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-骨肉腫の「抗がん剤とカフエインの併用治療」-

骨肉腫の「抗がん剤とカフエインの併用治療」


骨肉腫の治療法


骨肉腫は、思春期の子供に多い病気で、大腿骨や上腕骨にできやすいです。腫瘍によって内部が破壊された骨は、切除しなくてはなりません。

1970年代までの治療では、腫瘍ができた手足の切断が主流で、5年生存率も10-20%と低かったです。1980年代以降は、抗がん剤で腫瘍を小さくしてから手術することで、手足の切断処置を回避することを目指しました。こうした手足の温存手術は骨肉腫手術の9割を超え、肺、肝臓などへの転移がない場合、5年生存率も60%程度に上昇しました。

しかし抗がん剤だけで、腫瘍を死滅させることは難しいです。
そこで、抗がん剤の効き目を強くするため、金沢大整形外科助教授の土屋弘行(つちやひろゆき)さんは、意外な物質に着目しました。それは、コーヒーなどに含まれるカフェインです。「カフェインは紫外線や放射線による細胞障害を進行させる」との報告を読んだことがヒントになりました。

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抗がん剤とカフエインの併用治療


抗がん剤でDNAを傷つけられたがん細胞は、次の細胞分裂までの周期を延ばすことでDNAを修復し、生き延びようとします。ところが、そこにカフェインを投与すると、がん細胞は修復までの十分な時間を確保できず傷ついたまま分裂して、死ぬことを動物実験などで確認しました。

そのうえで、土屋さんらは1989年、骨肉腫の患者に抗がん剤とカフェインの併用療法を開始しました。血液中に抗がん剤2種類(シスプラチンとアドリアマイシン)を4時間注入した後、カフェインを3日間、点滴注射します。患者の体力を見ながら、この併用治療を手術前に5回、手術後に6回繰り返すのが標準的な方法です。

カフェインの量は1日2-3グラム。コーヒー30杯分程度と量は多いですが、不眠や吐き気などの副作用は血中濃度の調整や鎮静剤で抑えます。

これまで60人に併用療法を行い、他臓器に転移がない36人中30人は、手術前に腫瘍が消えました。従来の成績と単純には比較できないものの、5年生存率は93%と高いです。一方、転移が起きた場合の生存率は従来同様に低く、今後の課題となっています。

併用療法は、切除範囲を従来より小さくできます。関節や周りの筋肉、神経などを残し、切除した部分に別の骨を移植して再建することで、運動機能回復も容易になった。

土屋さんは「手足の機能が回復する意義は大きいです。ただし、カフェインはあくまで抗がん剤の補助剤で、コーヒーを多く飲んでも効果は期待できません」と説明します。

同大の併用療法は2003年から、検査など治療本体以外の部分に保険がきく高度先進医療に指定されました。カフェインは安く、患者の自己負担は3日分で9500円程度です。同大以外にも骨肉腫などに併用療法は広まりつつあります。米国では、悪性黒色腫、脳腫瘍、すい臓がんの治療などにも応用されています。

カフェインの効果


コーヒーやお茶に含まれる成分として、だれでも知っているカフェインの意外な効果に驚かされます。安価で、副作用をあまり心配する必要がないのが長所です。がん細胞の修復を阻害するという機能からすれば、どんながんに対しても、抗がん剤の効果を増強する働きがカフェインにはあるかもしれません。

日本では、まだ骨肉腫などの治療に限定されていますが、さらに広がる可能性もあります。ただし、コーヒーや茶の大量飲用で、同じ効果が得られるわけではありません。

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