被爆による急性放射線障害の治療
急性放射線障害とは
急性放射線障害(Acute Radiation Syndrome:ARS)は、短時間に全身へ大量の放射線を浴びたときに起こる重い障害です。
通常の生活で受けるレントゲン検査やCT検査の被ばく量では起こらず、原子力事故や放射線関連の重大な事故など、非常に特殊な状況で問題になります。
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主な症状と「サブシンドローム」
全身被ばくの線量や範囲によって、次のような障害が組み合わさって現れます。
- 造血器症候群:骨髄の機能が低下し、白血球・血小板・赤血球が減少する
- 消化管症候群:下痢・嘔吐・腹痛・脱水などを伴う腸障害
- 皮膚症候群:皮膚の発赤、水ぶくれ、潰瘍など
- 神経・心血管症候群:超高線量被ばくで起こる意識障害やショック状態
被ばく直後に重要なこと
大規模被ばく事故が疑われる場合、まずは次のような「初期対応」が行われます。
- 被ばく源からすぐに離れる(退避)
- 衣服の交換やシャワーなどによる体表の除染
- 外傷・火傷などの通常の救急処置
- 吐き気・嘔吐・下痢・意識レベルなどの観察
そのうえで、血液検査(リンパ球数の経時変化)や染色体検査などを用いて、おおよその被ばく線量と予後を評価します。
造血器症候群の治療
もっとも重要になるのが、骨髄がダメージを受けて血液細胞が作れなくなる造血器症候群です。
- 支持療法:無菌的な環境、抗菌薬、輸血、輸液など集中治療
- 造血成長因子(G-CSF、GM-CSF、TPO受容体作動薬など)の投与:白血球や血小板の回復を促す治療が近年の標準になりつつあります。
- 造血幹細胞移植:きわめて高線量で骨髄がほぼ壊れてしまった場合に、慎重に検討される治療
最近は、造血成長因子に加え、メセンキマル幹細胞などを用いた細胞治療の研究も進んでいます。
消化管・皮膚・神経症状への対応
- 消化管症候群:点滴による水分・電解質補正、栄養管理、制吐薬・鎮痛薬、感染予防などの集学的治療
- 皮膚症候群:火傷と同様に創部管理を行い、必要に応じて形成外科的治療や皮膚移植を検討
- 神経・心血管症候群:集中治療室での全身管理(呼吸循環管理・鎮静など)
日常生活の「放射線不安」との違い
急性放射線障害は、短時間に非常に高い線量(数Gy以上)を全身に浴びたときに限られる特殊な病態です。
通常の生活で受ける自然放射線や、医療のレントゲン・CT検査などでは、このような急性症状は起こりません。
この記事の位置づけ
このページは、被ばく事故などで問題となる急性放射線障害の治療の考え方を整理したものです。
実際の対応は、専門施設での多職種チームによる災害医療・集中治療が前提となります。
個人レベルでの心配や不安がある場合は、自治体や専門機関の情報・相談窓口を利用してください。
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