有水晶体眼内レンズ(フェイキックIOL)挿入術
近視の治療法
近視の治療では、「LASIK(レーシック)」と呼ばれるレーザーを使った手術があります。まず電動メスで角膜表面を膜状に切開してめくります。その内側の角膜をエネルギーの高いエキシマレーザーで削り、めくった膜でふたをします。角膜の屈折率を変えることで、視力を取り戻す原理で、乱視の矯正もできます。
保険は適用されませんが、年間約5万件(慶応大医学部眼科推計)の治療が行われ、日本眼科学会も「レーシックは視力矯正の第一選択肢」として診療指針を作成しています。
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有水晶体眼内レンズ(フェイキックIOL)挿入術
しかし、このレーシックは強度の近視(視力0・03程度以下)人や、角膜が薄く、削れない人には適用できません。そんな人に有効とされるのが有水晶体眼内レンズ(フェイキックIOL)挿入術です。
使用する眼内レンズは、白内障治療で使われるのと同じ樹脂素材です。白内障手術と違うのは、白内障の場合は水晶体を除去し、レンズを挿入するのに対し、近視用IOLでは水晶体をそのまま残します。このため、「有水晶体」の名前がり、レーザーで角膜を削ることもありません。1986年に始まった欧州では既に17万件に達し、米国でも近視用眼内レンズが承認されています。
「レーシック後に時折起きる周辺視野の見えにくさ(グレア)もなく、角膜が薄く、強度近視の人には向いている手術だ」と深作眼科院長の深作秀春さんは評価します。
手術は、麻酔を含め15―30分ほどです。麻酔後、角膜を切開し、虹彩(こうさい)の間にある前房にレンズを挿入、レンズ両端のカニの爪(つめ)のような固定具で、虹彩の外側に留めます。レンズの直径は6ミリ程度で、厚さは手術前の視力によって異なりますが1ミリ前後です。手術は1か月ほどの間隔を空けて、片方の目ずつ行います。
「前房には、角膜や虹彩に栄養を送り、老廃物を排出する役割を担う液体がある。角膜内皮細胞の障害を避けるため、前房の深さが3ミリ以上あることが、手術を行う目安」と深作さんは言います。
虹彩の炎症の程度によるが、手術後の1年間に6、7回通院して経過を診ます。7割の人は抜糸は必要はありませんが、乱視が強い場合は手術後、数週間以内に抜糸します。
慶応大、坪田一男教授によりますと、平均裸眼視力は手術前の0・02から0・9に改善するそうです。
一方で〈1〉角膜を長さ約6ミリ切開するため縫合が必要で、乱視が出ることがある〈2〉角膜内皮細胞が1、2%程度減少するので経過観察が必要〈3〉レンズの虹彩固定に技術を要する――など課題もあります。保険は適用されず、費用は一方の目で30―40万円。
坪田さんは「この手術はレーシック同様に今後普及すると思う。ただ、手術には一定の技術が不可欠で、医師を選ぶことが必要」と話しています。
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関係医療機関
慶応大学病院眼科
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