頭頸部進行がんへの超選択的抗がん剤動注と放射線の併用療法
頭頸部がんと治療のむずかしさ
頭頸部がん(口腔・咽頭・喉頭・副鼻腔など)は、「話す・飲み込む・呼吸する」といった大切な機能を担う部位に発生します。
進行したがんでは、手術で腫瘍を大きく切除すると発声や飲み込みの機能が大きく損なわれることがあります。
そこで日本を中心に発展してきた治療の一つが、超選択的抗がん剤動注療法と放射線治療の併用です。 代表的なプロトコールは「RADPLAT(ラドプラット)」と呼ばれます。
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超選択的動注+放射線療法とは
「超選択的」とは、がんを養っている特定の動脈に細いカテーテルを通し、その血管から直接高濃度の抗がん剤を流すという意味です。
- 太ももの付け根などからカテーテルを入れ、レントゲンで確認しながら頭頸部のがんを栄養する動脈まで進める
- その血管から、シスプラチンなどの抗がん剤を高濃度で注入する
- 同じ時期に、外から放射線治療を行い、抗がん剤との相乗効果で腫瘍を小さくする
全身に点滴するのではなく「腫瘍の近くの血管」から投与することで、腫瘍局所の薬の濃度を高めつつ、全身への副作用をある程度抑えることをねらった治療です。
どのようながんが対象か
施設によって適応は異なりますが、一般的には、
- 進行した頭頸部扁平上皮がん(ステージIII?IV)
- 手術をすると機能や外見の損失が大きい症例
- 喉頭や咽頭など、臓器温存(喉頭温存など)を目指したい症例
などで検討されます。
効果と特徴
超選択的動注+放射線療法は、
- 局所の腫瘍に対する高い奏効率(腫瘍の縮小率)
- 喉頭や口腔機能を温存できる可能性
が報告されており、静脈からの化学放射線療法に匹敵する局所制御が得られたという報告もあります。
一方で、投与ルートが局所であるため遠隔転移(肺・骨など)に対する効果は限定的であり、
あくまで局所進行がんの局所制御を高める治療と考えられています。
注意点・限界
- 血管内治療と高線量放射線を組み合わせるため、時間と手間がかかる高度な治療である
- 行える施設・医師が限られている
- 局所の血流や血管の状態によっては、動注が技術的に難しいことがある
- 局所の合併症(粘膜炎、組織壊死)やシスプラチンの副作用(腎機能障害・聴力障害など)には十分な注意が必要
他の治療との比較
進行頭頸部がんの標準治療は、静脈投与の化学放射線療法や手術+術後治療です。
超選択的動注+放射線療法は、
- 「機能温存をより重視したい症例」
- 「局所制御を最優先したい症例」
などで検討される選択肢の一つであり、「すべての頭頸部がんに使われる治療」ではありません。
この記事の位置づけ
このページは、頭頸部進行がんに対する超選択的抗がん剤動注と放射線併用療法の概要を説明したものです。
実際にこの治療が適しているかどうかは、
- がんの部位・進行度・遠隔転移の有無
- 全身状態や腎機能
- 治療を行える施設の有無
によって大きく異なりますので、頭頸部がんの治療に詳しい医師と十分に相談してください。
関係医療機関北大病院耳鼻咽喉科
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