンB1が不足しています。その証拠に、B1を静脈注射すると、眼球運動麻痺が迅速に改善します。しかし、歩行異常や記憶障害の改善はそう単純ではありません。回復度合いは、症状のあらわれた期間が長びくほど悪化します。

最近の研究で、ウェルニッケ脳症では、脳の特定の箇所にフリーラジカルによるダメージが発生していることが発見されました。このことから、ビタミンB1不足によって脳のダメージが起こる際に活性酸素がかかわっていることが推測できます。

ビタミンB1不足の原因
ビタミンB1不足は、B1の摂取不足以外にも、B1要求の増加、B1の人体からの過剰排泄、食事からの抗チアミン(ビタミンB1)因子の摂取などによっても起こります。

アルコールを多量に摂取しますと、食物をしっかり食べない傾向があるので、ビタミンB1の摂取不足におちいりやすいです。しかも飲酒によって、ビタミンB1の腸管からの吸収が妨げられますから、さらに不足しやすくなります。酒を飲むと記憶がおぼつかなくなるという人は、ビタミンB1不足かもしれません。

糖類の代謝にはビタミンB1が大量に消費されるので、糖類をたくさん食べる人も不足しやすくなります。激しい運動や発熱、妊娠、授乳、思春期の成長の際にも、多くのビタミンB1が消費されます。

利尿剤を服用すると、ビタミンB1の腎臓における再吸収が妨げられるばかりか、尿中への排泄が進みます。アルコールをたくさん飲んだときも、尿量が増えるためビタミンB1の排泄が促進されます。茶、コーヒー、ベテルナッツには抗チアミン(ビタミンB1)因子が含まれているため、多く摂るほどビタミンB1は失われます。

ハマグリやアサリなどの貝類、ワラビやゼンマイなどの山菜を生で食べると、B1がこれらの食物に含まれるチアミナーゼによって壊されます。この場合は、加熱調理して食べればいい。チアミナーゼは加熱によって不活性化するので、B1の分解を防ぐことができます。

ウェルニッケ脳症の治療法
ビタミンB1を投与することにより、早めに治療を始めるのが一般的です。数日間ビタミンB1を1日1000ミリグラムほど静脈注射し、その後は150ミリグラムほど内服で補充する場合が多いです。

アルコール依存になっている方が多いので、アルコール依存に対するリハビリテーションや、末梢神経障害が併発することがあるのでリハビリテーションが必要となることがあります。


痙縮治療の「髄腔内バクロフェン療法」(ITB療法)



脳性マヒや脳卒中の後遺症「痙縮(けいしゅく)」

足や手、指などが筋肉の過度の緊張によって内側や外側にねじれたり、曲がったりする状態は、痙縮(けいしゅく)と呼ばれています。脳性マヒや脳卒中などの病気や、事故による脊髄損傷などをきっかけに、筋肉を動かす脊髄からの信号に狂いが生じて起こります。

治療法はこれまで、筋弛緩剤を飲む方法が一般的でした。しかし、口から飲んだ薬は脳や脊髄に届きにくく、重度の痙縮には十分な効果が得られませんでした。

効果が高い「髄腔内(ずいくうない)バクロフェン療法」(ITB療法)

これに対し、髄腔内(ずいくうない)バクロフェン療法は、腹部に入れた直径約8センチ、厚さ約2センチのポンプから、1日0.1cc前後の筋弛緩剤「バクロフェン」(商品名:ギャバロン髄注)を、脊髄が通っている背骨の中の髄腔に直接注入します。口から飲む方法よりも、少ない投与量で効果が高く、眠気やふらつき、頭痛などの副作用を減らせる利点もあります。

この方法は、欧米では15年以上前に導入され、痙縮の一般的な治療法として普及しています。国内ではようやく2006年から、重度の痙縮の治療法として健康保険が適用され、約170万円のポンプや薬剤が使えるようになりました。

国内の臨床試験は、脊髄損傷や脊髄血管障害、脳性マヒ、頭部外傷などで、重度の痙縮に悩まされる25人を対象に行われました。その結果、24人の下肢の痙縮が軽くなるなど、高い改善効果が認められました。東京女子医大病院脳神経外科講師の平孝臣さんは「この治療の対象になる患者は5万人以上」と話しています。

薬剤は約3か月に1度、腹部に注射針を刺してポンプに注入します。1日の投与量などは、医師が操作するパソコン型の端末から、ポンプに電波を送って調整できます。ただし、電池寿命のため、5年~7年に一度、手術でポンプを交換する必要があります。

脳神経外科と整形外科が治療の窓口になりますが、治療を行う医師は、講習会の受講が義務づけられています。

平さんは「筋肉の緊張や痛みを取ると、リハビリの効果も上がります。今後は、リハビリ科との連携を深めて治療にあたりたい」と話しています。

関係医療機関

東京女子医大病院脳神経外科

施設情報

ITB療法ウェブサイト


脊髄損傷者専門トレーニングジム「ジェイ・ワークアウト」で歩行回復



脊髄損傷

脊髄損傷とは事故や病気で背骨の中を通っている中枢神経が傷ついて、腕や足が麻痺(マヒ)してしまうことです。現在、日本に10万人以上いると、いわれています。一度傷ついた脊髄は二度と再生しません。このため日本の医療界では一生、歩行は困難と考えられています。


脊髄損傷者専門トレーニング

アメリカのカルフォルニア州サンディエゴにあるプロジェクトウォーク社(Project Walk:P.W.)は、世界で初めての脊髄損傷者専門のトレーニングシステムを確立させました。1999年に設立され、これまでに約2000人の脊髄損傷者を歩行可能にした実績があります。その効果を紹介した論文は科学雑誌「Spinal Cord」に掲載され、全米で注目されました。

日本でも2007年に東京都江東区豊洲に、脊髄損傷者専門のトレーニングジムが設立されました。ジムの名前は「J-Workout(ジェイ・ワークアウト)株式会社(J.W.)」、代表者は渡辺淳さんです。

渡辺さん自身も10代のころ、脊柱管狭窄症にかかり2年間歩くことがでなかった経験をもっています。病気が治ったあと、アメリカに渡って、プロジェクトウォーク社に入社しました。2006年にアメリカ人以外では初めて、最高クラスのトレーナー「スペシャリスト」の資格を取得しました。


トレーニング方法

その方法は、歩くための基本的なトレーニングとして、脊髄損傷者を宙刷りにして歩行マシーンに立たせます。そしてトレーナーが声をかけながら足を動かして、歩く動作を反復させます。

これは、歩くために足をどのように動かすか、意識させるトレーニングです。

このレーニングがどのような理論で、行われているのでしょうか。

脳からの命令は背骨のなかの中枢神経を通って、手や足を動かしています。この脊髄が損傷すると、脳の指令を伝えるルートが途絶え、手や足が麻痺してしまうのですが、一度切れた神経は二度とつながりません。

しかし少しでも神経が残っていた場合、その残った神経に歩行機能を再教育するというのが、このトレーニング理論なのです。このため残った神経に歩行機能をおぼえ込ませるために、同じ動作を何千、何万回と繰り返します。

そしてこのトレーニングのもう一つの特徴が、使われなくなった筋肉をトレーニングすることです。

本人の意思でなくとも、他人に手足を動かされることで、筋肉はそれにつられて動きます。このため他人が筋肉を動かすことでも、筋肉がつくそうです。

車椅子生活が続くと、使わない筋肉は衰えやせ細ります。歩ける日のために、トレーナーの助けを受けながら筋肉を鍛えます。


従来の日本のリハビリ

日本の医学界では、一般的には脊髄損傷になった場合、もう歩けるようには、ならないと考えられています。このため車椅子で生活ができるリハリビが行われ、歩行ができるためのリハリビは行われていません。


ジェイ・ワークアウトの新たな取り組み

2010年6月からジムの7階に、渡辺さんは就労支援センター「プロジェクトワーク」を立ち上げました。ジムは脊髄損傷者の身体の状態を把握していますので、それに合わせて仕事を探すことができるのです。

プロジェクトワークは、「就労移行支援事業所」として東京都から認定を受けています。パソコンソフトの使い方やマナー、面接訓練、英会話など就労に必要な知識や技術の習得のためのプログラムを提供するほか、就職活動や職場定着のための支援を実施しています。

また2009年から新しい試みとして、二分脊椎(にぶんせきつい)などの先天性の病気によって歩行困難になった、脊髄損傷児の受け入れもはじめました。アメリカのプロジェクトウォーク社では先天性の病気の児童は、受け入れ対象外ですが、日本のジェイ・ワークアウトは子供の関節や筋肉などを細かくチェックして、歩行回復の可能性を探ります。

関連医療機関

ジェイ・ワークアウト(東京都江東区豊洲1丁目2-34TNKビル 5・6F)

2011年に大阪で2つ目のジムが設立予定になっています。

漢方薬・抑肝散(よくかんさん)いよる認知症治療

認知症に効果が認められた漢方薬・抑肝散(よくかんさん)

患者数200万人にのぼる認知症では、物忘れがひどくなる主な症状とともに、妄想や幻覚などの副次的な症状が問題になります。特に家族らにとっては、後者の症状が介護の際の大きな負担となります。

脳にベータアミロイドと呼ばれるたんぱく質が沈着する「アルツハイマー型認知症」では、物忘れがひどくなる症状がまず表れ、記憶障害の進行に伴い、物を盗まれたという妄想や、イライラ、不眠などの症状が深刻になっていきます。

一方、認知症の2割を占めるレビー小体型認知症では、物忘れよりも幻視や妄想などが先行することが多いです。横浜ほうゆう病院(横浜市旭区)院長の小阪憲司さんが、約30年前に発見した病気で、一種のたんぱく質から成るレビー小体が大脳皮質にたくさん現れ、神経細胞が壊れていきます。高齢の発症が多いいですが、40歳代で発症することもあります。

抑肝散(よくかんさん)はレビー小体型認知症に特に効果が

このような幻視や妄想などを抑える働きが注目されているのが、漢方薬の抑肝散(よくかんさん)。子どものかん夜泣きや疳((かん)の虫などを抑えるために使われてきた漢方薬です。特に、レビー小体型で顕著な効果が報告されています。

レビー小体型の治療では、アルツハイマー型でも使われる薬「塩酸ドネペジル」(商品名:アリセプト)を服用し、記憶障害の進行を抑えます。それで幻視などが消えることもありますが、消えない場合、レビー小体型では、手足の震えなどを招く恐れがある抗精神病薬は使えず、幻視などの抑制は困難でした。

レビー小体型の幻視は、人が部屋の隅にいるという形で見えることが多い。放置すると、記憶障害と幻視が結びついて、騒ぐなどして、症状はより深刻化していきます。はっきりと見えている幻視が理解されないつらさから、患者がうつ的な傾向を強めてしまうこともあります。

小阪さんは「抑肝散(よくかんさん)を早い段階から服用することで、患者の精神的な悩みや介護者の負担を減らすことができます。」と話しています。

東北大学の調査では、抑肝散(よくかんさん)を4週間服用したレビー小体型の患者さん15人のうち、12人の幻視が消失しました。進行したアルツハイマー型で起こる妄想や徘徊(はいかい)、暴力などの抑制にも、抑肝散(よくかんさん)が注目されています。

抑肝散(よくかんさん)の副作用

大きな副作用はないものの、服用中に血中のカリウムが減少することがあります、患者さんによっては意識がぼんやりしたり、血圧が上昇したりします。定期的に、血液検査を受けるなどの注意が必要です。

患者が漢方薬特有のにおいを嫌がる時は、とろみのある食べ物に混ぜたりすると服用しやすくなります。医師の処方で健康保険が適用されます。

抑肝散(よくかんさん)によって改善が期待される症状

  • せん妄:意識がぼんやりして、注意カや集中カがなくなる。突然興奮して、騒いだり、物を投げたりすることもあります
  • 徘徊:記憶障害や、自分がいる場所が分からなくなる見当識障害などが重なり、歩き回ってしまう。
  • 不安、焦燥、抗うつ:自分の気持ちが相手に伝わらず、強い不安を感じたり、イライラしたり、ときには暴力につながることもあります。
  • 妄想:現実には起きていないことを信じて疑わない。財布を置いた場所を忘れて、「財布を盗まれた」などと騒ぎたすこともあります。
  • 幻覚:本当はいない人が見える「幻視」や、いない人の声が聞こえる「幻聴」などが起こります。患者さんには本当の人や声と区別がつきません。レビー小体型では、物忘れより先に表れます。

関係医療機関

横浜ほうゆう病院

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