がんの脊髄鎮痛法(脊髄くも膜下・硬膜外鎮痛)
なぜ「脊髄」の近くに痛み止めを入れるのか
がんが進行すると、骨や神経、内臓への浸潤などにより非常に強い痛みが出ることがあります。
世界保健機関(WHO)の「がん性疼痛治療の階段」にそっても、
5?15%ほどの患者さんでは飲み薬・注射だけでは痛みのコントロールが難しいとされています。
そのような場合に選択肢となるのが、脊髄に近いところへ薬を入れる脊髄鎮痛法(脊髄くも膜下・硬膜外鎮痛)です。
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どのような方法があるか
1)硬膜外鎮痛(エピドラス麻酔の応用)
- 背中から細いカテーテルを入れ、脊髄を包む硬膜の外側(硬膜外腔)に薬を注入
- 局所麻酔薬やオピオイドを用い、腰から下・胸から下など、痛みの範囲に応じて調整
- 余命が比較的短い場合など、短?中期的なコントロールに用いられることが多い
2)脊髄くも膜下鎮痛・髄腔内鎮痛(イントラテカル療法)
- 脊髄の周りを流れている髄液の中(くも膜下腔)に直接薬を入れる方法
- 一時的な注射だけでなく、皮下にポンプを埋め込んで持続注入する「髄腔内薬物送達システム(イントラテカルポンプ)」もある
- 全身投与よりはるかに少ない量で、強い痛みを抑えられることがある
全身状態が安定しており、数か月以上の予後が見込まれる方は、埋め込み型ポンプの対象になることがあります。
3)神経破壊的手技(ニューロリシス)
- アルコールやフェノールを用いて、痛みを伝える神経を一部「焼き切る」ような治療
- 極めて強い痛みで、予後が比較的短い場合の選択肢
メリットとデメリット
メリット
- 内服や点滴より少量の薬で、強い鎮痛効果が得られることがある
- 全身への副作用(眠気、吐き気、便秘など)が減り、日中の活動性や会話が保ちやすくなる
- 痛みのために寝たきりだった方が、起きて食事や会話ができるようになる例もある
デメリット・リスク
- カテーテル挿入やポンプ埋め込みなどの小手術が必要
- 感染(髄膜炎など)、出血、神経障害などの合併症リスク
- 定期的なメンテナンスや通院が必要
どんなときに候補になるか
一般的には、次のような条件を満たす場合に検討されます。
- モルヒネなど強オピオイドを十分量試しても、痛みが抑えきれない
- 薬を増やすと、眠気・吐き気・便秘などの副作用が強くなり過ぎる
- 局所的な痛みが主体で、「この範囲だけしっかり抑えたい」というニーズがある
- 全身状態・生活環境的に、カテーテルやポンプを安全に管理できる
この記事の位置づけ
このページは、「内服や点滴だけでは抑えきれないがんの痛み」に対する脊髄鎮痛法の概要を説明したものです。
実際に治療を検討する際には、
- がんの治療方針全体
- 今後どのくらいの期間を、どのように過ごしたいか
- ご家族や介護体制
などを含めて、緩和ケア医・麻酔科医・主治医とよく相談して決めてください。
関係医療機関癌研有明病院麻酔科
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