肺がんの胸腔鏡(きょうくうきょう)手術
胸腔鏡手術とは
胸腔鏡手術(VATS:Video-Assisted Thoracic Surgery)は、胸にあけた小さな穴からカメラと細い手術器具を入れて行う肺の手術です。
従来のように大きく胸を開かずに手術できるため、「体にやさしい肺がん手術」として普及してきました。
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どのような肺がんが対象か
一般的には、
- 早期の非小細胞肺がん(臨床病期ステージIなど)
- 周囲への癒着や浸潤が少ない症例
- リンパ節転移が高度でないと思われる症例
が胸腔鏡手術の良い適応とされています。
近年では、経験のある施設では、より進行した症例にも胸腔鏡を応用する試みも行われています。
胸腔鏡肺葉切除術(VATS肺葉切除)
肺がん手術の基本は、がんを含む肺の一部(肺葉)を切除し、その領域のリンパ節を一緒に取る「肺葉切除+リンパ節郭清」です。
胸腔鏡手術では、
- 脇の下などに数か所、小さな切開をあける
- 一つの切開から胸腔鏡(カメラ)を入れて、モニター画像を見ながら手術を行う
- 残りの小さな穴から、血管・気管支・肺実質を切離する器具を操作する
- 切除した肺の一部を、少し大きめの切開から取り出す
メリット
- 切開が小さいため、術後の痛みが少ない
- 出血量が少なく、回復が早いとされる
- 入院期間が短くなる傾向がある
- 早く日常生活や仕事に復帰しやすい
治療成績(がんの治りやすさ)の面から
多くの研究で、早期肺がんに対する胸腔鏡肺葉切除術は、従来の開胸手術と同等の長期成績を示し、
むしろ短期的な合併症や機能回復の面では優れていると報告されています。
近年のデータでは、胸腔鏡手術は世界的にも早期肺がん手術の標準的なアプローチの一つと位置づけられています。
注意点・限界
- がんが血管や気管支に強く食い込んでいる場合、大きな胸腔内癒着がある場合などは、開胸手術の方が安全と判断されることがある
- 手術中に状況が変わった場合、途中から開胸手術に切り替えることもある
- 高度な技術と経験が必要で、施設によって適応の範囲や手術成績が異なる
ロボット支援手術との関係
最近では、胸腔鏡と似たロボット支援手術(RATS)も普及してきています。
いずれも「開胸をできるだけ小さくして行う肺がん手術」という点は共通しており、
施設や術者の経験・設備によって使い分けられています。
この記事の位置づけ
このページは、肺がんに対する胸腔鏡手術の概要を説明したものです。
実際に胸腔鏡手術が適しているかどうかは、
- がんの種類・広がり
- 呼吸機能や心機能
- 手術経験のある施設かどうか
によって変わりますので、呼吸器外科医とよく相談し、自分に合った手術方法を検討してください。
関係医療機関慈恵医大病院
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